エルフ村へ再び!
カリスト様の社交界サポートとして、お菓子の製造ライン作成を開始する為に調理人としてエルフの勧誘に向かう。
エルフの村で食べたオーガニックなパンが美味しかったのもあるが、うちの町では工業が盛んで他分野の業種を興して量産体制を築くには人員が足りないのだ。
「居住する町人の女性も今はゴム加工とかの仕事をしてもらってるしねぇ…… 」
お菓子を数個とか作るだけなら俺にも出来るんだけどね……
試しにドワーフにも一度クッキーを焼かせてみたが見事に厨芥になった。
一番に酷かったのがアネゴで全ての炭水化物が炭になってしまった。
涙目で「違うの…… 違うの…… 」と言うアネゴの姿はまるで初めて料理を手伝って失敗した子供のようでホッコリする。
おっぱいは大きいけど。俺より年上だけど。
ドワーフは何か呪いがかかってるのか?
機業の布や衣服は器用に作るんだけど……
「こりゃあムリじゃ…… 」
「酒に合う甘いものは好きなんじゃが…… 」
「違うの…… シノ…… 違うの…… 」
工場の食堂に失敗したお菓子を並べて落胆しているとシートさんが呟いた。
「こりゃあエルフでも連れて来んと事業にならんな」
「え? エルフとドワーフって仲が悪いんじゃないの? 」
地球の小説でのイメージではそうだけど……
「ん? いや全く? それは何処の国の迷信じゃ?ワシらの鉄鋼の仕事を邪魔するなら嫌いになるかもしれんが…… エルフは食い物や物販が生業じゃワシらと仕事内容は全くかぶらん」
そうかコイツらは仕事中毒だもんな。
「じゃあ…… エルフを雇えるか交渉してくるわ」
…… となったわけだ。ちなみに、工場の食堂は町に住む人族のじいちゃんとおばあちゃんが回してくれている。
かなりウマイので満足。でも老齢なので製菓工場で働かすには酷だからね、今回の人員確保からは外した。
とりあえず交渉の先行として俺とキュレネと水の精霊inスライムを連れて行く……
水精スラ (水の精霊inスライム)はいつも領主館にいる。
理由は明快で魔物の形をしたものが町にいたら問題になるからだ。
しかもキャンサースライムの蹂躙被害の日から何年も経っていない。
領主館の建物は俺の趣味で、偽圓徳院と石庭を模して造られている。
水精スラは東福寺もどきの石庭にいつも鎮座しておられる。
生意気な…… ちょっといい感じなんだよ。
父さんは嫌がると思ったが精霊であると伝えると話し相手にして楽しんでいるみたい。
ただし、水精スラはまだ話せないので……
「シノがね…… 仕事を増やすんだよ…… 」
『プルンプルン!』
「本当にね…… 税収は上がるんだけど他の貴族との軋轢が凄くて…… 」
『プルン…… 』
こんな感じで俺の陰口を延々と話している。
今、俺とキュレネと水精スラに身体強化をガッチリかけて瞬間移動を行っている。
エルフの村までの距離も日々、強化される俺の超能力で近くに感じるようになった。
…… 瞬間移動を使う時にF子F2雄大先生のアニメ、エスパーM美のオープニングを脳内で口ずさんでしまうのはテレポーテーションあるあるだろうな。
孫と一緒に観たもんだよ。孫元気かなぁ……
そんなしょうもない事を考えている間にエルフの村に辿り着いた。
予想はしていたが…… トロスの町のようにキュレネを讃えるキャッチコピーが壁に書いてあった。
それはもう、福建土楼のような巨大な円柱の村の壁にデカデカと。
[聖女キュレネ様に大精霊様が厚誼を賜った地エルフ村へようこそ!]
という文字を見た途端にキュレネは驚き過ぎて震えている。よしよし。
「お気の毒様…… ちなみにトロスの町にも似たようなのあるからね…… 」
「えっ!? 」
地上に降りて絶句するキュレネ…… まぁ、さっさと村に入るとしようか。
あら? ちょっとこの村、以前より寂れていない?なんか元気無いし…… あれー?
