大公かえりまーす!
工場の新商品である蒸気バイクを製作している所にオスカー大公閣下が訪ねて来て開口一番に愚痴りだした。
「さすがに帰らないとならん…… 」
と項垂れてブツブツと言っているが此方には嬉しい話なだけにウッキウキになる。
わざわざ工場に愚痴を言いにきますかね?
創作活動中にテンション下げた人が来ると本当にイラッときますなぁー! ハハハハハ!でも帰るならよし!
つい最近まで大公様は無聊を言うてたやないっすかー? 何で夏まで居るんすかー? と思うが言わない俺は偉い。
「どうされたんですか? なぜ王都にお帰りに?」
「おう…… 手紙が来てな…… 」
オスカー大公閣下は普通に俺に手紙を渡してくる。
この手紙…… かなり良い紙を使っているな……
「読んでよろしいので? 」
オスカー大公閣下が頷くのを見て手紙を開く。
大分と書いた人間が怒っていたのか乱文だな……
内容は長文になっているが要約するとこうだ。
[王族の夏の誕生日パーティーの日が近づいてきておる!
早く娘を連れてオマエも帰らんか!
ワシの弟である大公のオマエが王都での不在期間が長いのは、かーなーり問題があるぞ!
早よ帰れバカ!
国王より愛を込めて]
「王様からの手紙じゃないっすかー!? 」
ついツッコミが声に出てしまう。カチャッとお付きの兵士が剣に手を当てるけど許して下さい。
「よい…… この男に不敬罪なんぞ通用せん。この国に繋いでいるだけで僥倖なんだからな。…… なぁ? シノ? ドワーフに聞いたが本当に旅に出るのか? 」
ドワァァァフゥゥゥ…… !
蒸気バイクを一緒に組んでいたワルフが逃走する!あ!
「ワルフゥゥまたテメーかぁぁぁー! 」
…… ったくよ面白い奴だけど口が軽いなアイツは……
オスカー大公閣下は工場に設置した業務用扇風機の首振りに合わせて左右に動きながら涼をとり俺の言葉を待っている。
本当に電気がない生活に戻れんのか? この筋肉マッチョは?
「いえいえ、この町を離れるかまだまだ分かりかねます」
「おい、貴族風な言葉で濁すなやぁ…… 」
うわー…… 引き止める気ですね……
「そ…… それより蒸気バイクを一台組んでいます試乗されますか? 」
濁しますよ逃げるまでは…… !
それからオスカー大公閣下はケッテンクラート程の大きさになってしまった試験オートバイクで散々と楽しんだ。
これは今までの蒸気機関シリーズで一番気に入ったみたいだ。
今組んでいる火の魔石と水の魔石をふんだんに使った蒸気バイク七号…… これは某アメリカの大型バイクに限りなく近い形にまでなっている。
「美しい…… シノ、これはいつ出来上がる?」
「さて、作業に専念できれば早くには?」
オスカー大公閣下はこれを王都に帰る日までには必ず仕上げて俺にくれと言い残し町の屋敷に帰った。
筋肉マッチョに大型バイクとか似合いすぎだろ?ファンタジーだぞここは。
まぁ面白いからバイクにガンホルダーも付けておいてやろう。
頭の中で地球時間西暦1991年の名作SF映画の曲が再生される。アンドロイドが未来から来るアレだ。
しかし…… 大公様チョロいっす!
「おいドワーフ…… そこに隠れているんだろ? 」
「…… はい、大公閣下ここにいます。」
「これからも引き続きシノーンの動向を知らせろ…… いいな? 」
ワルフに十数枚の金貨を渡す…… これは日本円で2000万円近い金額だ。
ワルフの頭の中はもう酒池肉林でいっぱいになりメッチャう頷いた。
馬鹿筋肉マン…… とシノはオスカー大公閣下を馬鹿にしているが、彼は貴族社会を生きてきた海千山千だった。
「蒸気バイクとシノの情報があれば王都に引きこめるか…… ?しかし王女がシノに思いを寄せ出した事がマズイな…… どうしたもんか…… 」
大公様はこれからの段取りを考えながら王都の熱い夏に電気製品…… 特に扇風機が無い事を憂鬱に思っていた。




