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カリストが嫌われる理由!




 「シノ…… 話があります」

 アーネとお茶を飲みながら、来年以降の工場の運営について話し合いをしているとカリスト様がた訪ねてきた。


 「カリスト…… 」

 「やはり…… アーネリでしたか…… 」


 え? 知り合い?と思ったが、そういえばアーネは元貴族だったな。


 オスカー大公閣下(オスカーさま)や王女様は末端の貴族の顔は覚えていないだろう…… アーネの事に気付いたのはカリスト様がお初だな。


 「それよりもシノ…… なぜ最近は手紙とお菓子を送ってくれないのですか? お茶会が開けないじゃないですか…… 」

 「え? 一応、俺も貴族になったしいいかなぁって…… 」

 「よくありません! 」

 カリスト様が町に来ていたのは知っている。


 オスカー大公閣下(オスカーさま)と王女様の居住を警備する為に見回っているのを見たしね。

 決して(のぞ)きじゃないよ!

 1人になりたい日なんかは超能力で空に浮かんでボケーっとしていたりするから人の動きが目に入るんだ。


 まぁ、地上からキュレネ()に見られていたりするんですけどね。


 「そいつぁ…… すんませんでした」

 俺の心ない謝罪にアーネがあははははと、愛想笑(あいそわら)いをする。


 「しかしアーネリはなぜ? 王都でも貴女(あなた)行方不明(ゆくえふめい)になったので凄い騒動になりましたよ? 貴族の飼育馬の扱いを知る貴族は少ないので」

 少し困ったような顔をするカリスト様にアーネはスッと身を引く。


 「いえ、アーネリさんは亡くなりました。私はアーネです」

 カリスト様の言葉をアーネがこう言って切ると、カリスト様は言葉を飲み込んでため息を一つ吐くと

 「そう…… 」とだけ言った。


 なーんか色々と居辛(いづら)いなぁー…… と思ったので話を変えようそうしよう!


 「いやー! カリスト様は今、警備の仕事をしてるんですねー! 王族の周辺警備をするなんて優秀(ゆうしゅう)なんですねー! 御家族も鼻が高いでしょう? 」


 (つと)めて明るく笑顔にて話を変える。

 ホラ俺って(えら)いでしょ?


 「シノ様…… 知らないんですか? カリストの家に起こった悲劇(ひげき)を…… 」

 はい! ドジを()みましたー! 俺は偉くなーい!…… この2人の少女、過去に傷がありすぎない?


