14.魔女裁判
「レシステンシアがスタセリタに捕らえられた!?」
レオンは驚きと絶望を綯い交ぜにしたように叫んだ。
ここは王宮の謁見の間。シュネルが書状の返事についてレオンに話していたところだった。
ソニンク辺境伯への書状の答えは「レシステンシア・ブラダの身柄はスタセリタへ引き渡した」というものだった。
またわざわざ書状で問わずとも、スタセリタ王国がセリエンホルデの救国の乙女を捉えたと喧伝していた。
「王太子殿下、身代金を払って身柄を買い戻す訳には行かないのですか?」
「それが書状を送っても無視だ。身代金目当てで捕らえた訳では無いらしい……」
「ではなんのために……いえ、なんでもありません」
何のために?決まっている。痛めつけて処刑しこちらの士気を下げるためだ。
「私としては何としても彼女を助けたいのです……天馬部隊を動かす許可を」
「許可する。悔しいがあの女はホンモノの救国の乙女だ。いないと士気が下がるなんてもんじゃない。どうか助け出してやれ」
「ありがとうございます!」
レオンはレシステンシアをなんとしても助けようと心に誓った。
***
この牢では何日経っただろう。そうぼんやりしている所に衛兵が現れて言った。
「レシステンシア・ブラダ。立て」
「なんですか?」
「これから貴様の裁判だ」
裁判?私の?何を裁かれることがあるだろうか……。しかし捕らえられている以上従うしかない……。
衛兵に縄で繋がれて歩く。その先は裁判場だった。
「ここに立て」
そうして指定されたのは法廷の真ん中。所謂被告人席だった。
「被告人、レシステンシア・ブラダ。被告人は自分が女神の声を聞いたと虚偽の発言を繰り返し、救国の乙女と自称して多数の信者を惑わせた。よって魔女として火刑に処すことを要求する!」
告発人がそう高らかに告げた。
魔女として火刑に……!サリオス王の言ったように本当にするつもりなんだ!私は震えが収まらなくなった。
「違います!私は本当に救国の乙女として予言されて産まれました!女神様の声を聞いたのも本当です!誰かを惑わせたりなんかしていません!!」
震える声で必死の抵抗として叫んだ。
「静粛に!被告人は発言を控えるように」
裁判感が木槌を叩いて告げた。
「弁護人は異議があるか?」
弁護人?一体この敵国で誰が私の弁護をしてくれるというのだろう。
「異議ありません」
やっぱり……。この裁判に私の味方は誰もいないんだ……。
「では被告人、意義があれば述べよ」
「はい。まずは私は救国の乙女であると予言されて産まれました。これはセリエンホルデ中どこの教会にも記録があるはずです。調べてください。」
「では、女神の声を聞いたというのは?」
「これも本当です」
「女神はなんと言っていた?」
「バスラット伯爵領を取り戻しに行きなさいと。そこで私が救国の乙女として目覚めると予言がありました」
裁判場がザワザワとする。傍聴席まで野次馬でみっちり埋まっていた。
「なぜそれが女神の声だと分かった?」
「それは、声は『人々が女神と呼ぶ者』と自称したからです。それからシュネル王太子殿下が襲われる前にもも、『王太子が危ない、急いで』と声は言いました。未来がわかるなんて女神様以外に有り得ません。私が聞いたのは女神様のお声で間違いありません!」
「未来の出来事を……ほう……」
裁判官はそういって熟考に入ったようだった。
告発人は「それは悪魔の声です、悪魔の声を聞いたその女も魔女に違いありません!」と主張していた。
弁護人たちは退屈そうに裁判を眺めていた。やっぱり私の味方をしようという気は無いらしい……。
「悪魔に通じたこともありません。今まで女神様を信じ祈りを捧げて生きてきました。私は魔女などではありません!」
ここぞとばかりに畳みかけた。告発人は歯噛みしている。
「では、その髪の毛は何だ!」
「髪の毛ですか?」
「女の癖に髪の毛を短くするなんて異端者のしるしだ!この女は魔女です!」
「……っ!」
たしかに、女神様の教えには男は髪を短く、女は長くせよというものはある。あるにはあるが、厳密に行われてはいないのが近年の現状だった。そこを付いてくるなんて、何がなんでも私を魔女にして火刑にするつもりらしい……。
「被告人、申し開きはあるか」
「確かに私の髪は短いですがこれは軍の任務に邪魔にならないように仕方なくです。決して女神様の教えに背こうとしている訳ではありません!」
私は必死に訴える。裁判官が私に問い掛ける。
「では被告人、これ以上髪を切ったり、男物の服を着たりするような異端は行わないと誓えるか?」
「はい、誓います。これ以上髪を切りません、男物の服も着ません、絶対です」
「よろしい、今日のところはこれで閉廷とする!」
木槌の音が響いて、裁判はお開きとなった。
行きと同じように衛兵が私を牢に連行する。牢に入れられたその時、衛兵が突如私のドレスを破り捨てた。
「きゃあー!!誰か!助けて!!お兄様!」
そうして私は下着姿になってしまった。さらに衛兵はこちらに近づいてくる。一体何を。身を固くしていると髪の毛に手が掛けられた。髪の毛を剣で刈り取られる。そして、なにか布のようなものを投げると牢は閉じられ衛兵は去って行った。
布は開いてみれば男物の服だった。下着姿でいる訳には行かない、これを着るしかない。
まさか、まさか……私は戦慄した。罠に嵌められた……!
『これ以上髪を切りません、男物の服も着ません』
迂闊な発言をすべきではなかった……。
髪の毛は刈り取られてしまった、男物の服しか着るものがない!これでは私は誓いを破った異端者ということになってしまう……。
悔しい……。こんな卑怯な手を使う輩に処刑されるなんて……。
私は一人涙を流すのみだった。
これからはこのくらいの時間帯に投稿になるかもしれません。ご容赦ください。




