第71話 信心が足りない?
ひっぱるつもりはないのですが、説明も必要ですし、淡々と説明するのも、退屈な気がしたので、こんな感じになってしまいました。
「…で、どうすればいい」
助けられるものなら、そうしてやりたい。
でも、このまま、手をこまねいていれば、ただ、攻撃を食らうだけだ。
「ボクは、神剣しかないと思う…」
「そうですニャ…」
「ゴーレムから解放すると同時に、魂も浄化するとニャると…」
ジュンしゃまの場合、
「魔法だと、威力の加減が、難しいですニャ」
「神剣か…」
アレは、正直言って苦手だ。
「ジュンくんは、剣の大神さまから、授かってるよね」
たしかに、もらってはいる。
そもそも、あの、天界での、三日三晩の特訓のとき、
たしかに、オレは、剣の大神さまの特訓も受講した。
最後の特訓のあとだったと思う。
剣神さまが、こんなことを言い出した。
「ジュンよぉ、おめえに教えることって、あんまし、なかったからよ」
だから、「こいつをやる…」
そういって、ボールのようなものを投げて寄こした。
エメラルドのような、きれいな碧の色をしている。碧玉とかって、こんな感じだろうか。
「パワーストーン?」
神さまなので、そっち系かと思った。
「ちげえよっ!」
何で、剣神のオレが、そんなものプレゼントしなきゃいけねんだよ!
「…じゃあ?」
足の裏で転がしてると、健康にいいやつか。
「神剣だよ」
「…剣?」
「ああ、ちょっと、そのまま、腕振ってみな」
「ちげえよっ!」
神剣持ってるほうの腕だよっ!
「てめえ、わざとやってんじゃねえよっ!」
しかたがない。オレは、その『ボール』を持ったまま、腕を振った。
しゅんかん、「おおっ!」。
オレは、一振りの刀を握っていた。
「それが、おめえの望む………かい」
「なんとも、禍々しいじゃねえか…」
剣神さまが、目を細めて、じっとオレの刀をみていた。
『妖刀村正』をイメージしたのが、まずかったろうか…
「そういうことじゃねえんだが…」
まあ、いいだろう…とか、ひとりで納得している。
「でも、こんなすごいもの、もらっていいんですか?」
「ああ、遠慮はいらねえ…」
「お礼に、差し上げられるものでもあれば、いいのですが…」
オレは、気づかなかった。
大神さまに、まんまと誘導されていたことを…
彼は、天眼で、オレの性格を見抜いていたのだ。
「そ、そうかっ!」
「それじゃあよ。おめえの、『例のハードディスク』を、まるごとコピーさせてくんねえかっ!」
ちょっと、鼻息が荒い。
「例のハードディスク?」
念のため、いったんは、とぼけた。
ちっちっちっ…
剣神さまが、立てた指を振りながら、
「ネタは、あがってんだ」
オレを、脅しにかかった。
『な、なぜ、アレの存在を!』
オレは、驚愕した。声には出さない。
「『天眼』ってやつぁな、すべてを見通せるんだぜ…」
どや顔で、自慢していた。
『天眼』つかって、何見てんだよっ!
ささやかな欲望に身を任せているうちに、おのずと蓄積された珠玉のコレクションだった。
剣神さまは、
「オレも、そろそろ、レパートリーを増やさねえと…、ちょっと限界を感じてきてなあ…」
と、情にも訴えてきた。
何のレパートリーなのかは、聞きたくもなかった。
…………
剣神さまは、コピーし終えたハードディスクを、オレに返してくれたあと、
「そうそう、『神剣』ってのはな…」
「おめえの斬りたいものを、斬ってくれるのさ」
だから、
「刀身で、届くかどうかなんて、目測する必要はねえ」
「斬りたいものの前で、『ただ斬ればいい』のさ」
そのかわり、
『神剣』は、『信心』で斬る。
「剣を、信じれば信じるほど、よく斬れる」
だがよ、
「剣を信じられねえと、刀身を保てねえ」
「それだけ、気をつけな…」
そういって、去って行った。
「また、よろしく頼む」と言ったのは、聞こえないことにした。
こういう経緯で、ころがりこんできたのだ。
『神剣』が、苦手になるのも無理はないと思う。
オレは、収納から、『神剣』の玉を取り出してみた。
軽く、腕をふる。
オレ版『妖刀村正』が、手に握られていた。
『柄巻(グリップのこと)』が、赤いのも、カッコイイ。
しかし、ここで、どうしても、
「…レパートリー増やさねえと…」と、 情にうったえてきた、剣神さまの姿が、脳裏をかすめてしまう。
「ジュンくん、ジュンくん、刀の刃が消えちゃったよ!」
「『神剣』への信心が、足りないのですニャ!」
コレって、たぶん、例の『秘蔵ハードディスク』の対価なのだ。
それを、どうやって信じろというのだろう。




