第36話 探検2
「ニャ?」
「ッ!!?」
周囲の蜘蛛のような多脚のロボットたちが合成音声に似た機械的な声を出して動き始めると、俺はビクリと飛び跳ねて頬を恐怖に引きつらせる。他の乱雑に散らばった機械と同じような存在だと思っていたそれは、元気に俺たち目掛けてゴキブリの如くスピードで迫ってきた。
「ルルルルイ!逃げるぞ!」
「え?あれぐらい簡単に壊せるし逃げなくてもーー」
ルイの言う通り、本来倒すことぐらい容易なはずだが混乱によりまともな判断の下せない俺は逃走を選択する。一応コソコソと動くという意味でも良い選択なわけだし、混乱している状態だというのに最適解を選べる俺はやはり天才だった。
かくして逃走しか頭にない俺はルイを持ち上げて地を蹴り狭い通路を全力疾走する。枝分かれした迷路のような通路を何度か曲がり、機械たちの走り迫ってくる音が聞こえなくなった地点でようやく足を止め、俺はルイを床に下ろして一息つく。
「これで撒けたろ……しかし、どうしたものか」
「?何ニャ」
「どこへ行けばいいか分からん!」
通路はいくつも枝分かれしているし、このやけにメカメカしい工場の内部はまさしく迷路だ。今のところは気配察知にも何も引っかからないし、完全にこの狭くて暗い迷路のような空間を彷徨い歩くしか選択肢がなくなっている。
「なら、あの時ダンジョンで使った周りの地形が分かるっていうソテー?を使えば楽に……ニャ?何か遠くから変な音がするニャ」
「ルイ、ソテーじゃなくてソナーだ。確かに魔力消費量は激しいけどソナーを使えば、進むのが楽になりそうだな。後変な音って何?」
俺は疑問から耳を澄まし、ルイの返事を待たずして答えを得る。その音は非常に小さく遥か遠くから聞こえてくるようで、ドリルの音ともチェンソーとも捉えられる奇怪な音は鈍く薄暗い空間を反響して俺たちの鼓膜を僅かに揺さぶった。
「そういうことね……よしルイ!音の方向へ向かって歩くぞ」
「んー……分かったニャ」
返事の芳しくないルイはジャンプし、肩ではなく俺の頭に乗る。加えて頭の上で香箱座りをするというバランスの良さを俺に見せつけてきた。
正直邪魔だが、俺は寛大な心を持っているのでそれを無視して目的の方向へと歩み出す。音の正体は分からないが、そこに人がいるということだろう。気配察知には全然引っかからないし、恐らくいるとしたら音の方向の可能性が高い。
と音に対して結論づけた俺は歩み続け、謎の音は近づくにつれて大きくなってきているのがわかる。しかし、思ったより通路が広く複雑なこともあって思うように進むことができない。ちなみに探索の過程でいろんな部屋に入ったりしてみたが、機械が一人でに何らかの作業をしており、それはそれはファンタジーのイメージをぶち壊すような光景が広がっていた。機械に全てを任せているのは人件費削減……いや、もしくは単純に人に見せられないような何かをしているのかもしれない。
そんなこんなで目的地へ行きたいのに道が入り組んでて思うように進めておらず、俺は頭を悩ませていた。そんな俺を見つめ、何かを閃いたような表情をするとルイは「道が複雑で進まないのなら、壊して進めばいいニャ」と天才的な提案をしてくる。
俺の脳裏には一瞬そんな派手な事をしていいのかという考えがよぎったが、思うように進めなくて若干ムカムカしていた俺は特に何も考えずに喜んでその提案を受け入れていた。
「そうだよルイ、悩んでいた俺が馬鹿だった……道は自分で切り開かなくっちゃなぁ!」
どこかで聞いたセリフを吐いた俺は、鬱憤晴らしと言わんばかりに散々行く手を阻んでくれた壁を猫パンチによって殴り飛ばす。分厚いように思われた壁は、轟音を立てて破壊され、大きな風穴が開かれた。ストレスが発散されひとまず冷静になった俺は何やってんだ俺!と後悔するが時は既に遅い。
だから仕方ないとーーこの際気にしないことに決める。あの元気に鳴っていた音は俺たちの行動が原因からか停止した。しかし、方向が分かっている以上問題はない。俺はそのまま一直線に壁を壊しながらルイと共に進んでいく。
ーーそしてすぐに、気配察知に複数の存在が引っかかった。
それらは一つの大きな部屋?空間に集まっているらしく、一人を除き身動きはしていない。
「妙だな……寝てるのか?」
外は暗いから恐らく今は夜中。ここの従業員、または犯罪組織の人たちが寝ていてもおかしくはない。
そう思い更に先へ進むと、鉄の硬そうな扉が見えてきた。気配察知は扉の先にこそ気配があるのだと示している。俺は扉の前まで行き立ち止まると、ゆっくりと頭上に手をやりルイを持ち上げ地面に下ろす。
「主、ここみたいニャ」
「分かってる。開けるぞ……」
緊張しつつ扉を両手で押すと、ギィと不愉快な音を立てながらゆっくりと開いていく。
ーーそっと首を傾げて開かれた扉の中を覗き込むと複数の気配があったにも関わらず、そこには一人のオッサンだけが立っていた。
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