戦いも辞さない!
「あそこかな? 」
「そうみたいねお兄ちゃん」
上空から森を見下ろすと開けた場所に20メートル程の正円の湖が見えた。
他に湖が見当たらないから、ここがエルフさんが言っていた場所で間違いないだろう。
冬の防寒着に魔法で身体強化してもこの辺りは気温が低くて寒い。体の端から冷えていくのが分かる。
この場所だけやけに環境が厳しいのは精霊が怒っているからか?
「寒いな…… 」
「私が…… お兄ちゃんを暖めてあげよう……かな? 」
キュッと抱きつき俺の首元に顔をうめるキュレネ。やたら積極的だな! 12歳になったらちょっとキュレネと離れて生活をしないと兄妹の絆が本当に壊れる。それは…… 俺が困る…… 。
地球の妹は嫌だがキュレネとは大人になり、それぞれが生活して偶に会ったらコーヒーでも飲みながら近況を話すぐらいが理想的なんだがなぁ…
あ! コーヒーがこの星にねぇわ……
「私はお兄ちゃんを離さないからね」
真っ赤な顔でキュレネが真剣に見てくるんだけど、心読んでないよな? スキルに[兄読心術]とかないよな?
どれほどの力があるか分からない大精霊の前に、直接行くのは危ないので少し離れた場所に着陸しようと高度を下げると木の間の茂みなどに隠れている数人のエルフが見える。
空にいるから弓で射られたら拙い、気付かれないように近くに着地してエルフに近づく。
雪がこの辺りはかなり積もっている…… 冷たい
「すみません」
「!? なぜ人族が? 」
村にいた女性エルフが霞むような美人のエルフが驚きを隠せずに俺たちが現れた方へ振り返る。隠密活動中なのにね。
「えへへ…… いえ、エルフの村長さんから話を聞きましてね」
「────お兄ちゃん…… ?」
やべぇ…… キュレネの前でエルフさんが美人すぎて思わず照れてしまった。
キュレネの嫉妬が膨れ魔力が暴れる。
あわぉキュレネの魔力って敵意が向けられるとピリッとするんだなぁ……
しかしキュレネも大分と魔力が上がったな
この感じならオスカー大公閣下と戦っても余裕でコロコロと転がせて勝てるだろうな。
コロコロと美少女に転がされるマッチョを想像したら…… 楽しいな! 絶対やろう!
「この恐ろしい程膨大な魔力量は…… あ…… 貴女は一体…… 」
「…… 巨乳さんが何か私に用? 」
どうどうとキュレネを宥める。馬みたいだな…… いや猪か? あの可愛いキュレネはどこに行ったんだ?
あと近寄って分かったけど、厚着していても分かるぐらい美人エルフさんお胸が大きいです。
「し…… 失礼しました…… 私達はエルフの村から大精霊様の様子を窺う為に待機しています斥候隊です」
ぶるんぶるんエルフとマッチョメンエルフの3人がザッ!とキュレネに向かい雪の中で膝をついて頭を下げる。
「ぶるんぶるんやぁ」
「…… お兄ちぁゃん?」
ごめんちょっとキュレネ…… 泣かないで……
☆★
「本当に大精霊様と御話しをして頂けるんですか?」
「ああ、 キュレネも了承したよ!なぁ! 聖女様! プククスプスーッ」
笑う俺をチラッと見てキュレネが無言で頷く。
子供の頃にトロスで聖女だと神父か仮認定しているから、こういう厳かなモンと対峙するならば半分ハッタリとして使えるのでは…… と考えた次第ですはい。
キュレネの嫉妬の魔力はエルフも恐れる超パワー、魔力と聖女の肩書きで、神様と崇める大精霊と会わせてもらえるようになった。
「ここが大精霊様の湖です」
森の開ける場所に綺麗なコンパスで描いたような正円の湖がそこにあった。どうやら空から見下ろした湖で合っていたみたいだ。
そこに散らばる冒険者の残骸だけは異質だが、湖からは神聖なものを感じる。
この冒険者はエルフの村を経由せず、隠れてこの辺りで狩をしていたらしい。
「大精霊様がお怒りになるまで、私たちエルフは気が緩んでいたのかもしれません」
悔しそうに話す美人エルフさん。
湖の前に立ち、これからどうしようと考えていると、湖がゆっくりと彎屈も柱のように持ち上がる水は大きな男性の形になる。
おお、自分から出てくれた。よかった。
<エルフと人よ…… 私に何用か? 殲滅を望むなら村で待っていなさい>
あーこりゃめんどくさい感じかな?
俺はぶるんぶるんエルフの目が大精霊に釘付けになっているのを確認してキュレネの後ろに隠れる。
「聖女様すごい」作戦だ!
「えっと…… 大精霊と対等に話をするぐらいに追い詰めないといけないんだから…… 全力で魔力を出せばいいのかな? 」
「お兄ちゃん…… 何して」
ドズゥゥゥ─────…… ン…… !
開放された俺の魔力が大地を揺らす。
まるで地震のように揺れる大地に美人エルフさんが転ぶのをチラリと見る。うん、眼福。
ビリビリと円を描きながら衝撃波が飛び木々は揺れはためき周囲の雪は吹き飛んだ。
…… それは遠く離れた王都のカリスト様の近くに置かれた魔力検知器が大きく反応するぐらいの魔力だった。
地震がおさまり、魔力開放の余波が終わると俺はスッとキュレネの横に出る。
「大精霊様! この聖女様がお話をされたがっています! お話をさせてもらえませんか? 」
「はい喜んで! 」
あれ? 大精霊様って涙目じゃない?
ぶるんぶるんエルフさんは気絶してるし……
「お兄ちゃん…… 凄いょぅ…… 」
キュレネ! 聖女様でしょ! 立ちなさい!
あれー?ちょっとやり過ぎたか…… な?
期待していた大精霊とのバトルはなかった。




