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第6話:中央アフリカ連邦、灼熱の邂逅

 飛行機が降下するにつれて、窓外の景色は灰色の東京から、焼けつくような赤茶色の世界へと変わっていった。私たちが向かったのは、中央アフリカ連邦の首都、キナシャ・ノルド。内戦と貧困、そして慢性的な電力不足に苦しむ、地球上で最も過酷な地域の一つだ。


「ここが、私たちの最初の戦場ですね」


 悠人は、乱暴な着陸の衝撃にも動じず、冷静に言った。彼は相変わらず、薄いジャケットの下に、マナ・リアクターの核となる『コア』を収めたケースを抱えていた。


 空港は、日本の地方空港よりもさらに簡素で、混乱と熱気に満ちていた。セキュリティチェックは形骸化しており、私たちは簡単にその場所を後にすることができた。しかし、空港の外は、さらに厳しく、そして予測不能な世界だった。


「冴木さん、マコト・オザワ氏の車はどこに?」


 私が周囲を探していると、私たちの名前を呼ぶ、鋭い声が聞こえた。


「アヤネ! ユウト! こちらだ!」





 私たちを出迎えたのは、オザワ・マコト。彼は、私が学生時代にボランティア活動で知り合った、現地で医療と教育支援を続ける日本人NGOの代表だ。年齢は40代半ば。長年の活動で日焼けし、その顔には深い皺が刻まれているが、瞳の奥には揺るがない情熱の炎が宿っていた。


「連絡ありがとう、アヤネ。まさかこんな緊急で連絡が来るとはな。そちらが…真波さんか」


 オザワ氏は、悠人の清潔な日本の研究者という風貌と、周囲の空気に全く馴染んでいない様子に、訝しげな視線を向けた。


「マコトさん、彼が真波悠人です。今回は、彼の持つ、この国の状況を一変させる可能性を秘めた『技術』の提供で来ました」


 私は言葉を選びながら、核心に触れないように説明した。悠人は、そんな私を制し、オザワ氏に手を差し伸べた。


「真波悠人です。電力、水、そして食糧。私がこの三つを、この国から永遠に消し去ります」


「…それはまた、ずいぶん大きな話だ」オザワ氏は苦笑した。

「だが、電力もない、水道もない、飢えが蔓延しているこの国で、そんな言葉を吐く人間は、詐欺師か、本当に救世主かのどちらかだ。アヤネの紹介だ、信じよう」


 彼は、私たちをボロボロの四輪駆動車に乗せ、キナシャ・ノルドの中心部を離れていった。





 車は、舗装されていない赤土の道をひたすら走った。オザワ氏が私たちを案内したのは、首都から車で数時間離れた、電気も水も届かない小さな村だった。


「私たちが活動の拠点にしている村だ。ここが、一番困っている。真波さんの言う『技術』とやらが、本当に彼らを助けられるなら、ここから始めるべきだ」


 オザワ氏はそう言って、村を指差した。その村は、わずかなソーラーパネルと、古びたディーゼル発電機に頼っていたが、それも頻繁に故障している状態だった。


「問題は、この村まで電力を引くインフラがないことではありません。この地域のインフラは、頻繁に出没する武装盗賊団によって、すぐに破壊されてしまうんです」


 オザワ氏は、そう言って窓の外、送電線が途中で切断されたままになっている鉄塔を指した。


「マナ・リアクターは、電柱も送電線もいらない。しかし、その設置場所の確保と、技術を外部の目から隠すことが、最初の課題になりますね」


 悠人は、その言葉に静かに頷いた。


「インフラの防御ですか。心配ありません、オザワさん。私が異世界で最後に築いた文明は、『結界術』と『対外的カモフラージュ』の権威でもあった。電力を隠すのは簡単です。問題は、肥沃な土壌を一瞬で生み出したとき、この国の人間がどう反応するか、ですね」


 悠人は、既に目の前の物理的な脅威ではなく、その後に続く人間の欲望と政治的な波紋を計算に入れていた。私たちの目の前には、広大な赤土の砂漠が、夜明けを待つように横たわっていた。

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