火薬は恋の予感
…… キャンサースライムは俺が到着する前に町の建物や逃げ遅れた人達を吸収して最後は大増殖をした。
何を言いたいかというと、残ったものは全てドロドロなのだ。
溶けた部分と原型を残しているもの様々だが…… かなり酷い。誰が整備するんだよ?この時は他人事だったなぁ……
父さんは母さんの眠るここに遷都して領主館を立て直そうと話した。
そりゃあ馴染みあるし、工場もあるし領都になってくれたら何かと便利だ!
「賛成! 出来るだけ手伝うからさ! 頑張ろう! 」
────なんで俺はあの時、あんな事を言ったんだろう?
「とりあえずシノ、早く終わらせて!」
父さんの俺への扱いが大公様の所に行ってから酷いと思う。
そりゃあ大公様の所で1人で整地作業をしちゃったから頼られるのは分かるよ?
でもさ、魔法でもっと壁内の面積を広く壁の高さを上げるのを遺漏無くするってどうなのよ?
防御壁の工事って普通、公共工事だよな?
入札して大人数で何年かかけてするものだよね?
施工を全て俺がやるとか酷くない?
…… まぁやるんだけども。1人でやった方が早いけども……
地球のパソコンゲームで遊んだ箱庭ゲームみたいでたぶん楽しいだろうし……
でも…… まだ成人前の息子に早くやってはないと思うの。
「出来るだけ手伝うって言ったけど、これはできるだけの範疇なのか…… ?」
「ははっ!シノの範疇に当て嵌めるなら王都が作れるんじゃないか?」
ぐぬぅ…… 父さんめ…… たぶん頑張れば王都の壁建設も出来そうな気がするからなんとも言えないけど……
え?マジで王都できるの?引くわ〜と言いながら父さんは執務室に戻った。
「まぁまぁ私も手伝ってあげるから…… 」
父さんに工場の予算について相談しにきていたアネゴが肩を叩いてくる。
「アネゴはなんか嫌だ。」
「え!?なんでよ!? 」
アネゴはなぁ…… 半壊した民家を建て直す為の石材を用意しようとした時に、せっかくだし火薬の本来の使い方をしようと考えた。ノーベルさんの平和的な使い方ね。
そう、ダイナマイトを作る事にしたのだ。
ノーベルさんは戦争より平和的な用途にダイナマイトを使って欲しかったらしいしね。
まずは記憶ファイルを漁って手製爆弾を作成。
あまり破壊力があるものは必要ないだろうとケイ藻土ダイナマイトを作る。
これでも、十分と戦争に活用できるんだからやはり火薬は便利で恐ろしい。
作ったダイナマイトを石材確保の岩場で使う時に偶然、アネゴがついてきていた。
「なにかピンとくるものがあった」
とは後日のアネゴ談。
発破場所に穴を開けて
そこにダイナマイトを入れて
導火線を長く伸ばして…… え?アネゴが火を着けたいの?
みんなで離れて岩場の導火線に火を着けたアネゴも走り逃げてくる。
みんなを集めて風魔法で壁を作り爆風避けをつくり……
ドォォ──────ッ!
パラパラとダイナマイトの爆発に飛ばされた石が風魔法のバリアに当たる。
砂煙を風魔法のバリアでそのまま押し退けると、しっかりとバラバラになった岩がそこにあった。
「おおぉおおぉぉぉぉぉぉ!これはぁぁぁぁ!」
アネゴはこれから発破作業にハマった。
「もう石の素材はいいよ?」
と止めるまで日参してダイナマイトを作った。
火薬の消費が激しくて無駄も多いしね。
「そんなぁ…… 」
「だいたい石の採掘は、土魔法を使えない人の為の素材なんだから数が要らないしなぁ」
オマエらドワーフはほとんど土魔法を使えるし、ウチの町はドワーフの人口割合が結構高い。
そう説明するとアネゴは落ち込んだ。
「…… ドワーフの…… 血…… 」
はいはい!アネゴ、ドワーフの血を恨まないで!
