脳みそもムキムキマン!
大公様は、カチャカチャと引き金や遊底部分を目視確認しながら話す…… あぁ、そんな使い方をしたら精度が下がるぅ……
「少年よ報告を受けていたが、オマエが本当にこれらを発明したのか? 」
うっわ! すげー調べられてんじゃん。
確認を終え、俺に目を向ける大公様は…… なんというか猜疑心を抱いているようだ。
「はい……」
あの…… 睨まないで下さいませんかねぇ……
と…… 父さん、ここは親として助け…… なんで兵士に紛れて並んでるの!?そこで苦笑はいらないから!
父さんの苦笑にチクショウと思いながら唖然とする。
「…… この銃というのは戦闘で有用か?凝った飾りがある棍棒のようだが…… 」
カチャッと肩に担ぎ持つ姿がやたらサマになってるな。本当に大公の位がある人か?
とりあえず頷くと、大公様は銃を俺に渡してクイッと顎を庭園の端にある樽や廃材や壊れた鍛錬用の的がある方へと示す。
……試してみろという事か?
俺はちょ〜っとムカついちゃったから、ルベルM1886[MA]にアネゴの工房から持ち込んだ劣化ミスリルジャケット弾を装填してから膝を地面について射撃体制をとる……
劣化ミスリル───それはミスリル精製の時に残るカス鉄だ。命名は俺。
カス鉄というとアレだが、普通の鉄(fe)とは違い、ミスリルの残渣が残っているので魔力を込めやすい性質がある。しかも純粋なミスリルより硬い。
「閣下、ちなみにあのゴミがある辺りは壊して良い物なのですか?」
大公様の庭から遠く離れたゴミ捨て場に目をやる。
「フン近づき殴るなりすると思ったが…… 何をするか知らんが興味はある…… 許す。やれ」
王都といっても大公様の豪邸なので、臭いを放つゴミを置く場所となると庭園の端も端、結構な距離がある。金があるんだなぁ……
この射撃体制をとった場所から…… どうせなら捨てられた剣の練習用の木人形へ、ヘッドショットしてやりたい。理由?ムカついたから意趣返しにだよ!
標的は…… 本当に針穴だ。それを狙うという俺に粋がるなという侮蔑の目を大公様から受ける。
「弓矢のような飛び道具…… か…… ?」
大公様の呟きに薄く笑う。勘がいいな。
目を魔法で強化して照準を合わせてから、ワイルドベアを倒した時のようにフーッと息を吸い魔力を銃と弾丸に籠める…… 工場で試した中で一番の威力があった火魔法を弾丸に付与する。
───ヒュッ
息を吹いて止める……
───ドゴ───ンン…… !
「うぇっ!???」
凡そ銃…… というか大砲のような音がルベルM1886[MA]から発せられ、ワイルドベアを狩った時のイメージでいたので、カウンターウェイトである重りもない、子供の体重しかない俺は反動でひっくり返り背中を強く打ってしまう。
「お…… おい!シノ!」
父さんの叫ぶような声で寝たままに顔を上げるとゴミ置き場全体が爆発し20メートル程の豪炎をあげていた。
銃弾に火魔法を付与すると着弾後に爆発するのだが…… あれ?劣化ミスリルジャケット弾って副反応が爆発なの?なんなの?
「シノ!!」
再び叫ぶ父さんにハッとする。大公様や兵士はビックリし過ぎて爆発した場所を見て固まっている…… もちろん俺も。
劣化ミスリルジャケット弾が到達し爆破した地点では水色の光が反射する粉が空気中に漂い、その粉を誘爆剤にして今も炎が広がっている。
「シノ様!ありゃあミスリル粉塵じゃ!このままじゃともう一度爆発するぞい!」
シートさんの怒号が飛ぶ。
[記憶]の中、劣化ミスリルジャケットを作る時にアネゴに注意された言葉が脳裏に響く。
『シノ、ミスリルは粉にすると魔法を吸い込む量が増える。魔法との接触点が増えるからと言われておる。しかし、場合により制御不可になると大事故になるから気をつけるように』
「あ…… いけね !これ大事故になるわ!!」
貴族位が欲しいのに事故を起こしたら意味がねぇ!