 カリスト様とアーネは少し見つめ合ってカリスト様が(うなず)く。

 「下手な(うわさ)で知るより私がいる今に話した方が正しいお話が出来るでしょう。 」


 それを合図にするようにアーネがカリスト様の話を語り出した…… いや重くなりそうだから要らないんですけど……


 ───────カリスト=セルディックのお話

 セルディック家は元は他の国から亡命(ぼうめい)してきた王族の家系でした。


 温和(おんわ)な父は継承(けいしょう)争いが嫌いで、暇があれば思想や哲学の本ばかり読む人間でした。


 そんな人物だったから色々な考え方を周囲にもらす(あたらしいめ)の考えで、自国では(うと)まれ故郷が嫌になり我が国に来ました。


 我が国は亡命をしてきた王族を款待(かんたい)し特別貴族として領地を与えました。なぜならセルディック家には特殊なスキルがあるからです。


 カリストの父君(ちちぎみ)豊穣(ほうじょう)をもたらす特殊スキルを持っていました。

 その特殊スキルを使い領地を豊かにし王国にも多大な貢献(こうけん)をされていました。


 豊穣の特殊スキルを使う時に畑に出向くため、農民との関わりが多くなります。そこでカリストの父君は農民の女性と恋に落ちます。


 シノ様が苦々(にがにが)しい顔をしているのは分かります。

 普通は貴族と農民は(むす)ばれる事はない。

 しかし、特別貴族としてこの国にいるカリストの父君は周囲の貴族の反対の中、無理を通して結婚をしました。


 第2夫人として結ばれ、体裁(ていさい)(たも)つ事もできたのに()れもせずに、その農民の女性だけを愛したようです。


 「そこで産まれたのが…… 私…… 」

 自分の胸に手を当ててカリスト様がうなずく。前より乳が大きくなってるな……


 あれ? 窓からドワーフ(ども)(のぞ)()をしている。

 いやそんな申し訳なさそうな顔をすんなやってか働けや。


 苦笑(くしょう)しながらアーネが話を続けようとする。

 「え? いいの!? 」

 ドワーフを指差してカリスト様を見る。


 「ええ、この国の多くの人が知っている話ですから」

 ふぇぇ…… 悲劇がエンタメ化しとるな…… 良くない文化だなぁ……



 セルディック家の両親や家臣、領地の人間はそれはそれはカリストを可愛がりました。


 「そりゃあ農民と領主の子供だからな。領民にも絶大な人気があっただろうな」

 「はい、ご両親の民を愛する性格もあったのでしょうけども」

 愛すれば愛されるか……


 セルディック家の領地の作物は特殊スキルのおかげもあって豊かに実り、周辺国にもその話が噂されるようになりました。

 そんなある年の収穫祭(しゅうかくさい)の日に悲劇は起こりました。


 セルディック家の収穫祭は領主館の門を開け放ち行われ上下階級の垣根(かきね)がない(にぎ)やかなもの…… として書物にも残っています。


 「私は…… その日に領内の友達と焼き芋を作ろうとしてボヤを起こしてしまったの…… それで領主館の屋根裏(やねうら)(バツ)として入れられました。

 大人が数人いても飲みきれない量の紅茶やパーティーかと(うたが)(ほど)たくさんのお菓子や簡易トイレが用意された屋根裏にね」

 クスッとカリスト様が思い出し笑いをしながら話す。


 「カリストがなぜ屋根裏にいたか始めて知りました。なるほど…… そうだったんですね…… 」

 うん、カリスト様が溺愛(できあい)されていたのがよく分かるエピソードだな。


 「お父様は夕方のパーティーになったら許してくれると約束して、私を閉じ込める事を本当に辛そうにしていました」

 カリスト様の顔が曇る……



 「ここからは逃げ遅れ捕縛(ほばく)した者から聞き出された話になります。」

 アーネの背筋が伸びる。ここから重い話かよ。


 カリスト家からの話では無くなった所で嫌な予感が満ちる。

 ドワーフも静かに聞いている。あれ? 大公様もいるね? ほんとに暇だなアンタ!


 カリスト家の収穫祭では、それは豊かな食事が農民にも振舞(ふるま)われました。カリストの母が元農民というのもあったのかもしれません。


 …… 昼の祭りの時にそれは起こりました。

 一陣(いちじん)の魔力の波が西から南へ通り過ぎると同時に、その波に当てられた人が(ひも)の切れた(あやつ)り人形のように地に倒れて死んでいきました。


 それは、1人残らずの殲滅(せんめつ)でした。


 領主館の庭は集まった人が絨毯(じゅうたん)()()められたように人の死体で埋まりました……


 アーネがカリストの辛そうな顔を見て現場状況を話すのを止める。

 「大丈夫ですか? 」

 「…… 大丈夫。続けて…… 」



 それはカリストの父君の弟…… 隣国の王族の犯行でした。


 セルディックには特別なスキルがある。


 カリストの父君の弟は、カリストの父君の豊穣とは全く違う(けが)れたスキルでした。


 一生に一度だけ、周囲数キロの人間を呪い殺す。自分の血族は対象としない卑怯な特殊スキルをカリストの父君の弟は所持していました。



 「おいおい…… 」

 思わず声が出る。何てチートな……

 「メチャクチャじゃのう……」

 ドワーフが呆れる。 あれ? 父さん(オーディオ父さん)もいるな?