しかし、確かに爆発物は使いやすいな。
「さらに火薬を作って、大砲とか…… は、まあオーバースペックだし要らんだろう……止めとこう」
「……タイホウ……?」
俺の小声に気づいたドワーフに詰め寄られる。
何よりとアネゴが食いつく。
「シノ!シノ!それは…… 爆発するものなのか!?爆発するんでしょ?ねぇ?」
ダイナマイトの発破の実験から何か心に来るものがあったのかメチャクチャ食いつく。
あの…… アネゴの背が小さいので俺のお腹に大きいオッパイ当たりまくりですけど……
少し堪能していたら、凄い力でアネゴから引き剥がすように後ろに引っ張られた。
「おお? お…… なんだ? キュレネ?」
「…… お兄ちゃんニヤニヤしすぎ…… 大きいのが…… いいの? 」
おおう…… 妹よ自分の胸を気にしない。
あの告白の日からキュレネはより嫉妬深くなったと思う。
そう考えると過去の行動にも合点が…あ!そういえば[記憶]の中にあるキュレネのスキルに……
スキル 兄探索
○固有能力
嫉妬の種火
こんなのがあったな…… と考えたらゾッとした。
「あの…… すみません」
なぜかキュレネに謝ってしまう。嫉妬の種火が嫉妬の業火になると、俺…… どうかされそう。
こらこらアネゴ、キュレネにオッパイ自慢の煽りポーズしない。
「…… そのおっぱい…… 要るの?」
ああぁ…… キュレネ喧嘩しないで……ナイフなんてどこに持ってたの?え?暗器みたいにないないしていたの?
「…… キュレネやっちゃえ」
ボソリと聞こえた声に振り向いたらアネゴを睨むアーネが……
もう嫌です助けてください。
大砲ね、う〜ん。また大型の魔物が来た時に必要かもね…… ?
工場がキャンサースライムにより半壊させられたので、大きい物や近代のアームストロング砲は作るのは無理だな。作れる施設とまだ工場の技術力がない。
「では、町の戦力増強のために、南北戦争に使われた12ポンドナポレオン砲を作成する!」
わっ!とドワーフから湧き上がる歓声。
ハイタッチするドワーフに紛れて町鍛治さんがゲンナリしている。え?また火薬の量産してくださいね?辞めたい?報酬をさらに2倍でどうです?
ルベルM1886[MA]を作る事を覚えた豪放磊落には12ポンドナポレオン砲を作るのは容易ですぐに一門を作り上げた。
「…… こんなに簡単に作れるんじやのう」
出来上がった12ポンドナポレオン砲に抱きつき嬉しそうに撫で回すアネゴを見ながらシートさんがつぶやく。
「まあナポレオンの時代の大砲だしねぇ」
「ナポリ?…… つまり次世代の大砲もやはりやはり!あるので?あ!皆の者!シノ様を捕まえるのじゃ!」
全力で逃げて有耶無耶にしましたよ。
大砲は流石に試射だけでも危ないので、町からかなり離れた崖で12ポンドナポレオン砲[MA]の試し打ちをする。
12ポンドナポレオン砲[MA]…… お分かり頂けると思う。
[MA]がこれにも付いている。
ルベルM1886[MA]を作った経験からドワーフは俺が基礎構造の説明をした後、酒を飲みながらアネゴ主導で改良を加えやがった……
もともとの12ポンドナポレオン砲は前装式滑腔砲…… つまりライフリングがない大砲だったんだけど「あれ?ここにルベルみたいにライフリングつけたらいいんじゃないのか?」というドワーフの閃きにより改造されそうになった。
「それは止めとけ」
翌日、改造の許可をもらいにきたドワーフをピシッと止める。
「施条砲は強度と構造が12ポンドナポレオン砲には耐えられない」
「シノ様」
「…… はい?」
「シノ様、12ポンドナポレオン砲にはという事は次の兵器をやはりお知りである…… と?」
おい!アネゴ!ガタッと立ち上がらない!顔を赤らめない!
