よっしゃぁぁぁぁぁ! 行きよったぁぁぁぁ!
やっとオスカー大公閣下と王女様が帰る日が来た!やった!
しかも、滞在中に発注された以上の蒸気バスや蒸気トラック、蒸気自動車それに新作の蒸気バイクにカリスト印の菓子を大量に御購入して頂けた。
「オスカー大公閣下…… 武器はどうしましょうか? 」
「シノ…… 残念ながら今はこれ以上の現金がない…… 王族としてお前に借りるという事でいいだろうか? 」
これは凄い事で"王族" "借り"という部分に価値がある。
「書状に残して頂けたら喜んで!武器・兵器の金銭はオマケにさせて頂きますよ?」
実質、武器はタダであげる事になるが、この国の最高権力者の一角からの弱みを一つ得た事に価値がある。
絶対君主制をとるこの国で得られる意味は金銭では及ばない価値があるだろう。
官僚主導の日本では考えられないだろうけども、国に対して無理がかなり通る貸しにになる。
二チャリと笑う俺にオスカー大公閣下は呆れる。
「オマエは本当に11歳か? 」
「はい野を駆けて遊ぶのが好きな年頃ですよ? 」
フンッと笑うとオスカー大公閣下は蒸気バイクに乗る。
ガンホルダーがついた大型バイクに筋肉プロレスラー…… 似合い過ぎて笑ってしまう。
そこに王女様が目を腫らして話しかけてきた。泣いたのかな……
「シノ…… またマイムマイム訓練してね…… また必ず会いましょう…… シノ…… 好 」
「いけませんよ王女様…… シノーン様ではこれまでにて、」
王女様は途中で挨拶を止められると、早々に侍女に促されながらキュレネが乗る蒸気リムジンに乗り込んだ。
そう!キュレネが乗る蒸気リムジンにだ!
キュレネは聖女認定を受ける為に国王と謁見を受けることになったのだ。
めっちゃ泣いてるな…… キュレネったら大丈夫かな?お兄ちゃん…… 心配になってきたよ。
キュレネが暫く居ないので、これで冒険に出る為の様々な用意ができる。
キュレネはこれから国王謁見の前に王都滞在して王族の誕生日が終了するのを待たされ、そこから王国教会本部でステータスのチェックを受ける。
ステータスが歴史上の聖女と同程度なら…… そこからやっと国王謁見のスケジュールが組まれるのだ…… 長い!長すぎる!
しかも国王と謁見が終わっても帰れない。
その後、教会での神聖な儀式を受け、王都でのパレードがあるのだけど…… ホントに長い。
「今年中には終わると思いますが、年を跨ぐ可能性もございます」
聖女認定の話を伝えに来たオスカー大公閣下の臣下セバスチャンさんのからの説明の言葉が終わると…… キュレネは絶望と懊悩からシクシクと泣き出した。
父さん聖女審査の事を今は喜ばないで! キュレネの精神が壊れてしまうやろー!
それからはまるで、屠所の羊のようにキュレネは毎日を俺の部屋で過ごしてこの日を迎えた。
…… 今朝は危なかった。
息苦しいしくて目をパシパシさせて目覚める。
キュレネが俺にキスをしていた。
口同士のガチのヤツだ。舌を入れるガチの。
「キュレネ…… 何してんの? 」
「さぁ? 」
そう言ってキュレネはまだ薄暗い暁光を受けて、ペロリと自分の唇を舐めてから笑った。
ほんとにどうしたのキュレネ?
キュレネはそれから淡々と王都への用意をはじめて
「早く帰ってくるから…… 」
寂しそうに家を出て行った。
王都への車が発進するといきなり町に凪いだ海のような淋しさがおとずれる。
「さてと…… 仕事仕事 」
俺は旅に出る用意を始める為の残務仕事を始めた。
☆★
「聖女キュレネ…… そんなに町を離れるのが淋しいですか? 」
聖女とされるキュレネと一緒の車にて王都に向かう。
懸想なシノの妹なので、シノの話を聞けると思いましたが……
「王女様…… 町を離れるのが嫌なのではありません…… 兄と離れたくないのです」
なるほどその涙は家族愛からのものでしたか……さすがに懐郷病にはまだ早いと思いますが……
でもあのシノと別れたくないのは分かる気がします。
彼の方が兄であるなら私も同じだったかもしれません。
「キスだけじゃ足りなかった…… 肉片…… 髪の毛一本いや爪の先だけでも持ってくれば良かった…… 」
「え!? 」
今、聖女キュレネは何を言いましたか?
に…… 肉片……
王女は言い知れぬ恐怖の中キュレネを見つめていた。




