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婚約破棄?良いでしょう、私は救国の乙女なので!  作者: 杏仁
第1章 救国の乙女、戦場に立つ
10/24

10.裏切り

「私の気持ち、でございますか」

 シュネルとルミナスが王太子の執務室で相対する。

「そうだルミナス。お前は俺を愛しているのか?それとも近づいて利用しようとしただけか?」

「殿下!なぜそんなことを!」

「お前の父が我々を裏切ったかもしれない。お前は違うと証明して見せろ、ルミナス」

「……私は殿下を愛しています。愛しているのです……」

 そう言って勢いよく抱きついたに見えたが、その手には短剣が握られていた。


「王太子殿下!!無事ですか!?」

 そこに現れたのはレシステンシアだった。

「誰!?」

「ルミナス嬢、何を……!?」

「仕方ないんです!私は殿下を愛しています!!でも父上が!王太子殿下を暗殺しろと……!」

 ルミナス嬢は両手を血まみれにして錯乱している。彼女から短剣を取り上げなくちゃ!それに王太子殿下の治癒を……!

「彼女は俺に任せろ!」

「部隊長!」

 レオン部隊長が遅れてやってくる。ルミナス嬢を彼に任せて、私は倒れているシュネル王太子に近づいた。

「殿下!大丈夫ですか!レシステンシアが参りました。今すぐ治癒をしてみせます!」

「……これが大丈夫なわけがあるか……頼む……」

「喋れるなら大丈夫ですね!」

 私が胸にできた傷口に手を当てると、シュネル王太子は光に包まれ、徐々に傷は治っていった。


 レオン部隊長の方も、易々とルミナス嬢を捕らえていた。

「ルミナス嬢、これは父親の辺境伯の命令なのだな?」

「……はい、そうです。そのために最初から王太子殿下に近づきました……。でも愛しているのも本当です、本当なんです!だから今も彼を殺して死のうと思って……」

「お前、そんな恐ろしいことを……。ルミナス、お前との婚約は破棄だ……」

「……っ!……はい……」

 ルミナス嬢は力なく呟いた。


「これでソニンク辺境伯の裏切りはハッキリしたものになった。いますぐ攻撃を仕掛けろ、辺境伯を処断する」

 シュネル王太子が命令を下す。

「は。レシステンシア、行くぞ」

 衛兵にルミナス嬢を任せたレオン部隊長が私に声をかける。

「攻撃って、辺境伯領をですか!?」

「そうだ。まあ降伏してくれればいいんだが」

「そうですよね、同じ国の民なのに戦わなくてはならないなんて……」

「向こうはどう思っているかわからない。お前はまた旗を持て、出来るな?」

「……はい、救国の乙女として、覚悟します。」


 王都を背に王立軍全軍は辺境伯領へ向けて布陣した。

 私はマリアさんに変わって旗手となった。その旗を持っていると救国の乙女としての力が発揮出来るとあって、マリアさんも快く譲ってくれた。「決して地に落とすなよ」との伝言付きで。


 遠目に辺境伯側の軍も布陣を始めているのがみてとれた。

「やけに、軍勢が多いな。スタセリタの軍勢も混じっているのだろう。本格的にスタセリタ側に寝返ったな、ソニンク辺境伯」

「私、降伏するよう言ってきます」

「気を付けろよ!」


「皆さん!!戦の準備をやめてください!!降伏してくだされば悪いようにはしません!!」

 力の限り旗を振り叫ぶ。

「おい、見ろ、あれが救国の乙女だぞ」「本物だ」

「誰か射掛けてみろよ!」

 ざわざわと喧騒が聞こえてくる。

 本当に矢が飛んできたが、旗を振り回していたので弾かれて行ったようだった。

「救国の乙女はここにいます!女神様の加護はこちらにあります!同胞同士で争うなど辞めましょう!!」

「矢を弾いたぞ、」「本当に救国の乙女なのか」

 さらにザワザワと聞こえてくる。さらに弓を射掛けようとしてくるようだったので、流石に退散した。


「レオン部隊長、ダメでした」

「弓を弾いたのも女神の加護か?」

「恐らく、でもこれ以上は、怖くて……」

 私は目の前で弓が刺さって死んだ兵士を思い出してしまった。

「いや充分だ。よくやった。向こうが先に矢を射ってきた、そうだな?」

「……はい」

「全軍、突撃せよ!向こうは我らが救国の乙女に矢を射った!容赦はしなくていい!!」

 レオン部隊長が叫ぶと、「おおー!」と鬨の声があがり、軍は前進を始めた。私も旗を高く掲げて前進するのだった。


 そこからはまた戦場という名の地獄が繰り広げられた。私は旗を振ってレオン部隊長の後に続く。旗を振る度周りの兵士の傷は癒えていく。

 私に向かってくる敵兵は旗の柄で受け止め突き飛ばす。

 わが天馬部隊の通ったあとは敵兵の死体の山が築かれていた。後ろを振り返り、思わず目を伏せる。

 しかしこれが私のしたこと。やるべきこと。覚悟を決めて旗を振り続け、進み続けた。


 そんな戦場の中、影から天馬部隊を観察する影がふたつ……。

「居たぞ、あれが救国の乙女だ」

「あの部隊、すごい勢いだな。捕らえるなんてできるのか」

「ソニンク辺境伯直々のご命令だ、何としても捕えろ」

「しかし捕らえてどうするんだか」

「そりゃスタセリタに売り飛ばすのさ。ヤツら領地をすぐ取り戻されてお冠だからな」

「そりゃ高く売れそうだな」


 レシステンシアに魔の手が迫っていることを今はまだ誰も知らない……。

感想、ブクマ、評価ありがとうございます!

明日も12時頃投稿します!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ルミナスが心中を選ぶほど、ソニンク辺境伯は恐ろしい人なんでしょうか……。 レシスの女神の力が魔の手にどこまで通用するのか、気になります。
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