またまた俺の特技、有耶無耶が炸裂して12ポンドナポレオン砲の制作を継続。
「じゃあ、魔法付与が出来る様にしておきますわい」
…… じゃあって何だよ?技術革新はそんな服選びのように簡単に出来るもんじゃねぇぞ?
俺は溜息を吐いてドワーフの作業を見守った……
…… はい、出来ました12ポンドナポレオン砲[MA]の完成です。
ドワーフには技術革新の壁は紙のように薄かったです。
ルベルM1886[MA]の時のように魔石が装着されたナポレオン砲は魔力を充填する事が出来ます。
腔発を防ぐため、また作業効率を上るために、大砲の冷却と薬室内のゴミを吹き飛ばす風魔法の付与。
発射時に火魔法の付与と…… まぁ使いやすい事。
もちろん砲身に強化魔法もかけられます。
今回、榴弾をご用意しております。
キャニスター弾も作ろうとしたんだけど、めんどくさいからやめた!
「では!町防衛用、試作12ポンドナポレオン砲[MA]01番、試射開始!砲員以外は下がれ!」
皆を下がらせる。
本当に危ないからね。
「砲員!風魔法の魔石起動!自身と砲身に風魔法が付与された事を確認!…… 射出角度の確認!ゆっくり!」
有効射程はかなりあるので数百メートル離れた岩場に照準を合わせる。
砲員に風魔法の付与をしたのは砲員を守る為だ。
自然属性適正もあるので砲員の1人は必ず風魔法を使える者を割り当てている。
砲員のドワーフは色々と端折るけど弾を込めるところまで黙々と作業をする。事前練習しとったんかー。
俺、叫び損じゃね?
「みんな耳を塞げよー」
「そんなか?」
「そんなだ」
なんか勝手にやってくれるみたいだし、他のドワーフと雑談しながら見学。
ちなみにアネゴも砲員の1人になっている。
しかも、指揮してるのはアネゴっぽい。いよいよ初めに俺が指揮官っぽく叫んでたのが恥ずかしい。
「シノ!いくわ!」
「はい」
アネゴの声に手を上げ合図する。
「私の12ポンドナポレオン砲[MA]ちゃん…… 発射!」
「発射!」
アネゴの声とドワーフの復唱
─────バァァァァン…… !!
轟音と火と煙を吐く12ポンドナポレオン砲[MA]
「着発確認!」
アネゴの上擦った叫び声の後
ゴッゴ──────…… ッ!!
弾が着弾して爆発が起きる!
岩が吹き飛び…… 崖が崩れる。
…… 煙の中ドワーフは無言で自分の見た物を整理しているようだ。震えている奴もいる。
その緊張を壊したのはアネゴだった。
「シノ、私と結婚しない? 」
「何言ってんの? 」
ダ─────ッと走って来てオッパイを押し付けて幼女が抱きついてくる。
何これ?とオッさんドワーフを見ると
「シノ様、ワシらドワーフは根っからの技術者じゃ。こんなもん見せられたらなぁ…… そりゃ女なら伴侶にしたいと思うじゃろうよ? 」
「ゴルゥゥアァァーー! 」
「グペポッ 」
キュレネがアネゴの服を引っ張り俺から引き離す。
というか投げ飛ばした。ゴロゴロと大公様みたいにアネゴが転がる。
「アネゴ! な…… なに…… ヌケヌケと! 」
まあケンカですわ…… やめてやめてと止める俺の方がケガをするハメになったという。
「おし! みんな帰って酒盛りだぞい! 」
「おう!」
俺、キュレネ、アネゴを置いてドワーフが町に戻っていく。
あぁ……ドワーフが町へと引いていくナポレオン砲が夕日に反射して綺麗だな…… あ、牽引車として来た蒸気自動車は置いていってくれるんだ…… やさしー。
…… だれか助けて下さい。
2021/4
挿絵ついか




