戦争の終わりは真っ白な光の中に!
シノーンがウスーミと対峙している時、王都には敵軍の最前列に詰めていた囚人兵と奴隷兵が雪崩れ込んでいた。
この囚人兵と奴隷兵は同じのようで違う。
囚人兵は神に背く罪を犯したが、500万円というお布施を払う事で罪は浄化される。
死罪を免れた彼等は一般人には戻れないが教会に囚われ生きながらえり事が叶った者。
奴隷兵は奴隷商人によって売買され兵士として【必ず死ぬ】ように魔法でその命に呪いのように逃れられない契約された者である。
教皇国で極めて残虐な兵士がこの囚人兵と奴隷兵である。
罪は許されたが一生の間、犬のように教会で飼われる事に自暴自棄になっているのが囚人兵。
死ぬと分かっていて刹那的に行動するのが奴隷兵と説明すると分かりやすい。
街に入った囚人兵は残った獣人の民間人や兵士を探し残虐に殺そうと走り回る。
奴隷兵は自分は魔法により必ず死ぬと分かっているので街に火をつけて戦闘中に関わらず犯せる女の獣人を探していく。
街に残るのは足腰が弱った老人がほとんどだ。
「王城に辿りついても邪魔にしかならぬ」
と家に潜んだ老婆を見つけては年齢など関係なく加齢により動かぬ足を折ってでも快楽的に犯して爪を剥ぐなどをしてから殺していく。
男の獣人の老人は奴隷兵に油で滑りやすくした肛門を犯され、尊厳を傷つけられた老人が怒り狂うと、その声に苛立つ囚人兵が歯茎ごとナイフで歯をもいでいく。
血濡れの歯を握りしめて、いいお土産になると笑うその顔は人に見えないぐらいに醜い。
逃げ遅れた若い獣人の男女が奴隷兵に見つかったら性別に関わらず、一緒に死のうとばかりに炎の中で犯しながら焼け死ぬ。
熱い! 熱い! と泣き叫ぶ獣人の声を外で聞く奴隷兵は、興奮により自分の陰茎を立てる異常さで微笑み、まだ残っているんじゃないか?と獣人の生き残りをゾンビのように探し回る。
そんな地獄が野獣国にあった。
しかし悪魔のような敵兵に初めは後退していた野獣国側の兵も、統率者であるウスーミがいなくなると敵兵達を団結を持って押し返しはじめる……
「国王様! あのシノという人族の少年が…… たった1人で王城の外の敵軍を打ち倒しました! 」
梟の獣人が空から羽ばたき降りて国王に報告する。
「ホンマにシノさんは凄いなぁ…… アイ、王族とか人種とか関係あらへんシノさんを落としなさい」
「分かってるってウチもダーリン大好きやから一緒になってくれるまで諦めへんよ! 」
真っ赤になりながらも王女は国王の言葉を真正面から受け止める。
国王と王女の後ろには野獣国の国民が避難しているのだが大声で親子漫才のように喋るから国民から笑い声が溢れる。
この戦は野獣国が勝って終わると皆が気を緩めた時だった、避難所である鍛錬場の前に一台の教皇国の国章が描かれた馬車が停まる。
御者をしていた奴隷兵はニヤニヤと馬車の荷台に入り誰か?と降りてきた。
…… それは人か判断できないような容姿をしているので野獣国の人々は困惑の為に攻撃を躊躇ってしまった。
裸に剥かれ血を滴らし体中に魔石を埋め込まれて痛々しいそれは、奴隷兵によってドンと前に押し出される。
関節が曲がりにくいのか、ガチャ…ガチャ…… と魔石が当たる音を鳴らしながら奴隷兵に蹴り押されながら脚を引き摺り歩いてくる。
指や足はまともに動かず、何かを言おうと開く口内にも魔石がギッシリと…… 血に浸されている。
自分で死ぬ事も出来ないその酷い姿に獣人の女や子供から小さな悲鳴が聞こえる。
「なんやアレは? 」
「えっぐいやなぁ…… 」
国王と王女はその人のような物に眉を顰める。
耳や尻尾はあるから獣人だろう…… その耳と尻尾も引きちぎられた痕しか分からないが……
ガチャガチャと少しずつ奴隷兵に押されて近づくソレはよく聞くと何かを話している。
「にへ…… おほ…… さ」
喉から満足に息が出せないのか、小さい声なので獣人の耳にすら正しくは届かない。
少しずつソレは近づく……
「にへて…… おほう…… さん」
段々とソレの声が分かり出す。
「にげへ…… おとおはん…… ごめふなさい」
王都の街を焼いていた風の流れが変わり、国王に向かいピュゥと風が吹いた。
国王の鼻に、この人のような者の匂いが伝わる。
この人のような物からの匂いは、死んだと思っていた我が子の匂いだった。
「逃げてお父さん、ごめんなさい」
そう言っていると理解すると、国王は涙を流しながら王子に駆け寄る。
まだ寒いだろうに…… と自分の上着を剥ぎ取ると抱きしめた愛する息子にかけた。
国王は裸の息子を泣きながら摩り続けて、どうにか治せないかを確認する…… 下半身から見える我が子の性器の無惨さに自分の唇を噛みきり血を流し怒りに震える。
歯の代わりに埋められた魔石をガチャガチャと鳴らしながらずっと謝り続ける姿に国王としての責務など飛んでしまっていた。
王女は一緒に遊んだ兄がこんな姿に変わった事に涙を流し地に伏せてしまう。
「お父はぁん…… 逃けて…… ごめんなはい…… 」
─────光の魔法が一筋
キラキラと王子の体に落ちた……
王子を連れてきた奴隷兵がニヤリと笑う。
奴隷兵がごく少量の魔力で光魔法を王子に放ったのだ。
「まだこの子に何かするのか!」
そう怒ると同時に王子の体に埋められた魔石が光り暴走する。
それは教皇の命令によりギリギリまで魔力を溜めた魔石が爆発する前兆だった。
その時、ウスーミを倒したシノーンが瞬間移動でその場にいきなり現れる。
国王はシノーンに素早く気付くと
「アイを頼む」
と言って王子を力強く抱きしめた。
光りながら魔石が暴走する様子を見たシノーンは素早く王女に近づき、身体強化魔法2人に使ってから瞬間移動を使い全力でその場を離れた。
国民を助ける事は時間的にムリだとシノーンは判断したのだ。せめてアイだけでも…… と。
「息子よ…… 守れなくてすまぬ…… 」
「父さ……ん…… 」
ひし、と抱いた息子に埋まった魔石がビカビカビカと眩い輝きを放ちながら光魔法の暴走を繰り返す。
「おかーさん、あれ綺麗」
獣人の少女の言葉がやけにハッキリと聞こえた。
そして魔石は弾け、爆破した。
魔石から爆発した光は高速で広がっていく。
その光は全てを巻き込み、人が触れると人の形を留めず、家や城もその全てが蒸発する威力を持つ光魔法の大爆発になっていく。
シノーンと王女は瞬間移動で逃げたが、その大規模な爆発に巻き込まれ、暴風に飛ばされて体を岩にぶつけて止まる。
体中の痛みに耐えながら、シノーンは自分の体がちゃんと王女を庇っているのを確認すると、そのままシノーンは意識を失った。
こうして野獣国の王都が世界から消えたのだ。




