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39話 一安心



 さっきまで戦いに集中しすぎて気づかなかったけど、俺もう限界っぽいな。幸いアランが助けに来てくれたみたいだし、奴も俺たちを狙わないってことらしいからもう寝ていいよな?俺頑張ったし。


 俺はアランを見つめながらそう心の中で呟くと、眠気に身を任せるようにして静かに目を閉じた。


………

……



「〜〜〜。じ……主……」

「?」


 目を開けると、俺はスラム内のどっかにいた。相変わらず光はほとんどなく、寂れた雰囲気だ。風が吹くと地面の砂が舞い上がり、俺の顔面を襲う。


「ごほっ!俺は何でここに……」


 起き上がって状況確認のため周りを見渡すと、すぐ側には深刻そうな表情を浮かべているアランと、それとは対照的に安心した様子のルイがいる。そして地面にはあの少年が寝かされていた。


「また転移を使ってしまったよ。お陰で頑張って集めた力がもうすっからかんだ」


 不機嫌そうな顔を浮かべるとアランは俺を見下ろす。親に叱られるのを回避しようとする子供のように、俺はどう弁明しようかと頭を巡らせた。


「本当にごめん。まさか相手が悪魔だとは思わなかったんだ……」

「いや……君が謝る必要はない。これは君たちの行動にあまり注意を払わなかった私の不注意が原因なんだ。それに、一回戦ったということは再戦する時の対策が取れるということ。本当に君が責任を感じる必要はないんだ」


 慰めるような口調でポジティブ発言をするアランだが、実際は詳しく敵のことを調べつつ敵側に知られないようにこっそりと万全の準備をしておきたかったんだろう。


 共にいる時間は短いが、計画と準備に力を注ぐアランの性格から恐らくそんな感じの考えがあったんだろう事が伺える。アランからすればこちらの存在が敵側に知られてしまったという出来事は、大きく計画を狂わせる要因になるはずだ。


「あと当然だが、もうこのような事態にならないようにこれからは君らの行動は厳重にチェックさせてもらう。文句は受け付けない」

「まぁ、そうだよなぁ。これで文句が言えるほど俺は図太くないよ。相手のことをよく調べもせずに勝手に敵地に突っ込んだのには本当に反省してる。だからせめて謝らせてほしい……ごめんなさい」

「……ふむ、いい心構えだ。これからも反省から様々なことを学んでいくといい。そうすれば、もっと君たちは強くなれるだろうからね。さ、疲れてるだろう。君たちはもう宿で休んでくるといい。明日は厳しくなる予定だから、よく疲れをとっておいてくれ。それと、ルイから事情は聞いている。この子はこちらで適切な処置をした上でロッドに預けておくよ」

「ありがとう。助かるよ」


 俺は疲れ切った体でなんとか人化すると何故かアランの頭の上で寛いでいたルイを腕に抱いて宿に戻ろうと歩き出す。周りは真っ暗で、頼れる光は空から降り注ぐ光のみだ。


 何気なく空を見上げると、地球では見られないような綺麗な星々と、今にも落ちてきそうなぐらいの大きな月のような何かがこちらを見下ろしている。


 俺はそんな幻想的な景色を見て癒されて、落ち込んでいた気分を少し回復させた。


「そういえば……」


 物憂ものうげな雰囲気で俺は静かに呟く。


「にゃむ……どうしたのニャ?」

「宿……どこだっけ」


◆◇ ◆◇


 あれから方向音痴を発動させていた俺は、ルイの案内により無事目的の宿に到着した。ルイに方向感覚があって助かったぜ。でも最近はルイに頼ってばっかだし、本格的に主失格な気がしてくる…… 。これからはもっと頑張らないとだな。


「よっこらせ」


ボファァ……


 俺はベッドに仰向けに飛び込み、空腹なことに気づくと魔法袋から簡単に食べれる食べ物を取り出してルイに配る。食料はまだまだ沢山あるから、しばらくはなくならなそうだ。


 ルイは俺のお腹の上に座って前足を使いながら器用にご飯を食べ始める。俺はというとルイの頭をゆっくりと撫でながら布団の上で夜食を摂っていた。


「そういえば主……ベッドでご飯を食べるのは行儀が悪いって誰かが言ってた気がするニャ」

「気にするな、それはご飯を溢したらの話だ。俺は溢こぼさないから……あっ」


食べていたものが崩れて欠片がポロッと布団に落ちる。


「綺麗にできるから問題ないニャ」


パァァァ


 欠片が魔力に覆われて浮かび上がると、ゴミ箱へ捨てられる。見事に布団からは欠片が取り除かれ、証拠がなくなった。


「ナイスだルイ!これで俺の行儀は悪くないな」


 それから食事が終わり、俺は寝る為に目を閉じる。ついでにルイを抱きしめていつものように寝ようとした。その時、脳裏に刺激が走る。


「あ」


 そういや情報交換のために俺、ロッドと集合する約束してたんだ。……今から行くか?いやでも、流石に気力が湧かないなぁ。疲れてて動ける気がしない。約束を破るのは忍びないけど、仕方ないよな。後でちゃんと謝っておこう。



 そんなことを考えながら、俺は微睡まどろみへ落ちていく。明日は何をやるかは知らないけど厳しいらしいし、ちゃんと疲れは取っておかないとな。



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