超能力おいしいです!
「…… なに? 人族だと? 」
ウスーミは空から降りて来た者が人間だった事にまず驚いたようだ。
「アンタが隊長か何か? えっとウスーミだっけ? 」
ジッ…… とこちらを睨む男、ウスーミから話す気はないようなので、こちらから話をする。
周りの敵兵は魔法を発動していた場所から降りた俺を見て悲鳴をあげて逃げていき、魔法で足を潰されたりして動けなくなり戦場に残された兵士は震えながらこちらを静観している。
…… 原野に立つのは俺とウスーミだけになったのだ。
「軍を率いて獣人を斬殺、民族浄化なんかしやがって…… まるで悪魔だなオメェは…… 」
「違う…… 」
「あ"? 」
「私は教皇様…… いや神の使徒である!悪魔と呼ぶのは不敬である! 」
激昂しながら裏返った高い声で、ヒステリックにウスーミが叫ぶ。
ピンっと直立になり神を思い描いているのか、恍惚の笑みを浮かべる男に嫌悪感が増す。
「へぇ…… 偶然だな…… 俺も神の使徒なんだぜ? 」
これは本当の事だもーん!
ステータスに書いてますぅー!ばーかばーか!
ウスーミは喫驚したままの顔で、指揮棒を持った腕を振り上げては、振り下ろす事を繰り返し光魔法を連続で放ってくる。
指揮棒は魔法の発動と共に光るので魔力を増幅させる杖の役割もしているんだろうか?
「神の! 使徒と! 軽々しく! 言うな! 死を持って神に詫びなさい! 」
言葉の節毎に放たれる光魔法を避けてはこちらもカウンターで魔法を放つ。
「…… 当たらない!? 」
俺の魔法は全く当たらず、まるで先読みするようにウスーミは避けていく。
逆に俺へ放つウスーミの攻撃は補正されて俺に擦りだす。
「何故だ!! 」
なぜか当たらない! 魔法のカバンからアヘミクレヘンのクレイモアを取り出し斬りつける。
暴風や光魔法を付与して斬りつけるが全てを避けられる。
俺の攻撃の度に、カウンターのようにウスーミの魔法が俺の肉を削り服を破く。
俺は…… 高いステータスと回復魔法でダメージは無いが精神的に追い詰められてしまう。
だって、今の俺の格好…… ウスーミの攻撃のせいで春前なのに筋肉自慢をする為に変な薄着を着た勘違いさんみたいなんだぜ?
もう袖ボロボロ…… え? 肩の筋肉見せたいの? って感じ。
ズボンはホットパンツを過ぎて左側の脚はハイレグみたいになってしまっている。
「神の慈悲として教えましょう…… あなたは経験不足です。攻撃する方向へ首や目が動き、魔法を放つ場所への魔力放出が目に見えるように分かりますよ 」
ウスーミはこの旅団を任される立場になる為に多くの異教徒や獣人を殺してきた。
その狂った脳内にある戦い方の経験値は、戦闘中に膨大な選択肢を与え瞬時に最適解を選び体もそれに応えるまでに死線を越えてきた。
剣など尚更で、頼みのシノーンの魔法が強大でも問題はない。要は避ければ終わりなのだ。
シノーンの剣技はシートに訓練されたとしても熟練の剣士にはまだ劣る。
魔法による攻撃は大砲から放たれる弾のように直進にしか動かない。
つまり、ウスーミは経験だけでシノーンを抑え込んでいるのだ。
「クソッ……」
ウスーミが有利だと思ったのか、退避した敵兵が距離はあるがこちらに戻ろうか伺っている。
早く倒さないと……
「焦っているようですね…… いい事を教えましょう…… この草原での戦いは、ただの時間稼ぎなんですよ……! 」
────シノーンは自分のステータスを野獣国の教会で測った事が、この戦いのキッカケになった事を知らない。
そのステータスを持つ者に対応する戦力として教皇が指名したウスーミが招集された事も……
「時間稼ぎ…… まさか! 」
王城の方へ振り向く……
まさか…… さっきの馬車で王都に雪崩れ込んだ敵兵が本陣…… ?
その振り向いた後頭部に光魔法が当たり爆ぜる。
「グッ…… !」
「どこを見ているんですか? 不敬ですね? 神の使徒の前ですよ。余所見はなりません」
「クソおわっ! 」
口を開けた所にピンポイントで光の魔法がシノーンに叩き込まれる。
咳き込みながら距離を取り光魔法を放がしかし…… とことん躱される。
「当たれ…… 当たってくれ…… ! 」
早く王女を助けないと……「ダーリン」と笑う王女が脳裏に浮かぶ。
当たれ……
当たってくれ……
その思いはシノーン…… 蝶野洋力として初めて超能力を使った日に同じだった。
「ばあちゃんを助けたい!」
その思いと同じ気持ちは、シノーンが経験足らずのせいで劣敗へ至りそうな中で…… 忘れていた超能力を作動させた!
───────ビジュッ!!!
「ぐっ! 何だと! 」
苦し紛れに放った光魔法の軌道が、クキリと曲がりウスーミの左手に当たるとそこが蒸発した。
「…… 曲がった…… そっか…… そうか! 」
ニヤリと俺は笑う!
魔法は超能力で曲げられる事に気付いたのだ!
「魔法が曲がるなんて…… ! 」
ウスーミが驚愕をして叫んだ。
「…… 神の使徒さん急がないといけないみたいだから、サクッと終わらせてもらうぞ! 」
俺は連続で光魔法と雷魔法を放ち、避けたウスーミへ念動力で軌道を曲げて背後から魔法を命中させた。
散り散りの炭になったウスーミだった物を見て、集まり出していた敵兵は叫び声をあげながら再度、逃走していった。
残るのは、死が確定した敵兵の魔素が光り輝き漂うだけになった。
体に経験値が吸い込まれ俺るが今は急がないと!王城へ…… 王女の近くへ…… 早く手が届くように瞬間移動をした。




