電化製品!
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今年の春は寒いですね。
雪は溶けて街道は通行出来るようになりましたが王女様とオスカー大公閣下がまだ帰りません。
それどころか新しい王女様用の家を作れと言われています。
シノーンさんが考案した蒸気タービン発電機が増えて電線・電信柱というものをドワーフが町の中に乱立させて…… 電気のある生活が普通になってしまいました。
家もシノーンさんが作ったものは凄く過ごしやすいですね。
スプリングと呼ばれる物は今までの綿を入れた椅子やベッドの概念から外れます。
もちろん良い意味でです。素晴らしいです。
書類を書いても簡単には腰が痛くなりません。
王都では無かった熟睡を得れました。
こんなの離れられる訳がないと御二人はおっしゃる。
これは私も同感で、フィラメントによる電気の明かりを知ると、また王都に帰り夜にローソクの明かりで過ごす事を考えるだけで憂鬱になります。
シノーンさんが上下水を土魔法で整備したおかげで各家庭には風呂があり汚穢が感じられません。
糞尿はキチンと処理されるので料理は料理の、ワインにはワインの匂いが楽しめます。
長々書きましたが、私もオスカー大公閣下が居る限りは、共にここに留まる事をお許し下さい。
王宮侍従長様
大公様付き
セバスチャン
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☆★
…… 早く帰れよ大公と王女テなかなか帰りやがらねぇ……
まぁ俺のせいだけどな……
やたら寒い春だから暖房を作ろうと考えたのが始まり。
先日やっとアルミニウムが作れたから鉄と、クロム・コバルトを固めて錬金術を使って合金のカンタルを作った。
ニクロム線より役に立つ素材だ。
本当に錬金術は恐ろしい……何でも作れる。
[知識]で知っている事の再現度がヤバい。
「シノ様これはなんじゃ? 」
工場の端っこでチマチマと作業していたのに求知心ドワーフが駆け寄ってきた。
「ん?電気が使えるようになったから作ったんだよ」
ドワーフ達もキャンサースライムの魔物災害後の再建作業で俺が『広い方がいいよね』という軽い気持ちで工場を大きくしたら、さらにドワーフ人口が増え、商人が増え、人族が下請け工場を作り…… と雇用と規模の面で小規模町工場では無くなった。
俺は初めて顔を見るドワーフに作業を手伝ってと言うとカンタル加工を再開する。
カンタルはニクロム線より融点が高いから本当に色々と使える。
電気コンロや石英にコイルを入れた電気ストーブ等々だ。
「とりあえず図面を描くから出来る限りの物は作ってくれ」
記憶ファイルにある電気製品を図面に上げていく。
電気コンロ・電気ストーブ・電気オーブン
今作れるものを、作る事にする。
もうねモーターやらを作っているドワーフには簡単で、合金や電源ユニットは俺頼みだけども、他の加工作業は自分の経験と勘で仕上げてくれた。
もう図面があれば俺がいなくても大丈夫だろうな。
「これなら来年、旅に出ても大丈夫だな…… 」
「ん? シノ様、何か言いましたか? 」
作業に参加したお調子者ドワーフのワルフが耳聡く聞いてくる。
「あぁ…… 来年、俺は12歳になるから少しこの町を離れようと思ってね。ここだけの話な?」
「─────────────」
「─────────────────っっ!」
「え?」
シーンと静まる工場に焦る……
鉄を煮てる手を止めれないドワーフも耳はこちらに向けている。
「それは困る!! 」
憤怒しながら筋肉マッチョ達が俺を取り囲む!
もうそれは筋肉の壁。ぶ厚い! キレッキレな筋肉の壁!
「シノ様よう…… アネゴとは結婚せんのか? 」
「いや、そういう引き止め方は卑怯だよ!? 」
来年の予定を言わなきゃ良かったよ!
何で俺なんかの去就でこんな事になるんだ?
「ワシらの神がいなくなるのを黙って見過ごせるか! 」
泣きそうな声で屈強な男達が嘆く
「いやめちゃくちゃ信仰対象がヘボいよ! 節義をしっかりしろ! 」
「私は…… いいのよ?シノを愛して生きれるよ 」
アネゴいたの? 小さくて気付かなかったけど。
「うんアネゴはもっと自分を大切にしようね?」
「ちがうのに…… 」
色々な電化製品の完成よりゴタゴタと言い合いをしていた時間の方が長かった。
「…… キュレネちゃんに相談しよう」
「…… おいやめろワルフ」
本当にキュレネに言うのはやめて…… 怖いから。
今日はキュレネいなくて良かった。
グダグダでもさすがドワーフ。
仕事はしっかり完成させる事に成功。
出来上がった暖房家電製品を試験運用をしているとオスカー大公閣下が冷やかしに来た。
寒い諧謔でも弄して適当に追い返そうと思ったが、工場に来たら面白い物があるとリス並みの頭で学んだオスカー大公閣下はすぐに暖房家電製品を見つけて質問責めにされた。
かくして家電製品のぬくぬくストーブで温まるオスカー大公閣下が誕生した。
電気コンロもお気に入りで、自分で食事や飲み物を簡単に温められるので熱い茶を毒味で冷める事が無く飲める喜びに目覚め、王女にもそれを勧めた。
冷めたパンをパリ!シャク!モッチリ〜に出来る電気オーブンと、ゆったりと過ごせる地球人設計のログハウスでオスカー大公閣下ったら臣下のセバスチャンと家に篭って出てこなくなっちゃった!
「家電の調子はどうですか?」
とカスタマーサービスの為に覗きに行くと、スプリングソファーに深く座って、足をオットマンに預けて、明るい電灯の下で寛いで本を読んでいた。
おいおい優雅だな!ファンタジーじゃないな!
しかし本当にオスカー大公閣下と王女様はいつ王都に帰るんだろうか?
来年まではいないよな?
とりあえず、来年は人から隠れて遠くに旅立とうと思うシノだった。