 暇なの? この領地の大人…… それなら俺の仕事を手伝ってよ……


 「うん…… だから私とキルケもこの国に入ったんだ…… 」

 「え? 」

 思わぬ所で俺の出自(ルーツ)をちょびっと知り驚くが話は続く……



 呪いで死んでしまった妻を庭先で泣き叫んで抱きしめていたカリストの父君は、敵からの恰好の(まと)でした。

 西の方角から来た犯人はそこに目掛け弓を射ると泣き声は止んだと……



 失意の人間を矢で殺した…… か……本当に卑怯だな……


 犯人の誤算(ごさん)は西方面…… 特殊スキルの範囲外から収穫祭に招待された隣の領地の貴族と騎士隊が来ていた事でした。

 犯人達は呪いを行使(つかった)ので東南北の方角に逃げる事が出来ず、早馬で西の方角に逃げている所で貴族と騎士に鉢合(はちあ)わせ捕縛されました。



 丁度(ちょうど)その頃、領主館にある人々の死が確かになり御遺体から大量の魔素が(あふ)れました。

 少し離れた場所で犯人を捕縛していた貴族からも目視出来る程に輝いていたといいます。


 …… そこにいたのは…… カリストだけでした。


 「カリスト様は…… セルディックの血族で呪いの対象にならなかった…… 」

 俺の言葉にアーネが(うなず)く。



 カリストは死に絶えた人々の魔素を一気に受けました。

 もちろんカリストに入らず風や土に(かえ)った魔素も多かったでしょう。


 カリストはその、幼い身体に大量の魔素を受け気絶していた所を隣の領地の貴族によって発見されました。


 3日間の気絶の後に目覚めた幼いカリストは、王国でも屈指(くっし)能力者(ステータス)になっていました。

 しかし、そのステータスは自分の両親や領民からのものだ!として貴族間では(けが)れた子として(あつか)われるようになりました。



 「…… 俺は違うぞ? 」

 大公様が口を開くと皆んなもそれに(うなず)く。


 しかし、カリスト様の生きた道はハードだわ。

 「もしかして…… お茶会はその批判をかわすため? 」

 「…… そうです。シノのお菓子を使うと評判が良いんですよ」

 「そうか、それはよかった」

 そう笑うカリスト様の笑顔を直視できなかった。



 俺は、お菓子を作る産業を立ち上げてカリスト様の為に何かしてやりたいなと考える…… カリスト様の顔を菓子の箱に入れるか?


 「それで…… ワシが話に割り入るのもなんじゃが…… 犯人はどうなったんじゃ? 」

 ドワーフ!ナイス質問!聞き辛い事をよく言った!


 「カリストの父君の弟以外は打首(しけい)、弟は自国に帰しました。戦争を避ける為に仕方なかったんです。」

 アーネがカリスト様の顔をうかがいながら話す

 カリスト様は…… 表情がない。


 「だからよ俺は銃やら蒸気トラックと大砲の戦力増強はありがたいんだぞ! シノ何かまた兵器を作れよ」

 ああ…… 大公様は戦バカじゃなかったか

 敵国に残るセルディック家の特殊スキルを考えると何が出るか分からない。

 戦争になったらと考えたら、火力への欲求は当然の行為だったのか……


 「頑張ってるな…… カリスト様…… 」

 「ああ! 良い事を思いつきました! シノは貴族になったんですね? 私をもらってくれません? 私の穢れとかも賢者と噂されるシノと結婚すれば薄れますし! 」


 なんて事を言うんだこの……


 「えっと…… カリスト様の領地も…… 」

 父さん(オーディオ父さん)何聞いてるの!?

 「はい…… シノの物に…… 」

 カリスト様ぁぁぁ……


 ちなみにキュレネ()は天井に張り付いてカリスト様を睨んでいます。


 この国も隣のセルディックの国も、ホントにどーしようもねーな!

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