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19.スタセリタ王国

 スタセリタ王国はセリエンホルデ王国の北に位置する。

 その国土は荒れ、農業に向かない。

 周りの肥沃な大地を目当てに侵略を繰り返して国土を大きくしてきた歴史を持つ。

 その様はまるで周りの国の血を啜る吸血鬼のようだと渾名あれていた。

 吸血鬼王サリオス。

「我々に女神の恩寵は与えられないのか……!」

 サリオス王は頭を抱えて苦悩していた。


 もともと同じ女神を信仰する両国。しかしセリエンホルデ王国にのみ救国の乙女は現れ、そして活躍を見せた。

 サリオス王の苦悩は憎しみに変わり、救国の乙女たるレシステンシアを魔女と呼び、異端者として火刑に処すまでに至った。


 しかし、その戒めからも奇跡的に逃げ出し、今なお健在である彼女のことを、本物の救国の乙女、女神の御使いであるのでは無いかと世論は囁き始める。

 彼女が本当に女神の御使いならば、吸血鬼王と呼ばれるこの身にはどんな報いがあるだろう……!


 サリオス王の憎しみは更に恐怖に変わった。

 そして女神への信仰を深め、司祭たちの言う事に耳を傾け始めた。


『あの救国の乙女は本物です。女神の御使いを火刑に処そうとした我々には罰が下るやも……』

 司祭たちは王に囁く。


 そして王は独自の結論に至った。

『救国の乙女が本物の女神の御使いならば、奴を手に入れることが出来れば、我が国にも女神の恩寵が与えられるのではないか……?』


 火刑に処して置いてなんとも勝手な事だが、いつしかサリオス王はセリエンホルデの救国の乙女に、レシステンシアに救いを求めるようになっていた。


 しかしこの王の心変わりに司祭たちはほっとしていた。本物の救国の乙女を火刑に処するなど女神の怒りを買うに違いない。なんとか穏便にこの国に救国の乙女を迎え、歓迎し、女神の怒りをおさめたい。それが今の宮廷内の雰囲気だった。


 ではどうやって救国の乙女をこの国に迎えるのか。

「レシステンシア・ブラダ男爵令嬢。それが奴の正体だ。奴と婚姻したいとセリエンホルデ王太子に所望する」

 救国の乙女を、花嫁として迎えようとサリオス王は考えていた。

 救国の乙女と持ち上げられていても、所詮は男爵令嬢の身分。断ることなど出来やしないだろう……。

 サリオス王はくつくつと笑っていた……。



 一方、セリエンホルデ王国では───


 侵略に加担したソニンク辺境伯は処断された。娘のルミナスと共に離島へと島流しになった。

 辺境伯領は新たに爵位を継いだレオン・バスラット伯爵が治めることになった。


 これで先の戦争の収集は付いた。シュネル王太子はふぅとため息をついた。


 しかしそこにスタセリタからの使者が文を携えてやってきた。

 なんだかきな臭さを覚えながらもシュネルは書状に目を通す。


「レシステンシア・ブラダ男爵令嬢を我が妃として迎えたいぃ!?」


 思わず声に出る。

 使者は返事を持って帰りたいようで変わらずそこに待機している。

 かの国で火刑にされかかったレシステンシアを素直に嫁に出せばどんな扱いを受けるか、想像もしたくない。

 しかし拒否すればまた戦の種になりかねない……。


 そこで、シュネルはレシステンシアは自分の妃似するので無理だと返事を書くことにした。


 返事を書いて使者に持たせたが、レシステンシア本人には何も言えていない……。この案を彼女が承諾するかどうか……。

 何せ一度こちらから婚約を破棄しているのだから……。


「ああーレシステンシア、どうにか言うことを聞いてくれるといいんだが……」


 結果は読者諸君の知るとおりであった。





求婚の顛末でした。今日はちょっと短くてすみません。

明日も12時投稿目指します。

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