アヘミクレヘン!
「そういえば、聖女キュレネは衆人環視で話題になっているけど、シノ…… あなたも話題になっているわよ」
カリスト様が留置所から出た俺に所持品を返しながら注意してくれた。
なるほどまだ暗い時間に出してくれたのはコレかい……
「シノは煩わしいの嫌でしょ? 」
「ああ! ありがとう! 」
なんか地球に思い残した事が一つ終わったから吹っ切れた。
俺の笑顔にポーっとするカリスト様。
「いい笑顔ね……… やっぱり私と結婚しない?」
「さあ? どうでしょう? 」
えっ!? と驚くカリスト様に手を振り俺は走り出した。
「…… 断られなかった…… のよね? 」
カリストは断られなかった事に驚き、次第に自分の体温が喜びで上がるのを感じていた。
「さてと!とりあえず王都から逃げるとしよう。」
まだ朝日もちゃんと出てない夏の早朝だから空を飛んでもバレないだろう……
上空は、気持ちのいい風が吹いているな……
夏の日差しに温めてられる前の風を楽しみ俺は瞬間移動を連続で使い町へと帰った。
────────あ…… あぁぁぁぁ…… お兄ちゃんが帰る気配がする…… お兄ちゃん待ってて早く帰るから……
キュレネは締め切られた窓からシノを目で探そうとするがいつもの様にシノはキュレネの探知範囲から消えてしまった。
☆★
オーディーの町で作った製品の全てが大きな市場になっている。
なんせモノを作れるのはウチの町だけなので独走的分野だ。例え図面があっても他では作れないだろう。
錬金術で繋ぎ目が出来るだけ少なくなるように鋳型を作ったりしているので、これは間違いない。
武器は銃火器や砲撃の工場ラインがあるんだけど、大公様に出来るだけ一般に売らないようにお願いされている。
それには俺も同意見だ。
中世時代の一般人がライフルを持つと考えたら恐怖で寝れなくなるだろうな。
「やっぱり武器販売の収入を考えると、剣とかを作るべきなんだろうな…… 」
「シノ様が…… 剣を…… !? 」
工場の事務室で考え事をしていたのを忘れていた。
アーネが苦笑しながらお茶を持って来てくれる。
「シノ、別に武器販売をしなくても大丈夫よ?」
「ありがとうアーネ、お茶うまし!武器販売は魔物がいる限り続けないといけない義務が鍛冶屋にあると思うんだよね」
「しかし…… 今更だが剣かのぅ…… 」
未来志向に走らせ過ぎた従業員にはもう剣は物足りないらしい。
「ワガママだなぁ…… 」
「こんなオイラにアンタがしたのよぉ〜ってか! 」
ワルフのヤツ何の歌だよ? この星の民謡か?
「えーっとムカついたからワルフは半月の減俸な」
アーネが俺の後ろで何かメモをする。
いや冗談だからね? 後で言っとかないとな…… ワルフ青くなってるわ。
剣…… かぁ……
素材でどうにか新しい物が作れないかなぁ……
ステンレスやチタンは面白いんだけどパンチが欲しいな……
こっちの星にある物で…… そうだ魔石か……!
魔石に錬金術をかけてみるか……
水の魔石を工場の素材ボックスを漁って取り出し全属性魔法をかける。
七色に輝いた後で魔石はパキンと割れてしまった。
魔石の特性では錬金術が合わないのか?
もしかしたら魔法を吸収しやす過ぎるのか…… ?オーバーフローを起こしている?
ならば合金にしてみようと考えてコランダムという鉱物を取り出し錬金術を使いアルミナという物質に変異させる。
これはルビーやエメラルドなどになる物質だ
アルミナと魔石なら合わさるんじゃね?
という適当な当て勘である。
アルミナは宝石に出来る物質、魔石は魔力を含んだ半貴石っぽいから貴石同士だ!
「錬金術! 」
アルミナと魔石が七色に輝いた後に金色の光が工場の事務室を満たしキラキラと光が弾けて降り注ぐ。
「綺麗…… 」
アーネが思わず呟く。
「い…… 偉業じゃあ…… 」
ドワーフが何人か気絶する。気絶を踏み止まったドワーフが気色悪いほど新しい鉱石を眺めている。
「半分鉱石の変な塊じゃのう…… 魔石を他の石と混ぜるなんぞ今までの歴史に無いはずじゃ…… 」
「半分…… 塊…… 変か面白いなその名前」
俺が腕を組んで考えるのをドワーフとアーネは静かに見ている。
AH!hemi塊変……
「仮称だが、アヘミクレヘンと名付けよう! どうだ? 」
新しい鉱物を持ってドワーフに示す
「アヘミクレヘン…… 良いですな! 」
「それで良いと思いますぞ! 」
アヘミクレヘンに魔力を注ぐと魔石より魔力の循環が明らかに高い。
感覚だけではなくアヘミクレヘン自体も魔力に反応して光り輝いている。
「凄いですぞこれはシノ様! 」
ドワーフが頷き合う。
「大きさが変化したのに魔石としての魔力の増幅能力を超えております」
魔力をアヘミクレヘンに流しながらワルフが震える。
「魔力量のエネルギー効率が安定しとります! 」
「どんな形にも変えれる魔石なんぞ昔話や御伽噺にもありませんぞ! 」
ドワーフが興奮しすぎて部屋がビリビリと震える。
まだ検証も終わってないのに興奮しすぎだろ?
次に、炭化チタンとモリブデンとアヘミクレヘンを一抱えにして錬金術を使う。
炭化チタンとモリブデンの合金は地球で切削工具の素材に使われている。
分かりやすい工具で言えば工業用のドリルと言えば分かるだろうか?かなり硬い鉄だ。
硬い合金とアヘミクレヘンが混ざるかの実験だ。
…… アヘミクレヘンの化合には錬金術仕様の魔力を大分使うようでグングンと魔力が消費されていく。
錬金術での素材は七色と白金色の光を繰り返し一つの塊になりグニャリグニャリと畝る!
─────クレイモアになれ!
光が美しい十字の形になり…… 光が消えない?
キラキラと光を湛えたクレイモアの剣が出来た。
「これは…… シノ様…… おそらくこの剣を世に出せば国中…… いや世界中のドワーフがアヘミクレヘンで鍛冶をしたいと工場に集まりますぞ…… 」
「いやいや、それは大袈裟っしょ? 」
ドワーフはハハハハハと笑う俺に、無言で答える。
「そんなにか? アヘミクレヘン……? 」
「はい。これは神の与えた金属と言われても我々ドワーフは信じれるでしょう…… シノ様…… アヘミクレヘンは量産できますか? 」
あ…… これは仕事モードに入ってるわドワーフ。
「シノ様…… 量産はできますか? 」
「はい」
「今の工場のラインの三割を止めてアヘミクレヘンの武器を作って良いですか? 」
「…… はい」
俺の辛い日々がまた始まった。
来年までにアヘミクレヘンを増産しないと…… な……
作らなきゃ良かったよ!
あ、キュレネにプレゼントしようと以前に考えていた装備はアヘミクレヘン製に決定。
聖女装備としてドワーフが嬉々として制作してくれました。




