第37話 元凶との戦い
パタン
俺は静かに扉を閉める。
「どうだったのニャ?」
ルイは俺の足首をペシペシして部屋の中の様子を聞いてくる。なので俺は「おっさんが居た……」と正直に返答したところーー。
バン!
「……失礼なことを言う子どもだね」
「!?」
いつの間にかあのおっさんが背後にいた。外見は白衣を着ていて白髪で無精髭を生やしており、以下にも研究者然とした見た目をしている。おっさんブラザーズの話が正しければ、このおっさんが誘拐の黒幕と見られる「ルーガス」という男である可能性が高い。
「あなたは誰ですか?」
少し落ち着きを取り戻したあと、一応の確認のため俺は目の前のおっさんに問い正す。
「あぁ、僕の名前はルーガス……世紀の超超超天才発明家と言えばわかりやすいかな?まぁそれはいいとして……君たちのことは小型の魔導機械を通して見ていたよ。随分と楽しそうだったじゃないか?」
おっさんの表情は穏やかだが、その額にははち切れんばかりの血管が浮き上がっている。考えるまでもなく当たり前の話だ。工事破壊しまくってたし、言い訳のしようがないほどに俺たちが悪い。だがーー。
「あれは仕方なかったんだ……それに、お前たちだって誘拐をやってるだろ?どっちもどっちじゃん」
俺はルーガスに対して鎌をかけつつ言い訳もするという高度な話術を繰り出す。
「あぁ……まぁ、流石に知ってたか。ならば、ストレス発散も兼ねて僕の実験に付き合ってもらうよ」
まんまと鎌に引っかかったルーガスを見て俺は確信する。こいつが誘拐犯のリーダーだと。
それからおっさんはこれから起こることを楽しみにするかのように笑うと、パチンと指を鳴らす。すると、ルーガスの背後から一人の灰色の髪を持つ少年が歩いてきた。その少年からは生気が全く感じられず、人間離れした無機質な印象を覚える。その子はロッドが言っていた息子と特徴が一致していた。嫌な予感がした俺は、頬に冷や汗を滴らせる。
「紹介するよ。これは素体番号127、最近ようやく完成できた機械と人間の融合体だ。機械だと単調な動きしかできないから、人間の脳を加えることより高度な動きをーー」
「ーー融合体ってどういうことだ?」
ルーガスの言葉的に、何を示しているのかぐらいわかってる。でも認めたくなかった。だからおっさんの言葉を遮り、静かに尋ねる。
「あぁ……文字通り、人間の脳と機械の体を組み合わせた融合体のことだ。まぁそんなことはどうでもいい!こいつの凄いところは脳に電気を流す事によりリモコン一つで操れる点にーー」
奴が喋り切る前に俺の体は動いていた。猫状態じゃないから力は弱いけど、こいつ相手であればそれで十分だ。ビクッと驚いて跳ねるルイを尻目に、俺はルーガスの顔面に右フックを打ち出す。だがおっさんが手元のリモコン的なやつをポチポチすると、少年が前に立ち塞がってきた。
「お前……何をしてるのか分かってるのか?」
手を引っ込めると、俺は怒りに声を震わせながら拳を握る。そんな様子を見たルーガスは鼻で笑った。
「科学に犠牲はつきものだ。全ての発展には何かが犠牲となっている。人が快適な生活を送っているその下には、数多くの犠牲がある。これもその一つに過ぎない。犠牲なくして発展はありえない……そうは思わないか?」
「確かにそうかもしれない。けど、人としての倫理を失ったら……人は人じゃなくなるんだよッーー!!」
感情を爆発させると、今度はオッサンの顔面目掛けて飛び蹴りを放つ。少年の方はルイが魔力で動きを縛ってくれたみたいで、今や地面に倒れ伏せている。あとはこいつを倒してリモコンを奪って誘拐された人たちを助ければ全部完了だ。
「っ……あの猫!クソ!」
ルーガスはリモコンを捨て手を顔の前にやりガードしようとするが、間に合わない。そのまま蹴りはルーガスの顔面に突き刺さり、骨が砕けるような嫌な感触を足先に感じると同時におっさんは後方の壁に向かって勢いよく吹っ飛ばされた。
ドゴン!
鉄の壁に大きな凹みができると、ルーガスは地面へと崩れ落ちる。俺は落ち着くためにゆっくりと息を吐くと、倒れているルーガスに向かって歩き始める。殺さないように手加減していたから多分死んではいない筈だ。これからルーガスには、誘拐された人たちの場所とか、色々と聞き出さなければならない。
ーーしかし。
「はははははははは!!!だいぶこっぴどくやられたなぁルーガス。今のお前の姿、魔界で天下とってる芸人にも負けてねぇぞ?」
突如おどけた調子と共に、何もない虚空からルーガスの隣にニタニタと気色の悪い笑みを湛えた大きな影が姿を表す。
その影は人型で2メートルは確実にあり、刺々しい黒のアーマーとグリーブ、白色と金色で彩られた足首まで届きそうな大きなマントを背に纏っていて、尖った両耳には金色に輝くひし形のピアスを垂れ下げている。
謎の乱入者の顔の方に目を移すと、美形だが口からは鋭利な犬歯を覗かせており、肌と髪は異常なほど白く目は鋭く悪意に満ちていて地獄を体現しているかのように赤く染まっている。こめかみ辺りからは左右対称に2本の黒い角が生えていて、目の前の禍々しい存在は、誰がどう見ても悪魔だと答えるような外見をしていた。
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