コロコロ様
「これでどうだ! 」
「…… いや遅いです」
大公様が、もう何度目か分からないぐらいに地面をコロコロと転がる……
最初は木剣で勝負したんだけど、大公様ってば筋肉凄いのに遅いし非力。
神様の加護で得た力をこれまで、対人の戦闘に使わなかったから知らなかったけど…… 人はかなり弱い存在のようだ。
大公様がコロコロしているのを見て王国の兵士が唖然としているのを見れば分かる。
大公様は人間の中では『強い方』の存在なんだろう。
今も俺が考え事をしているのを「隙あり!」と筋肉ムキムキが上段から木剣を振り下ろしてくるんだけど、もう遅くて遅くて……
「あ、なるほど、大公閣下は優しいですね! 元から領地を我が家に下賜されるつもりだったんですね!」
と言ったけど…… 大公様キレて防御無視でブンブンと剣を振るんだけど遅い。
「すみません、手加減ありがとうございます」
「っ!手加減など、しておらぬ」
と大公様の耳元で小声で伝えると、忌々しく俺を見て木剣を地面に投げ捨ててしまった。
よし!コレ俺の勝ちでしょう?
「えっと、領地を…… いただけるんですよね? 」
「いや!次は素手だ!」
「うぇ〜っ」
不承不承ながら、徒手空拳で戦う。これも、大公様メチャクチャ弱い。
俺の自分のステータスが化け物みたいだと、流石に気づいた大公様。息を切らして呆然としています。
種族的に人族より力があるドワーフにも力負けしない俺と、次は相撲のようにがっぷり四つで組み合いを求めて来る大公様。
はい、右にコロコロ〜……
はい、左にコロコロ〜……
この時ぐらいかな?俺は焦りで脂汗をかきだした。
『…… この程度で、本当に領地をもらっていいのか?』という罪悪感が芽生えてしまい、その後も様々な武器を使いかかって来る大公様を地面に転がしては、早く終わってくれ!と心の中で願い初めていた。
それでも大公様はスタミナはやたらある様で、何度も何度も向かって来る。
再びの剣、斧、スピア…… 最終的には大公様が武器使用で俺が素手と、もう憖づづけるより、コレ終わりにした方が大公様もいいんじゃない?という雰囲気に周囲がなっていく。
一部には大公様と似たようなアホ…… 元い熱血漢の兵士が子供の俺に向かって
「我々も稽古をして欲しい! 」
などと、おかしな事を言いだした。
…… バッカやろう!さすがに大公様だって子供に対してそんな事は…… え?大公様ってば!なんで志願して来た兵士を手招きしてるんですか?
アホな大人のアホな誘いに、アホな兵士達もそれに乗っかる。
結果、俺VS大公様&兵士という…… ちょっとどころか大変におかしい事になりだす。
投げて躱してを繰り返し…… 俺は休みなしに昼から始まった戦闘訓練は夕方の時刻にになっていた。
「あの…… そろそろ…… 領地をもらえますか?」
「チッ!息もあがっあておらんか…… もう一手お願いしよう…… いや違うのだ。」
フーッと大公様は、深呼吸をして兵士を手で合図して下がらせる。
「このまま手加減された勝負では気に食わん。俺はシノーン…… キサマの本気が見たいのだ」
「えっと…… それで領地をくれます?」
「ああ、分かった必ずだと約束をしよう」
なるほど、なるほどと頷く。
この茶番が終わるならありがたいね!
俺は…… 手を茜色に染まり出した空に上げ、体中の魔力を手に集める。
水、火、風、土はまた庭園を壊しそうなので、光魔法を使うとする。
「ふんっ!」
手には小さなピンポン玉の光魔法が現れる。
あまりのショボさにポカンとする面々に対して俺は笑ってしまう。
見せ場はこれからだよ!
ピンポン玉のような光魔法は地上100メートル程の空をゆっくり上がり、そこからどんどんと大きくなる!その光の大玉はまるで夏の太陽のような明るさになり、空に目に追えるかギリギリに飛び上っていく。
光の大きさとスピードは大きく、早くなっていき空にあった雲を消滅させながら宇宙へと消えて行った。
茜色の薄暮の空にの向こうへ消えた魔法を見て大公様は笑い出す。
「これはかなわん! 並の強さでは勝てんわ!」
笑顔で肩をすくめてやっと負けをみとめてくれた。
「では!領地を下さるんですか?」
「シノーンはソレばかりだなハハハ! 俺など歯牙にも掛けん実力ならそうなるわな! おいセバスチャン!」
大公様が声をかけると車を誘導してくれた家臣さんがスッと現れる。臣下さんの名前ってセバスチャンなのか……
「シノーン! さすがに子供に領地を任せるのは外聞が悪い! オマエの父に統治権を与える!それでいいな?」
大公様の決定した言葉を家臣さんは書類とメモに何かを書くとそそくさと退散。
「今から一ヶ月待て! その間に譲渡を許す正式な書類をつくろうじゃないか!」
やった! ってか蒸気自動車と銃…… 要らなかったんじゃ……ホント要らなかったっぽい?…… 辛い。
なんか疲れてぐったりしていると臣下さんが書類を持ったまんまて戻って来て、大公様に耳打ちする。…… なんだ?
話が終わると大公様は顔を顰めて俺と父さんに言葉を投げかけた。
「シノーン、それに父親よ…… よく聞くのだ。オマエ達の町が危ないぞ……」
「…… は?」
驚き過ぎて、どう言う事?という言葉がなかなか出なかった。