エルフの村のこの閑散具合は何だ?前に来た時は大精霊の騒動があったから分かるが……
村人にも元気がないし……
村長のパン屋へ行くと以前は並び客もいたのに今は人がほとんどいない。
「すみません…… 」
ポツンと店番をしているエルフの村長に声をかけると空元気と分かりやすい笑顔を見せる…… 窶れたな村長……
「ああ…… あなたはキュレネ様の! お久しぶりです」
「すみません…… 村の様子がおかしいんですが…… また大精霊が何かやらかしましたか? 」
ハハハハハと村長が乾いた笑いをする。
エルフ村長の話によると、このエルフ村は元々からして人里から離れていたが柔らかいパンや特定の農作物が近場で買えるのがここしかなかった。
しかし、蒸気トラックや蒸気車が増えて長距離輸送が格段に楽になり流通が王都と直通になってしまった……
そうなると辺鄙な田舎に寄らなくても王都に行けば全てを済ませる事が出来るようになってしまいエルフ村は困窮をし始めた。
地球で言う所の高速道路と田舎の過疎化問題と同じ事が起こりだしている…… ってか俺のせいじゃん!
「お兄ちゃん…… なんか凄い歓迎を受けて申し訳ないんだけど…… 」
キュレネがショックから立ち直って合流してきた。
どうやらエルフに手厚く歓迎されたようだなウフフフフ……
キュレネに村長から聞いた過疎化問題を話すと呆気らかんと提案した。
「全員、ウチの町で暮らせばいいじゃない? 」
こういう右顧左眄な感覚をもたない即決断力は凄いと思う。
エルフ村長はキュレネをポケーっと見ているけど、ここは抑え時だな。
「えっと、エルフの村長を辞退して頂き、俺の父さんの町に来てくれるなら村のエルフ全員を迎え入れれると思います…… が、いかがですか?衣食住も用意します」
エルフ村は推知の計算で250人前後が生活しているだろう。
この人数なら、ウチの町の壁を魔法で広げ俺が家を建てたら数日で整うな……
「えっと、聖女様の町の住人に? 」
「はい」
やっぱりダメだろうなぁ…… 歴史を重んじそうだもんなぁエルフって……
「やったぁぁ! 商売が続けれるぅー! 」
村長はそれは満面の笑顔で叫んだ。
ああ…… ドワーフといい、エルフといい、この星の亜人さん達はみんな仕事中毒なんだなぁ……嫌な予感に頭が痛み出すシノだった。
移住の話は村長により広められた。
聖女様と水の精霊 (水精スラ)がいるならと、村人全員が疲弊する暮らしに疲れていたのもあり満場一致で可決。
「あ! あと住居と仕事である製菓工場の建設とかは用意しますからねー! 」
俺のその言葉を聞いた途端に歓声があがる。
「「「「うぉー! 仕事ができる! 」」」」
あぁぁ…… あれ?つまり俺の仕事も増えるのか……
今から始まる過労を思うと胃が痛い。胃に回復魔法をかける。
はぁ…… 暖かい…… ん? いつもと回復魔法の質が違う?
振り向くとキュレネが優しく回復魔法を俺の魔法の上から重ねがけしている。
「お兄ちゃんがどんなになっても…… 私は大好きだよ…… 一生、あなたが…… 」
重いなぁ…… 思いが重いよキュレネさん……
☆★
エルフと村人達は俺たち兄妹が町に帰ってドワーフに蒸気バスを手配、ローテーションで行き来させて移住作業を開始させるようになった。
エルフの村人が来るまでに大工事をしないといけないが、ここでやる事がもう一つ残っている……
<おお! いらっしゃいシノさんにキュレネさん!>
そう…… ヘタレで寂しがり屋で暇な大精霊の事だ。
「あっと…… 単刀直入に言うとエルフ村の人達が移住で居なくなります。もう加護の必要は無くなりますが、ここには滅多に人が来なくなります…… 以上! 」
<以上って…… 私はどうすればいいんですか…… 暇で消滅しまいますよ…… だいたいシノさん……
あなたに渡した私の分身もシノさんの父親の愚痴しか話が来ないし…… 何でオッサンの愚痴を精霊が聞かないといけないんですか? >
うぉ…… またストレスを溜めているな。
人間として生きていたらストレス発散が下手で酒で失敗するタイプだな……
<私は…… どうすれば…… >
悲しむ大精霊を見てキュレネが一歩前に出る。
「ウチの町で暮らせばいいじゃない? 」
キュレネさん精霊にそれを言いますか?
<え? いいんですか? >
「え? 」
<え? >
いいのかよ!?軽いな大精霊!
早速、行きたいと水精スラに大精霊は小さくなり乗り込んだ。
あぁスライムに大精霊も入れるのね……すごいね精霊って。
こうして俺の町はエルフとドワーフと人間と水の大精霊が住むわけの分からない町へと変貌していく事になる……
「仕事が増えたら旅に出る気も起きないよね? お兄ちゃん…… 」
キュレネの呟きに全力で知らないフリをしながら俺とキュレネは町に帰った。
大精霊は領主館の日本庭園の池で父さんの愚痴を聞く事になった。よかったね! 父さん! 独り言じゃなくなるよ!




