戦闘開始!
戦闘の準備は着々と整えられていく……
「そう言えば国王はどんな武器で戦うんですか?」
「いや俺はそんなに戦う能力は無いで?」
「……どういうこと?」
獣人は力こそ全てと思っていた俺の頭にハテナが浮かぶ。その顔に言いたい事に気づいた国王が笑う。
「ハハハ! 戦うだけやったら多分、俺は娘にも勝てへんと思うよ! ………… まぁ、シノには言ってもええかな……」
山のように積まれた俺が作った武器をチラッと国王が見る。信頼されているのかな? なら嬉しいな……
「俺には特殊なスキルがあるんや…… 《仁王尊》って言ってな、仲間が俺を信じて後ろに居てくれたら、その仲間の数だけ強い結界が使えんねん! 」
「ほう、結界ですか? 」
安倍晴明みたいな陰陽師的な感じ?
「まあ透明で大っきい盾みたいなもんやで!」
え? 本当に京都で安倍晴明が張った結界みたいなのを使えるの!?宇宙人の思念体さんは一体何なんだ何でもアリか?
そういえばカリスト様の家系にも特殊スキルの話があったな。この星はステータスだけでは及ばない何かがあるな…… 魔法の素である宇宙人さんと話してみたい……
「前回の戦いの時もめっちゃ使ってんで! 敵もビビリまくっとったわ! 」
あー…… 今なんかバッチリと理解できました。王城の隣の鍛錬場か……
「王女が始めてアヘミクレヘンのスパイクを使った、広い鍛錬場に国民を集めて国王のスキルで全員を防御するという事ですか?」
国王はニーッと笑う
「ホンマ理解力がエグいな…… 婚約者のフリやなくてホンマに娘と結婚せぇへんか? 祝福するで?」
これは…… どういう顔をすれば良いんだ?と悩んでいると、「考えといといてやー」と笑いながら国王は装備品の確認に戻って行った。
なるほどなるほど、堅牢な守りがあるなら俺は遊撃で頑張るとしよう。
翌日の昼過ぎに敵の進撃を確認したという急報が宿屋にあった。ちなみにワルフはまだ穴にいる。トイレとか大丈夫なのか?
「空から人族の軍勢を発見した鴉の獣人の報告によると、予想より進撃は早く、夕方には城下町に到達する模様です! 」
「…… そうか…… ホンマに来よったか……! 国民を王城の隣の鍛錬場に集めよ! 迎撃班は各隊の隊長に従い街を利用して有利に戦に臨め! 」
国王の言葉に家臣が動き出す。どうやら野獣国は防衛戦をとるようだ。
★☆
野獣国の王都から敵の影が見えたのは予想よりさらに早い昼過ぎだった。
敵は魔法で迷彩処理をして見えないように近づいてきたようだが、来ると分かっているので魔法の揺らぎを離れた所から容易に確認できた。
「しかし見えないってのも不便だな…… 」
俺は王城の高い場所から敵を見て呟く。
「なんとかならへん? ダーリン 」
王女の俺への呼称がダーリンになっていた…… いや本当にやめてくれません?
「何とか…… か…… やってみるわ! 生きるんだぞアイ! 」
「あ!ダーリン!行ってきますのチューは!?」
王女の言葉を無視して、頭をゆっくり撫でて笑うと超能力で上空に飛び上がった。
王城上空には色んな種族の鳥獣人が飛んで待機していた。
「ちょっと敵を見えやすくしてきますー! 」
「人族が飛んでる!? 」
あまりに驚くので苦笑する。
そう言えば大々的に超能力を人前で使うのは前世を含めて初めてだな!
鳥獣人にぺこりと挨拶ひてから、敵軍がいる方向へ瞬間移動をする。
「おーおー魔法の迷彩ってこうやるのか…… 風と光魔法か…… 勉強になるが、とりあえず! 風魔法は散れ!! 」
両手で大量の魔力を使い風魔法を打ち出し、敵の前線に叩きつける。
風は暴風になり静電気をバチバチと発生させながら、敵の魔法迷彩の根幹である風魔法のスクリーンをぶち破り、勢いは止まらず地面に並ぶ兵士にぶつかり殺し飛ばしていく。
「たぶん100人は余裕で殺したか…… 産まれてから魔物を殺す生活を長くしていたから、敵と思ったら同族殺しでもそこまで落ち込まないな…… 」
人殺しの言い訳を1人でブツブツ話しながら敵を見る。言い訳をしていないと、心が冷え切ってしまう。
俺の魔法の余波が残っているのか、旋風が隊列を崩れていく。
「しかし、何千人いるんだよ…… コレ…… 」
これを全滅させてしまっても、神様との約束通りに俺は天国に行けるのか?
神様の顔が脳裏によぎる…… その躊躇がダメだった。
魔法迷彩が消えると隠蔽は関係なしという風に、戦列が左右に急速に伸びて野獣国王都に到達してしまった。
急いで雷と光魔法で、敵兵達を潰そうとするが数百人の兵士や兵站を載せているのだろう馬車が数台王都に押し入った後だった。
「あっちはあっちで頑張って貰うしかないかな…… 」
俺はまた独り言で言い訳をする。また、大量殺人をするんだと考えるだけで胃液が喉にまで上がる。
でも、止めてはダメだ。王女の笑顔を思い続けて強い魔法を放っていく。
「逃げてくれ逃げてくれ…… !お前ら、自国に帰りやがれや!」
出来るだけ殺したくはない。
空の上から卑怯に人を蹂躙する機械と化した自分に苛立ちが増す。
土魔法で突き刺さす
大きな光魔法の柱と雷の柱を敵に落とす
火魔法で人を燃やしていく
その全てに悲鳴や叫び声、飛び散る血肉があった。
これで1000人は殺してしまっただろう……
溢れる涙を拭いながら上空から敵を見ると、ワーッ!敵の一部隊が大きい声を出しながら方々(ほうぼう)に逃げていくのが見える。
「よかった…… あれは殺さないで済みそうだ。」
その時、俺へお返しのように光魔法が迫る!
「お!ここまで飛ばせるヤツがいるのかよ! 」
すぐに瞬間移動で避けるが、少し肩を焼かれてしまう。
ジューッと溶ける肩の肉に回復魔法をかけて射撃してきた場所を確認する。
逃げ惑う兵士達の中心に薄目の痩せこけた男が指揮棒をこちらに向けて睨んでいた。
「何か…… 叫んでいるな…… 」
薄目の男が何かこちらに叫んでいるので耳に強化魔法を使う…… っつ! 兵士の悲鳴や嗚咽が飛び込んで来る…… 強化を強くし過ぎたか……
「私は神の使者であるウスーミだ! 空は神の領域である! 汚物である獣人が飛ぶでない! 早く降りろ! 」
俺を鳥の獣人と間違えているらしい。
指揮棒といい、1人だけ高そうな白衣を着ている事からこの戦の重要な人物と分かる。
「取っ捕まえてやる…… 」
俺は空を降りてウスーミに対峙する。
それが大きな間違いだとその時は気付かなかった……




