そりゃあ食べ物は欲しいです!
暖かいパンを頬張るこれは美味しい……
でも何か食べた事がある。モチモチして…… あ、これ米粉パンだわ。
え? 米あるの?…… いや、あるのは当然だわ神様の怠慢で地球に似た環境なんだから米もあるわな。
何千年前から地球に存在していたものが、異世界に無い訳がないね。
「しまったな…… 調べておけばもっと早く食べられたのにな」
「お兄ちゃんこのパン好きなの? 」
「いやこのパンの素材がな…… 」
キュレネの頭をよしよし撫でてパンを買ったオヤジエルフに話を聞こうと振り向くとすっごい暗い顔してるの。
疲れたというか、どうしようか考えて諦めたような…… オスカー大公閣下が来た時の俺となんか被るなぁ……
これは苦労人同士として、話を一応は聞いておかないといけない感じ?
キュレネが俺の服を引っ張り首を横に振る…… なんだキュレネは反対なのか?
と思ったらキュレネは怖い顔をして何かを見つめている。
キュレネの視線を辿るとエルフの若い女性が立話をしていた。
「? あの子達がどうかしたの? 」
「可愛い子を…… また持ち帰るんじゃない…… お兄ちゃん? 」
嫉妬かよ!怖いよ!いやそんなバンバン女の子を連れて帰ってないし!
アーネとアネゴだけだぞ?あと持ち帰るとか失礼だから止めなさい。
「それはないから…… 行くぞ! 」
「むーっ」
「すみませーん!」
「おや! もう一度パンを買いに? 」
パンを素早く大きな草の葉で包むエルフの爺さん。エルフっていうのはこんな商売っ気がある奴らなのか?買わせよう!って目力がある。
「パンを包むのは、まだ早いですわぁ…… 」
「え? 買わないんですか? 」
「いや…… えぇ? 買いますが…… ところで皆さんなんか顔色が悪いですね」
エルフの爺さんが手をピタリとも止めない。
もう包装のベテラン職人みたいに手を動かしながら営業スマイルを暗い顔へ変化させた。
「分かりますか…… はい! エルフのパンです! 三百円いただきます! ありゃぁっしたぁ!! またおねぇっしゃす!! …… それが困った事がありまして…… 」
「あぁ接客はちゃんと最後までやるんだ…… 」
爺さんはここの村長だった。
え? 村長が自ら接客? と思ったらエルフは全員そんな感じらしい。
「精霊魔法だけでは食っていけませんからなぁ…… ワシらはホラ容姿が良いだけで非力ですからふふふ」
世知辛い話の後のちょい自慢に一瞬イラっとする。
「精霊魔法ってあるんですか? 」
「え?お兄ちゃん精霊魔法を知らないの? 」
兄に威厳が無いなぁと思ったけど、俺そんな威厳ねぇわ!
キュレネが言うには精霊魔法はあらゆる自然に宿る精霊という存在に力を借りて使う魔法らしい。
つまりあれだ八百万の神さん的な何かかな?
「そう…… 問題はその精霊の上位にあたる大精霊様の事なんです……あ! いらっしゃいませ!エルフのパンいかがですかぁ! 」
「あぁ接客はちゃんとやるんだ…… 」
村に来た冒険者に接客する村長に少しずつ親しみを感じる。
地球にいた時によく通った魚屋のオッさんに似ている。エルフでもなんでも人の生活はどこも同じだねぇ。
その後、接客を終えた村長が言うには村の北にある森に大精霊の湖がありそこで冒険者が蹉跌して大精霊の怒りを買ったそうだ。
「大精霊様は殺されずに逃げた最後の1人の冒険者が、こちらの村に向かった事を必ず見ているでしょう。この村に攻撃を仕掛けてくるかもしれません。え?このパンの原材料ですか?米ですよ?」
それから村長は接客に戻った。
やはりパンの材料は米だった。本当は異世界用語でアロゥスッという名前なんだけどら分かりにくいから米に脳内で変換。
そして喜ばしい事に村には今年、収穫したの米があるらしい。
大精霊がこの村を滅ぼしたら米が食えないかもしれない。
「キュレネ…… この村で待っていてくれないか? 」
「お兄ちゃんとなら何処へでも……」
もう逆に怖いよ! なんかの咒みたいになってない?
妹がどこに進むのか不安になりながらも、大精霊と会話を試みれないかと考えるシノだった。