俺は身体に魔力を込めて高速で走り、爆心地の近くから水魔法で大量に水を降らせる。
「くっ!」
まだ劣化ミスリル粉塵が漂い静電気がパリパリと不穏な音を立てる。
これ…… ちょっとでも火が出る魔法を使ったら再誘爆するな……
「そいや!」
なら空気を閉じ込めてやる!
ぐいっと!手を地面つけて魔力を通す。
以前作った【土魔法のかまくら]は何度も試行錯誤してかなりの大きさの物を作れるようになった。
空気を遮断する!空気穴を作らずに大きなボウルで劣化ミスリル粉塵ごと閉じ込める!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…… !
土がせり上がり力強く分厚い半円のアーチが籠を編むようにミスリル粉塵を閉じ込めていく!
「よし!よーし!」
なんかテンション上がっちゃって仕方ない!
超能力の発火はもちろん使わない。ただ粉塵を土と混ぜるだけ!
大きな土の塊の中に閉じ込めた劣化ミスリル粉塵をお次は土魔法で圧縮しながら混ぜて混ぜて……
よし、上手いことミスリル粉塵と土が混ざった。これで爆発はしないだろう……
ああ…… 最初に濡らしたから地面がドロドロだわ!風魔法で乾かしながら土魔法で広範囲を指定して整地をしてっと!
綺麗に整地したから光の加減で見えにくいな…… よし光魔法を使って凹凸や起伏がないか最終チェック!…… うん。大丈夫、地面に凹凸はないな!
現状復帰したし大丈夫だろ!ザッと振り返って大公様に銃を見せる
「さて!いかがでしょうか?これが銃です! 戦いを一変させる凄い武器だと自信があります!」
「いやオマエが凄いわ!」
大公様が叫ぶ…… あれ?
「シノ…… オマエの使う魔法は、この国全体でも使える者は殆どいないと思うよ?」
「はぁ? そんなワケないでしょう父さん…… 恥ずかしいなぁ大公閣下の前で子煩悩を見せるのはやめてよー」
へへへっと笑う。本当に大袈裟だなぁ……
あれ?なんでみんな無言なの?ねえ?…… あれー?神様の加護ってそんな凄いの?
「王都ならそれなりに強い人がいるでしょ ? ねぇ?」
カツン!と軍靴をならし大公様が俺の前に、ニヤニヤしながら進み出る。
「なぁ少年、名前をその口から聞こうか? 」
「…… いえ、私のような下賤な者の名前など大公様のお耳には…… 」
「いいから!」
大公様がカツカツと近づいて来る。なんでこの人は大公なのに軍靴を履いているんだ?
「シ…… 、シノーンで、御座います」
この人に取り入るのが目当てだから怒らせる訳にはいかない…… 俺はハイハイマシン…… 俺はイエスマン……
「シノーンよ俺は一つでも戦いに関する事に負けるのが嫌なのだ」
「…… はい!」
「魔法は負けた…… だが力では負けぬよ!」
「…… はい!」
「剣で勝負してもらおう」
「は…… いいえ !ダメです !私は子供です、非力にございます」
「…… そうなのか…… ?」
あっぶなー戦うってなんだよ?
「嘘じゃぞい! シノ様はワシらドワーフより力も強いぞ! この前など二人掛かりでも余裕で捻られたわい!」
おいおいシート! てめぇ何を言いやがる!
あっ!笑ってんじゃねえぞ!あれか?図面を破った時の事か?
俺は領地をもらうんだ! がんばるんだ!キュレネと母さんの為に!
「シノーンよではオマエの住む町をやろう…… もちろんゾルゲとお前達親子の調査はしている。欲しいのだろう? ふふふ。俺に勝てたらくれてやる」
「はいやります! よかったー!」
「あ"ん?」
あ…… 大公様を結果的に怒らせちゃったよ
シートぉぉ!テメェのせいだ!…… おいおい酒を飲むんじゃねぇ!
見物って…… おい兵士にふるまうな…… あ…… 父さんも飲まないでよぉ……
なんだよ全部無駄かよー!
何のために色々と作ったんだよぉー!




