面倒な事はアチラからこんにちわします!
「…… なんだここは!? 」
「家ですよ大公閣下。」
嫌な事に、冬の始まりに大公様が町を訪ねてきた。
来なくていーよー!と全力で思ったんだけどね。来ちゃった。
今、大公様は領主館にいる。
俺が一生懸命に趣味で作った日本庭園を眺めて唖然としているのを見ると、さすが大公様この良さがわかる模様。
地球で生きた時に、社員旅行で行った京都の圓徳院の御庭に感動したんだ…… たから異世界で再現しようと頑張った!
まぁ無理でした……形的には似せられたけどね。
さすがにあそこまで素晴らしくするには俺のセンスが足りなかった。それでもバッタ物としては、とても美しい家屋が出来上がった…… と思う。
劣化版圓徳院冬の庭を見て大公様はフーッと息を吐き胡座をかいて、静かにお茶とお菓子を食べる。
そうだよね!やっぱ圓徳院は落ち着くよね!
町の権利を正式に父さんに委譲して、下位の地方貴族として国が迎えるには色々な手続きが必要で、本来ならば父さんが王都に自ら参上しないといけないのだけど……
「俺が来たからそういうのは要らぬ! ホラ! 王からの任命書だ!」
ポーンと小さな貴族の証となる盾とこの周辺地域の領地権の王命書類を父さんにほり投げてきた。
そんな大事な書類をなんと粗雑な……
「うゎ…… あ…… ありがたく任命させ」
「ところでシノよ! 今回、俺がワザワザ来た理由だがな! 」
うわっ!父さんたら、昨晩は全く寝ていないぐらい緊張してたのに挨拶をぶった斬りよった…… 父さん涙目じゃん…… 本当にこの大公様は粗忽者だな。
「シノ! 」
やべぇ面白いから父さん見てたわ!
「はい、何でしょうか? 」
「鳥使いに探らせたんだが…… 大砲っていう楽しそうなの作ったらしいじゃないか?」
ニヤニヤと肩を組んで来ないで下さい!
めちゃくちゃ怖いです!
☆★
「これが大砲でございます」
「ほうこれが…… 」
いやアネゴなんで自分の物みたいに紹介してんのさ?
それと、なんでナポレオン砲が5門に増えてるんだよ!?
チラッと遠目にこちらを見ている有閑人を見るとニヤニヤしながらアネゴを指差す。
───専断はアネゴか…… 困ったもんだ。何門も大砲があると目をつけられてこの地域が軍需工場になっちまうぞ……
「撃てるか?」
「はい! 大丈夫です! 」
勝手にアネゴと大公様の話が進んで大砲を撃つ所まで進んでいく。
この2人って何気に息が合いそうで困る。
場所を町から蒸気自動車から数分のところに作った武器の実験場に移した。
大公様とお付きの兵士が安全な距離まで下がるのを確認するとアネゴが指示を始める。
「風魔法!用意はいいな!?火魔法の魔石に魔力を込めて! 」
「おうさ! 」
いやいいけどさ、俺と父さんを無視して進めないで下さい。
何回ここで試射しとるんだ?という慣れた感じでテキパキと大砲を撃つ準備が終わる。
「発射! 」
アネゴの指した方向へ大砲発射!
辺りは轟音と爆発の渦にまかれる。
大公様はその破壊力に大きく目を見開いてから大笑いし、しばらく転げ回り涙を手で拭って悪魔のような笑顔で言った。
「シノ! これあと50台作れ! 」
と大声で命令をしてきた。
大公様、大砲の数え方は門です…… まぁ町も金が要る父さんも受けて欲しい顔してるしなぁ……
「ありがたくその仕事を頂戴します…… が、精密武器なので少しお時間を下さいね?」
しかし、大砲を50門…… 何に使うかは怖くて聞けないなぁ……
「…… 大公様! 」
「ん? なんだ? 」
大砲をバンバンと叩いて笑う大公様に兵士が歩み寄る。しかしこの人、何でもバンバン叩くなぁ……
「これほどの重さがある物、戦う時にどのように持ち運ぶのですか? 騎兵や兵士では疲れてその後の戦いにならないと思うのですが」
「うぅむ…… 」
なるほど、この星の科学技術を忘れていた。
そうだ!せっかくの新しい商機を逃す手はないな!
「それでは砲牽引車を用意しましょう」
「ガントラクター? 」
筋肉中年が首を傾げる。100%可愛くない。
「はい蒸気トラックに、重たい物を引っ張る為の据付を付けたものです。」
「それは、つまり」
お!ピンときたか。さすがムキムキ軍人。
「大砲用の車両を作りそれを牽引して目当ての場所に運ぶ為の物ですよ!」
もっと色々な用途はあるが今はこんなもんだろう。
「ふむ…… 実物を見たい。どれぐらいで完成する? 」
「ガントラクター……? 」
ふと話し声が聞こえると思えばドワーフが近くまで来ているから笑ってしま…… わない。なんで目が充血してるの?え?アネゴまで?怖いよ!
「…… すみません大公閣下」
「オスカーだ」
ビクッと兵士が固まる。
急ぎ足で臣下のセバスチャンが駆け寄るのを大公様は手で静止する。
「良いのだ…… シノよ私の名前はオスカー・フォン・ロインだ。」
「うぇぇぇ…… へへぇーっ」
思わず土下座してしまう。
大公様より名乗られるのは、この国では一大事。
これからは、大公様の御名前で話しかける権利を与えられたという事だ。
それは貴族社会での道理を通す大きな力になる。
「グハハハ! 俺をゴロゴロ転がして挨拶もせずに空に消える奴が今更だろう! 」
「ぐふぅーっ」
やべっ変な声出ちゃった!
「で? 」
「え? 」
「いつガントラクターがいつ完成するのか? だ! 」
うわーこりゃアカンわ!危険信号ピカピカやでぇ!
「ず…… 図面と作り方は頭にあるので一週間あれば……! 」
どや?許してくれるだろうか?
「フフッ"図面と作り方は頭にある"か…… あといくつの兵器が作れるのやら…… 」
「ぐふぅーっ!」
やべっまた変な声出ちゃった!
「ではこの町で完成を待つとしよう! いいな? シノよ!」
「ぐふぅーっ! 」
まさかの大公様、この町に逗留するでござる宣言!
いやーな冬になりそうな予感がする……
え?キュレネ?ずっと俺の後ろにいるよ。




