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旅行の前はワクワク派? ドキドキ派?



 エルフ達の住居は仕事場の近くにして欲しいという事で製菓工場の隣に共同住宅(アパート)を建てた。


 今までの暮らしが近所と密接な環境だったのでアパートはエルフ達に大ハマり。今は町のアパート住まいを楽しんでいる。



 電気、上下水道、扇風機に感動していたが仕事が始まり製菓工場が稼働し始めると心と体が休まる場所としてアパートは生活の中心として日常になった。

 しかし、仕事をしたいから仕事場の近くに住むって考え方が凄い。


 休みの日に人員が足りないからと呼ばれて嬉しそうに働きに出るエルフを見て戦慄さえ覚える。

 

 …… 稼働した製菓工場のお菓子第一弾はカリスト印のカヌレを用意した。


 カリスト様の似顔絵とロゴが入った焼印(やきいん)をドワーフに作らせ、木箱に押し焼きそこにカヌレを詰め合わせた物を生産している。


 しかしドワーフの焼印は見事な精巧(せいこう)さで、なぜこれが作れるのにお菓子が作れないのか不思議だ。


 …… カヌレは王都で売れに売れている。

 俺が旅に出るまでに、もっとお菓子のラインナップをエルフ秘伝レシピ集として残して行くべきだろう。



 カリスト様の元にも他の貴族からお菓子の催促(さいそく)やお茶会のお誘いの手紙があったようで、俺に感謝と共に本気で婚約しないかとの手紙がきた。


 ノーですよ! 冒険するのに所帯(しょたい)もってどーすんの?



 ─────さて、仕事をしていたら本格的な夏になっていた。


 王族は夏に誕生日を行う。

 その為に地球で言う八月には王族は必ず王都に居なければならない。


 しかし大公様と王女様はまだ町にいる。

 帰ってくれません。


 水冷式の扇風機を作ったのがマズかった。


 これ、異世界のこの国は日本みたいに湿度が高くないから、これだけで凄く涼しいんだよね……


 夏になって気温がグンと上がってからは、大公様は大抵、上半身裸で水冷式扇風機に陣取りスイーツを食べている。

 輸送すると腐るので、この町限定で販売しているエルフ製菓のケーキを食べ紅茶を飲んでいるけども…… ちょいカロリー摂りすぎ。


 筋肉も元々あるけど、その上に肉付きも良くなりプロレスラーみたいな体形になりだした。いいのか?え?いいのか?


 長い間この町にいて大公様は散々と家に呼び寄せて俺に色んな催促(さいそく)をするので、顔馴染(かおなじ)みになる兵士もいるが問題は……


 「お呼びになりましたか? プリンセス・リリア」

 「うん、シノ一緒にケーキ食べましょう! 」

 王女と名前で呼び合える位に親密になってしまった。


 この王国を肇国(つくった)人であるフィル様は優秀な魔法使いさんだったらしく、その子孫である王族も魔法に秀でた能力が必要だという考えをもっている。


 魔力第一主義の人間(リリア様)からしたら俺は魔法の先生を蹴散らした日から憧れの存在になったようなんだよ。


 「ケーキを食べたら魔法のレッスンをして下さい…… マイムマイム訓練を…… お願い♡」

 と王女様は顔を赤く染める。


 これはキュレネ()とよくした訓練だ。たまに催促されてする時もあるけど…… なんかマイムマイム訓練って大丈夫なのか?とこの頃は不安になってきた。


 俺の魔力を手を(つな)いだリリア様に送りリリア様を通り抜けて俺に戻る事をくり返すと、うっとりと俺を見るようになった。


 …… これは…… もしかしたら、俺の大量の魔力を他人に循環させたら相手の体の中、細胞の中に少しずつ俺の魔力が備蓄(びちく)して、相手に好意を持たれるようになるんじゃ……


 それなら小さな時から続けていたキュレネが俺を好きになったのも分かる……


 いや違う違うと首を振り、思い上がった思考を雲散鳥没(けしとば)して今日も王女様(リリア様)とマイムマイム訓練をした。


 王女様(リリア様)の潤んだ目や俺の手を離さないように(つか)(から)ませてくる指先(ゆびさき)に、どうしたものか…… とシノは頭の中で困惑した。


 なぜなら家に帰ると、指先に残る王女様(リリア様)の魔力残渣を感じ取ることが出来る嫉妬の鬼キュレネがいるからだ。


 「今日も女の残り香(魔力)があるわね…… お兄ちゃん?」

 スッと手を出すキュレネに、諦めて手を差し出すと指を絡めて体を擦り()せてくる。

 もうキュレネはマイムマイム訓練では満足しないのだ……


 例えるならチークダンス訓練になっている。


 領主館の和式の広間で2人でクルクルと回る。


 本当にどうしたものかなぁ……

 キュレネの魔力量はチークダンス訓練でさらに凄くなってる。

 錬金術を覚える前の俺に近いかもしれない…… 神の加護持ちに限りなく近い存在とも言える。

 「あはははははは!お兄ちゃんの魔力は私のものよ!」

 

 挑発するように胸元を広げた妹は顔や胸元を赤くして、最後は俺に抱きつきピクッピクッと恍惚しながら痙攣する。

 枝垂(しだ)れかかるその柔らかさと、耳にかかる吐息、そして愛を紡ぐ妹からの言葉……


 これは、本当にいけない。


 兄妹のこういう関係はよくない。



 ────さて冒険までの用意が本当に必要だ。


 行く場所はもう決めてある。

 脳内にある[世界地図(ワールドマップ)]で()()な行く場所を考えていた。


 地球では旅行前にパンフレットやネットを調べまくるタイプだったのでこれは結構楽しんでしている。



 「移動して金を稼ぎ直すのはしんどい…… 貨幣価値が同じで、この国と交流がある場所、どうせなら異文化で過ごしたいし…… 」


 工場が気になるから、遠くに行きたいがキュレネに隠れて帰る事もしたいがこれは欲張りだな。


 この希望に叶うのはこの国から少し離れた獣人の国

である野獣国(ビースティア)だ!

 自国に野獣(ビースト)(もじ)るのはどうかと思うが…… 人間・エルフ・ドワーフに会ったんだから、せっかくの異世界なんだし獣人にも会いたい。


 野獣国(ビースティア)に行き、そこで強い魔物でも退治できたら神様との約束も一つづつ果たせるだろう。


 このままならズルズルと妹と結婚してしまいそうで怖い。血縁関係がないから父さん(オーディオ父さん)とか推してきそうだし。


 とにかく逃げようとまた夜な夜な冒険へと思いを寄せるシノだった。

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