第38話 戦闘
俺は少しの間呆けていたが、すぐに我に帰り鑑定を発動する。
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名前:ベリ## 種#:高#悪魔 性別:#
年齢:1a02 レλル:####
ステ△#ス
力: ####
魔力: ####
防御: ####
魔防御: ####
敏捷: ####
器用: ####
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相変わらずバグりまくっている悪魔特有のステータスを見ると、俺はそいつの種族に視線を移し目を見開く。文字化けをしていて読みづらくはなっているが、それが示す内容は明らかだ。
「高位ーー!?」
ってことは前に戦ったアイツよりもずっと強いってことじゃねえかよ…… 。あの化け物の数段強いとか、想像すらできねぇぞ。
「ん、なんだお前俺ら悪魔のこと知ってんのか。神の連中によって大半は記憶消されてるっつうのに」
「なに?いやそんなことよりお前、なんでそのオッサンと仲良さそうにしてんだよ」
「あ?」
悪魔は転がってるルーガスを見下ろし、退屈そうにルーガスの腹を蹴り上げた。ルーガスはうめき声を上げ、再び鉄の壁に吹っ飛ばされ床へ崩れ落ちる。どうやら気絶したようだ。
「こいつが俺の契約者だからだよ。さて、どうせここで死ぬお前らに何を話しても時間の無駄だ。とっとと始めようぜ。見たところお前ら猫だけどそこそこ強ぇし、ちったぁ暇潰しになんだろ」
なんの合図もなしに、悪魔は手を前にやり大きな黒い球のようなモノを俺に向かって放つ。俺は咄嗟に猫状態に戻り、魔力を全身に纏って肉体を強化し、それに加えてスキル〈身体強化〉を発動し被弾した時のために防御力を高める。黒い球が目前に迫ったところで、早速俺は特訓で鍛えた攻撃逸らしを試みた。
ググッ……
「重いっ……だが!!」
ドガンッ!!
前にルイによってみっちり鍛え上げられた俺の魔力逸らしは黒い球を見事逸らし、球は後ろの壁を爆破させた。
「おぉ……結構力込めたっつうのに無傷で済んだのか。やるなお前」
トッ
悪魔は前傾姿勢になり俺に向かって突進してくる。だが、ルイがヤツの足元に氷を張ったことによりそれは失敗に終わり、悪魔はその場の勢いで盛大に床へ頭からすっ転んだ。
「ぐぉぉぉあ!!?」
悪魔は少し床を滑った後、ひっくり返って動けなくなったカブトムシのような情けない姿を晒す。
「主ばっかに気を取られすぎニャ」
「ブフッ……ナイスだルイ!チャンスは今のうちだ!」
俺は悪魔が立ち上がる前に仰向けで転がっているヤツの顔面へ猫キックをお見舞いする。ベクトル変化でエネルギーの漏れなく、パッシブの〈獅子奮迅〉や〈格闘殺技法〉などの様々なスキルで強化された猫キックは、床を2メートルほど凹ませその中心部の悪魔の顔面をも凹ませた。悪魔は声も出せずに黒い血のようなモノを顔面から飛び散らせる。
さらに追い討ちをかけるようにルイは、濃密な魔力を凝縮した魔力の刃で2メートルほど下にいる悪魔に雨のように魔力の刃を浴びせ切り刻む。この程度で悪魔を倒せるとは思っていないが、そこそこのダメージは入ったはずだ。
「ふぅ……案外弱いなあいつ。高位ってのは実は大したことない?」
「いや主、まだ油断はしないほうがーーー」
バッ
悪魔は凹みから飛び上がり、何事もなかったかのように俺たちの前に再び対峙する。ヤツの傷は黒い闇のようなものに覆われ驚くべき速さで回復し、もうほぼ全快しているようだ。
「はは、油断しすぎたぜ。久々の戦いで鈍っちまったのかもしんねぇな、こんな雑魚相手にーーー」
「隙あり!」
俺はベラベラと喋っている隙だらけな悪魔の顔面へ飛び蹴りを放つ。悪魔は身構えて急いで対応しようとするが、俺が全力の力でやってる甲斐もあってか悪魔の対応は間に合わずそのまま顔面蹴りが通った。
ドゴォッ!
「ヌオォ!!話ぐらいちゃんと聞けぇぇ!!!」
悪魔は壁に向かって吹っ飛ばされる最中叫ぶ。やっぱり、こいつ意外と弱い。強さ的には前に戦った低位悪魔より少し強いぐらいで、とても高位悪魔だとは思えない。
「ルイ、こいつ俺たちでも勝てるぞ!」
「弱くて助かったニャ」
悪魔はヨロヨロと立ち上がると、俺たちを睨む。
「好き勝手言ってくれるじゃねぇか。結界内だとこんな力が弱まるなんてなぁ……いいだろう認めてやんよ、お前ら!名前を言え!!」
「俺はネコメで、こっちは相棒のルイだ。お前は?」
悪魔は謎の黒い紋章が刻まれた右腕を見せつけるように突き上げるとニヤリと笑う。カッコつけているポーズなのかもしれないが、正直ダサい。
「俺の名前はベリアル!ルシファーの野郎が率いる魔神軍の7番部隊の隊長だ。ま、つっても俺だけなんだけどよ……今からちと力を出すが、すぐに死んでくれるなよ?」
その言葉が終わると同時に、ヤツの右腕の紋章が黒く光り輝き、ベリアルを黒い瘴気のようなもので包み込む。謎の紋章が輝くのをやめると、俺は心の中に原始的な恐怖が流れ込んでくるのを感じる。黒いモヤが晴れると、俺はベリアルの力がさっきよりも桁違いに跳ね上がっていることを理解した。
「な、なんだそれ……ドーピングか?」
「結界の効果を消しただけだ。これが俺の本来の力だぜ。まさか、怖気付いたとは言わねぇよなぁ?」
ベリアルは俺たちの反応を楽しむようにニヤニヤ笑うと、出現させた謎の闇の中に右腕を突っ込む。そして闇の中から出したヤツの右手には、黒くて長くてデカい2つの両刃の大剣が握られていた。ベリアルはそれを左右に持つと、かなり姿勢を低くしてクラウチングスタートのような前傾姿勢になる。
「俺を楽しませてくれよ。俺の退屈を潰してくれよ。俺と正々堂々楽しく殺し合おうぜ?無論、拒否権はねぇ!」
ダッ!
