女の子と遊びで付き合うとかないっすよー!
「まぁ…… 一晩は貴族用の留置所で反省しなさい」
「ありがとうカリスト様!」
やっぱり、王都での追っかけっこは問題があり大公様へ武器を売った時に貰い受けた"貸し"を、もう使う事になってしまった。
犯罪者になるよりは全然いいけどさ!
ルベルM1886[MA]や大砲を作るのに使った時間や経費が全くの無駄になったよ…… ドワーフ達、町鍛治さんごめん……
キュレネは聖女 (仮)として王都にいるので収監はされなかったが、聖女になる為の行事が全て終わるまで教会で厳粛な軟禁状態になった。
「お兄ちゃん…… お兄ちゃん…… 愛してるわ…… 肉…… 髪の毛だけでも! 」
「肉…… ?」
あの後、キュレネは捕縛された石の檻に入ったままで、悲しそうに俺を見ながら引き摺られて行った。
いやー助かった…… 肉て…… 何よ肉って。
貴族用留置所と言ってもピンキリだけど、大公様の口利きがあった人間を粗末な独房に入れる訳にはいかない。
質がいいベッドが置かれた四畳半程の部屋に入れられている。
水差しや、ヒョイと摘めるお菓子もある。
夏の王族誕生日があったから恩赦があり他の貴族も留置所にいないからシーンと静かだ。
ゴロンとベッドに横になり小さな窓から空を見るが…… 生憎の曇りで星も見えない。
「ヒマだ…… 話し相手が欲しいわ…… 」
やる事もないので俺は早々に眠りにつく事にした。
「ほいほいどうした蝶野くん」
「神様、よく呼んでくれるけどいいの? 神様でしょ? 」
いつもの神様の場所にいた。
今日は杉テーブルにスイカと麦茶が置かれている。塩まで用意されているな…… 神様はホントに緩くて最高だ。
「さて、涼をとろうかの。こちらに」
「はい、神様いただきます」
シャクシャクと冷たくてスイカが美味しい。
あ、塩借りますね。
暫くシャクシャクと2人でスイカを食べて一息を入れる。
「しかし蝶野くん、なぜに女の子と関係を結ばないんじゃ? ワシはハーレムの禁止をしとらんぞ? 」
「いきなり何の話ですか!? 」
まさかの神様からの下ネタに眩暈がする。
「なにか…… 理由でもあるのかい? 蝶野くんがいる星は重婚は罪じゃないぞ? 合法じゃよ?」
「理由…… 」
「なるほど…… 」
いや心の声を勝手に聞かないで下さいね!?
「まぁ分かったなら、理由はそうです」
「いや、ちゃんと蝶野くんの口から聞きたいのぅ…… 」
まぁ話しますけど……どうせ見られてたんだろうし。
「俺にはホラ、ちゃんと妻がいますから…… 」
「地球の…… じゃな? 」
俺は頷き、自分の過去を思い出す。
俺は子供の頃は決して裕福じゃない生活を送っていた。
戦後の日本だから……悲しみも多かった……
そんな中、いとこのおじさんは色々と助けてくれた。
おじさんには気立てのいい娘がいた。
この娘は本当にいい子で俺に勉強を教えて
手を引いて近場に残っている図書館なんかにも連れて行ってくれた。
妹は…… なぜか嫌っていてついてこなかったけど。
ある日、俺が超能力に目覚めた。
戦後なので色々な人間がいるし、本にも特殊な人間は人体実験を受けると呼んだからずっと隠して怯えていた。
そんな俺に気づいた、いとこの娘…… 後の嫁さんが心配をしてくれた。
俺は嫁さんになら裏切られてもいいやと超能力を見せた…… 嫁さんは…… 一緒に秘密にしようと言ってくれた。全く怖がらず、普通にしてくれた。
それからは常に嫁さんと一緒にいた。
学校を卒業して、大きい仕事をしたら超能力がバレると地味な裏方の仕事を選んだ俺についてきてくれた。
もちろん、構内仕事は大好きでやり甲斐がある仕事だったけどね……
それから、親戚だからと反対されて、それでも結婚して子供が出来て…… 喧嘩もしたけど俺の秘密があるからか連帯感が常にあって仲直りも早かった。
歳をとっても大好きな嫁さんだったよ。
俺に癌が見つかった時に
「超能力でなんとかならないの?」
って布団に丸まって泣いてくれたよ。
俺は笑ったよ。こんなに嫁さんに思われた人生だった救われた超能力があってよかったと思った。
体の言う事が効かなくなって、病院のベッドで寝ていても嫁さんは微笑んでくれた。
さて終わる時が来るなって日に
「あなたに会えて本当に良かった…… 」って泣いてやんの。
嫁さんは俺と同じで、ういろう好きだから超能力で孫がお見舞いにくれたういろうを引き寄せて食べさせてあげようとして俺は死んだ。
半分こが丁度いいらしい。
全部食べたいくせになクスクス。
「蝶野くん、キミもいい顔で笑えるんだのぅ…… 」
俺は気付かずに笑顔になっていた。
死に送り出す人、送られる人
死んだ人間の気持ちは分からないとは思っていたが、なんだ幸せじゃねぇか……
「もう…… 会えないだろうけど…… アイツが俺の嫁さんなんだ。 せめてアイツが地球で死ぬ日までは違う女なんで抱けねぇよ」
「うむぅ…… そうさのぅ…… 実はのう……もう…… 」
あぁ…… そうか…… そうだよな……
俺が死んで何年経っているんだ?
嫁さんも80歳をこえてるだろう……
そうか……俺は涙を拭うのも忘れて最愛の人の死後の幸せを祈った。
「蝶野くん…… すまんのぅ」
「いや…… むしろ良かった。それと一つ知りたいんだけど………… 」
目がさめるとまだ王都の留置所だった。
「おはようシノ…… どうしたの? 泣いていたの? 」
カリスト様が驚く。
「いや欠伸ですぅーっ」
恥ずかしいですやん!
留置期間の一晩が終わったので、迎えにきてくれたカリスト様に続き外にでる。
まだ夜空が開けきっておらず空には疎らに星がある。夜の内に雲は晴れたみたいだね。
───神様…… 地球はこの星からどの方角にあるか教えて下さい……
夢の最後に神様に聞いた質問だ。
「夏空の丁度…… 三角形に並んだ星の真ん中の方角に…… あれか」
俺は地球に向けて合掌。
最後まで俺を看取ってくれてありがとう。
遠い地球に届くように何度も心の中で祈りを捧げた。




