泣いてないもん……!
町の整備がかなり遅れている。なぜか!ドワーフと俺が大砲に現を抜かしたせいだ!
これは俺のせいなのか?
いや俺のせいじゃない!でも、この世界に産まれて世話になった人々がいるんだ!やってやろうじゃん!
「父さん、どうか俺が建物や壁を作るあいだ、俺を見に来ないでね!」
そう!鶴の恩返し作成だ!
────え?変なテンションで嫌?ごめんなさい
…… とりあえず、普通に町の復興を手伝ってはみたんだよ。
復興作業…… これは子供の身体では無理だ。限度がある。
身体強化してもやっぱり10歳の子供では届く手の範囲がある。
ドワーフはかなり役に立つんだけど、彼等彼女らは新しい事に目移りしすぎて復興作業に参加しない者が出てきた。
土魔法は整地には役に立つが、他の異世界転生の人達みたいに俺は土魔法だけで綺麗な建物は建てられない。将来的には分からないが……
無骨な土魔法の家は『長く暮らす』という意味ではイマイチだ。早く建てれても町に居着いてくれなくなるかもしれない。
せっかくこの町に住んでいるんだから長く生活してほしい。
人族はたくさんいるけど…… 魔法があっても人族は非力で時間がかかる。
なぜそんなに急ぐかというと、冬が迫ってきたからだ。
今の町の産業は工業と魔物を倒した時の素材や肉だ。農耕、畜産はかなり少ない規模しかない。
つまり物の売り買いである貿易で成り立っている。
工業ってのは安定した住居での生活と、たらふくのメシが労働者には必要だ…… と俺は思っている。
モノ作って、家に帰って家族と暖かいメシをたらふく食べて笑って明日の為に酒を飲んで寝る。
稼ぎの中からちょい貯金をする。
そんな日常が必要だ。そんな日常じゃないと雪の降る冬に凍えてしまう。
住処が無いと寒さで死ぬ……
住処が無いと工業を安定して再開できない……
こりゃーしゃーねーわ!
そう思って踏ん切り『俺の能力をフルに使い町を作ってしまおう作戦』に局面は移行した。
自然属性適正魔法が全属性使えるのは…… もうバレたけど超能力は出来るだけ隠しておきたい。アーネの報告によると、なんか大公様の息がかかった商人がこの町なは紛れ込んでるみたいなんだよね……
ちなみに、大公様へご挨拶の手紙にも、キャンサースライムの件で、俺が飛び立ったのは風魔法だ!とゴリ押しする内容を書いた。
12歳になったら世界を冒険したいのに、大公様に飼われてたまるかっての!
さて鶴の恩返し作戦だ!
夕方、町の人々を工場のライン区画に集める。
キャンサースライムの被害で、今の街の住人はかなり少なくなっているから大丈夫。入る入る!
「ちょっと狭いですけど皆さん集まって下さいね!これから黒魔法でこの建物を目張りして外が見えないようにします!少し怖いかもしれませんが俺を信じてみて下さい!ご飯と飲み物は自由に!」
とにかくガーッと言う事を言って逃げるように外に出た。
これ以上の説明なんて無理だしな……
建物のまわりを黒魔法で覆う。まるで真っ黒な濃霧で建物の影が朧げになる。これは…… 外から見たら呪いがかかった建物みたいだね。
「さて始めますか…… 」
ゾリゲの領主館を崩して用意した岩や木の建材や、事前にドワーフと用意していた素材は町の外にあるので念動力で宙に浮かしながら町中に運ぶ。
そのまま、素材を超能力で浮かして風魔法でカッティング!
振られたサイコロが転がるように空中でクルクルと回りながら素材が形を変えていく。
ある程度の素材や建材が出来たら家を作っていく。
時間が掛からず簡素だけど暮らしやすいとなると……
「昭和初期の建物…… 民家…… 」
と[記憶ファイル]を探りながら建物を建てていく。
町の空高くに家屋用の建材が飛び交い、まるで巻き戻しのように昭和初期のモダンな建物が仕上がる。
「ガラスはまたドワーフに作らせるとして…… 窓は今は木で塞げるようにしておこう。冬に耐えれるようにしないとな」
昭和初期の建物は和洋が混ざったものが多く洒落たものを建てられたと自負する。
建物を作るのに魔法と超能力があれば形をつくれる。[記憶]があれば図面を頭の中で用意出来る。
地下の下水なんかも土魔法で穴を開けて通せば…… うん、なんとかなりそう。発火で壁を焼いとこう。
段々と作るのが楽しくなり、色々なデザインの建物をまず20件建てた。
「よし!父さんが起こした区画整理にも家の場所を合わせたし、今日はここまで!」
よーでけたなぁー!と清々しい気持ちで、工場に纏う黒魔法を消して町の人間を呼びに行く。
工場に入ると父さんを先頭に町の皆が怒って睨んでくる。
「シノ…… 何をしたいのか、全く分からない。もういい時間じゃないか…… 一日一日が貴重なこの時期に何だい?冬まで時間がないんだよ?」
「そうじゃ無駄に時間を食えば工場の再開も遅れてしまうわい」
揃った皆が苦しい目を向けてくる。
工場のみんなも、町の住人も揃って怒っているな。
まぁ、見てもらってから怒るか判断してもらおう。
「まぁ皆んなが気にいるか分からないけど…… ついてきて」
俺の案内でゾロゾロと全員で外に出る。
「これは…… なんだ? 」
「家だよ父さん」
信じられないと町の皆は俺が建てた新築の家を見てザワザワし始める。
そらそうでしょー?昭和初期と言っても異世界の中世っぽい建築物と比べたら雲泥の差があるもん。
「とりあえず、このペースなら冬になる前に余裕で今居る住人用の家は出来ると思うんだけど…… どうかな?」
皆んな、はそれぞれの家屋を内覧して静まり返る。
父さんは一通り、俺が建てた新築家屋を見て苦笑して言った。
「もうシノが全部やって」
酷くない?完全に手伝いすら拒否しやがった!
いや良いんだよ?間違いないし、この言葉は言い換えたら圧倒的信頼感でもあるし……
でも、もう少し優しさが欲しいです。
次の日から、工場の中で大人は酒盛りと雑談、子供達は遊びながらリバーシでめっちゃ盛り上がっているところをトボトボ外に出る……
「シノ様ー! 」
ドワーフから声がかかる!おっ! 手伝う気持ちか労いの言葉かな?と、思って少し笑って振り向く。
「工場の復興もこの後たのむぞい! さあ酒じゃ! 」
バダン! !と工場のドアが閉まる。
…… ああ秋が深い
この寂しさは秋のせいだろうか?
俺は町の復興が終わるまで一人で秋を堪能した。