ルイはさっきと同じく氷で足元を滑らそうとするが、ベリアルはちゃんと学んだらしく床ではなく足元に出現させた闇を足場として俺たちに向かって肉薄する。ルイは後方から攻撃をしているので、必然的に前にいる俺が再び狙われた。
「らよぉ!!」
「!?」
一瞬にして距離を詰められた為、俺はほんの少しだけ認識が遅れる。ベリアルはクロスを描くように大剣を振りかぶり、避けることができないのを判断すると俺はベクトル変化や攻撃逸らしを使って最大の準備で攻撃に備える。
ーーーしかし。
「重すぎ……る!やべッーー」
大剣は防御を難なく突破して、俺を八つ裂きにするために振り下ろされる。俺はその時死を直感しペットボトルで転んだ忌々しい走馬灯が脳裏に流れ込んでくるのを感じた。避けようにももう間に合わない。俺はせめて死ぬなら怖くないようにと思い目を閉じると、いきなり横から衝撃が来て壁と思わしき物体に激突する。
「痛って……」
目を開けると、横の鉄の壁に俺がぶつかって出来たと推測できる大きな凹みがあるのを見る。どうやらルイが俺を吹っ飛ばして助けてくれたらしい。さっきのは危なかった。助けが入らなかったら間違いなく死んでいただろう。
「いい判断力だ猫……ルイだっけか。褒めてやるよ」
ベリアルは満面の笑みを浮かべており、限りなくルイに接近して大剣を振りかざしている。
「ルイ!」
俺は助けに入ろうとするが、距離的に助けに入れる距離ではない。だけどルイは何とかギリギリで攻撃を避けた。俺は急いで戦線に復帰し、ベリアルと向かい合う。もう圧倒的な実力差があって勝てないことは分かっている。だからといって逃げようとしてもどうせこいつは逃してくれない。だから命懸けで隙を突いて……その隙にここを脱出するしか生き残る道はない。
「あぁいいねいいねぇその覚悟を決めた魂の色、らしくなってきたじゃねえかぁ……ははは、これは楽しくなりそうだ」
ベリアルは恍惚とした表情を浮かべ、愛情にも似た視線を俺たちに送る。俺は思わず背筋を震わせ、眉を顰める。
「きっも」
「主よりも気持ち悪いニャ」
思わずボソリと呟いたのが聞こえていたのか、ベリアルは一瞬無表情になると口元を弧を描くように歪め両腕を広げた。
「おいおい、俺の尊い恋を辛辣な言葉で壊さないでくれよ。ほんとに200年ぶりとかなんだ。楽しく殺し合えそうな相手は……さっきは殺すつもりだったけど、殺すには惜しいなぁ。まだまだ成長途中だろお前ら。生かしておいて……あぁでもそれだとルシファーの野郎の命令に背いちゃうしーーー」
ベリアルは何かを考え込むように顎に指を置くと何かボソボソと呟く。俺は不審者でも見るようにその様子を眺めていると、考えが定まったのかベリアルは満足げにうなづいた。
「決めた!生かしといてやるよ、てめぇらを。命令なんて関係ねぇ!だが勘違いすんなよ。俺はお前らを逃す気はねぇ……1ヶ月後には必ずどこに逃げても地の果てまで追いかけて殺しに行ってやる。それまでに俺を楽しませられるようにもっともっと強くなれ」
「え?ってことは俺らを逃してくれんのか?」
「おう、一旦な。感謝するんだな、俺の寛大で優しさに満ち溢れた心に」
「自分で言うなニャ」
ルイは緊張が解けたのかツッコミを入れると疲れた様子で香箱触りになる。俺もかなり疲弊しており、魔力が限界まで減っていたことに今更気づくと、冷や汗を流してひとまず安心して息をつく。
今回はマジで死ぬかと思った。このまま続けていたら、たとえ奇跡が起きたとしても俺とルイのどちらか一方は重症を負っていたはずだ。一瞬の安堵感に心を休ませている時、突如ルイの近くの空間にグニャリとした歪みが発生する。
「な、なに……まだ何かあんのか?」
俺は空間の歪みから、見知った顔が現れるのを見る。そう、この白髪のオールバック白衣おじさんはーーー。
「不愉快な呼び方をするな、私はお兄さんだ」
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