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婚約破棄?良いでしょう、私は救国の乙女なので!  作者: 杏仁
第1章 救国の乙女、戦場に立つ
11/24

11.戦火

 旗を振りつつレオン部隊長について行く。

 しかし眼前から敵兵が迫ってくるとそう簡単にも行かなくなってくる。

 負傷者の出たところにも行かなくてはならない。

 戦場での私は正直目が回るほど忙しかった。


 負傷者の傷を癒したところでレオン部隊長からだいぶ距離をとってしまった。早く、近くに合流しないと……。と思うと敵兵が現れる。振り下ろされる剣を旗の柄で受け止めて、弾き飛ばす。と思ったらまた剣が振り下ろされる。

 キリがない、しかも後ろからも剣は振り下ろされる。

 囲まれている!

 旗をグルグルと回して距離を取れてはいるけれど、どこかからこの包囲を突破しないと……!

「退きなさい!私は救国の乙女!女神様の加護はこちらにあります、降伏するのです!」

 叫んでみるけれど、あまり効果はないようだった……。

 じりじりと距離を詰めてくる兵士たち……。

「たァー!」

 その包囲は斧の一撃で破られた。助けてくれたのはテオさんだった。

「お前、ピンチなら素直に助けを呼べよ!」

「テオさん!ありがとうございます!」

 テオさんに感謝を述べると、また戦場の中へ駆け出していった。


 それからも敵兵に囲まれることはあったけれど、その度に助けてくださいと叫び、ジルさんマリアさんが助けてくれた。

 ジルさんは特に私に付いて守ってくれた。

「救国の乙女の守護の任務はぜひ私が!光栄です!」

「ありがとうございますジルさん、お願いします!」

 ジルさんがいてくれるおかげで、背後の敵を引き受けてくれ、囲まれることはなくなった。

 これで思い切り動ける。

「ジルさんのおかげで自由に動けます!ありがとうございます!」

 そう言うとジルさんは感激したように涙していた。

「ああ!救国の乙女のお役に立てるとは……!ああ!この身に余る光栄です……!」

「いや、そこまででは……」

 ……やっぱりこのテンションは落ち着かなかった。


 戦いはなかなか終わらなかった。敵兵が多い。間違いなくソニンク辺境伯の兵だけでは無い。スタセリタ軍の兵が混ざっている。それにやたらと私は包囲されかけた。

 ……狙われている?確かに治癒の奇蹟を使える私は潰しておいた方が良い存在だ。

 自分が狙われていると自覚して立ち回った方がいいだろう……。


 戦場の影にふたつの人影……

「あの救国の乙女とかいうのなかなか手強いな……」

「包囲しても味方が破ってきやがる、本人もそれなりに戦える、厄介だ……」

「こうなれば策を講じよう」

「策?」

「耳を貸せ……」

 救国の乙女に魔の手が迫ろうとしていた……。


 しばらく戦場を駆け巡った後、何とかレオン部隊長のそばまで戻ってこれた。

「部隊長、この戦はいつまで続きますか……?」

「ソニンク辺境伯はすぐ降伏すると思ったんだが……スタセリタの思惑が大分ありそうだな……長引きそうだ……」

「そうですか……」

 今日一日では終わらないような長期戦になるだろうとレオン部隊長は言った。私も長丁場になる覚悟をしないと……。


「救国の乙女様!レシステンシアさま!」

 そこに一人の兵士が駆け込んでくる。

「我が友が酷い怪我を負ったのです!歩けないくらいの……どうか来てくれませんか!」

 兵士は汗だくで必死の様だった。

「レオン部隊長、行ってきます!」

「ああ、気をつけろ」

 私はその兵士の案内に従って行った。


 その兵士は戦場の外れ、だんだん人気のない方に進んでいく。

「本当にこんなところに負傷者が?」

「はい、あの洞窟に寝かせておいているのです」

「洞窟……」

 確かに先には小さな洞窟があるようだった。

 私は逡巡したが、進むことにした。

「ああ、その旗はこの小さな洞窟では邪魔でしょう。私が持ちましょう」

 旗を預けるように言われて躊躇した。しかし、負傷者を治す間だけなら……

「じゃあ、お願いします……」


 洞窟に入っていく。

 しかししばらく進んでも誰の姿も見当たらなかった。

「あの……負傷者というのはどこに?」

「……かかったな!救国の乙女!」

「きゃああ!」

 岩陰から人が現れ、頭を殴られる。羽交い締めにされ、後ろ手に縛られる。

 殴られた頭が割れるように痛む……。

「……騙したのですね!?……あなたたちは何者ですか!?」

「救国の乙女がお人好しで助かったよ!こんな簡単に捕まえられるんだからな!」

「お前はソニンク辺境伯への土産だ!」

 ソニンク辺境伯が、私を!?

 二人組は私達王立軍の装備をしているがそれは偽のものだったのだ……。おそらくソニンク辺境伯の手の者……。痛む頭で必死に考えた。

 二人組は私を背負い籠に入れようとする。

「待って下さい!その旗だけは部隊に返してください!」

「旗だァ!?その辺に捨てとくよ!運が良けれ誰か拾うだろうな!」

 殴られた頭のダメージがどんどん増してきて、それ以上私の意識はもたずに、気を失ってしまった……。




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