第70話 パワーの源
なんとか、書けました(笑)
「いまですニャ!」
ライムが叫んだ。
「時間魔法」
「遅滞、発動」
赤く可視化された空間内で、
『炎の巨人』たちの動きに、ブレーキがかかる。
オレは、全力で走った。
右の手には、一振の刀が握られていた。
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時間は、すこしさかのぼる
「助かった…の」
娘のミラさんが、起き上がった。
「…どうなってるの?」
「あんな強力なブレスを撃つなんて…」
「…ありえないわ」
呆然と、ミラさんが言った。
「ドラゴンじゃあるまいし…」
さっきも、セシリアの突っ込みに「不思議ね」とか言ってたから、そもそも、あんまり、あてにならない人かもしれない。
でも、彼女には、『胸ぽよん』があるから、いいんじゃないかな。なんか、動くたびに揺れてるけど、下着とかつけてないのだろうか。
いま、目の前には、かまぼこ型の『バビルの塔』がある。もう、一発食らったくらいでは、びくともしないだろう。
光の粒子にしてしまう、うちのドラゴンの荷電粒子砲とは違う。
でも、
「回り込まれるとやっかいですニャ…」
とくに、
五体で、散らばって攻めてこられると、けっこうきつい。
オレは、即座に、城壁から飛び降りた。
ブレスを食らって、さらに、うろたえている兵士たちを、横目で見ながら、『バビルの塔』を回りこんだ。
「あんたたち、しっかりしなっ!」
「いつまで、寝てんだいっ!」
あの、ばあちゃんの声が、後ろで、響いていた。
たのもしいばあちゃんだった。
『炎の巨人』が見えてきた。
「まだ、四つん這いのままですニャ」
「ジュンくん、ジュンくん、いまのうちに、スクラップにしちゃおうよ!」
なぜか、セーラまで、ぴったり後ろについて来ていた。
けっこう、全力で、走ってきたのに…。
この女神の身体能力って、どうなってるんだろう。
「じつは、セーラちゃん、ぴったり、ジュンしゃまの後ろについて、飛んでますニャ」
そ、それって、まさかっ!
「『スリップストリーム走法』ですニャ…」
まあ、飛んでますがニャ……
くっ!
ずるいぞ!セーラ!
…………
まあ、いまは、セーラにかまっている場合ではない。
「効果範囲、設定」
「可視化、赤」
『炎の巨人』が、赤い光の箱で、包まれた。
「なんか、色が、暑苦しいよ。ジュンくん」
「そうですニャ」
ここは、
「すずしい『ブルー』にしたいところですニャ」
うるさいなあ…
「重力魔法」
「加重、発動」
四つん這いになっていた『炎の巨人』たちが、いっせいに、地面にめり込んで行く。
砂だから、よく沈むのだろうか。
まあ、そのときには、徹底的に沈めてしまえば、いっか…
ぴしぴしぴしぴしっ……………
「ちょっと、ひび割れて来たね、ジュンくん!」
「このまま、一気に、スクラップですニャ!」
順調に、SD化が進んでいるようだ。
『…たい』
『……たい…よぉ』
「…ん?」
セーラがぴくりとした。
『…けて』
『……け…よぉ』
「…ふみゃ?」
ライムもぴくりとした。
『……もう、だ…め…』
『………つぶ…う…よ』
「「!」」
「だめっ!ジュンくん!」
「魔法を、キャンセルするニャ!」
「なに言ってんの?」
「はやくはやく!とめて!」
「このままだと、消えてしまうニャ!」
そういえば、娘のミラさんが、ブレスのあとで、起き上がったときに…
こう、やわらかそうな胸が、『ぷるんっ』とはじけて…
『ドラゴンじゃあるまいし…』
たしかに、そう言っていた。
「お胸から、記憶をたどるとは…」
「さすがです!わがオーナー、ジュンさま…」
いつのまにか、うちのドラゴンまで、近くを飛んでいる。
また、口に出していたのだろうか。
セーラと、ライムの視線が痛い。
「ジュンさま、アレからは、わが同胞のソウルが感じられます」
そういって、SDなりかけの『炎の巨人』を、悲しげにみつめている。
「なんとか、助けてやっては、いただけませんか」
ドラゴンの頼みに、セーラたちが答えた。
「…だめなんだよ。もう…」
「…そうですニャ」
あのまま救い出しても、『炎の巨人』でいる以上は、苦しみ続けるしかない、と言った。
…ってことは、やっぱり、
「そうですニャ…」
「たしかに、あのブレスの威力は、おかしいのですニャ…」
「わたくしのような、超最先端技術の粋を凝らして、造られたわけでもないのに、威力が高すぎます」
こいつ、さりげなく、自慢してないか…
「『魂魄』を使った呪法だよ…」
「ひどいことをするものです…」
「われわれも、ずいぶん、ナメられたもんニャ」
われわれとは、天界のことだろうか…
「あのゴーレムの中には……」
「子どものドラゴンの『魂』を封じ込めてあるんだよ」
「苦しみ、もがく魂が、あのパワーの源だよ」




