蒸気機関はつらいよ!
はい、ってことで春になりましたシノーンです!10歳でーす!
はーい!ありがとうありがとう10歳でーす!
去年の年の終わり頃から今年の春まではもう忙しくて大変だった。
村の周りを車で爆走した事がプロモーションとなり、それを見ていた商人から各地に蒸気自動車の性能が伝えられて受注が相次いだ。
今までの蒸気自動車を知る商人達の認識は
[馬を必要とし無いが遅い馬車。燃料としての手間がかかり趣味にしか使えない。金食い虫の役立たず]…… といった程度の認識だった。
しかし、今回のキュレネ救出騒動により馬車より遥かに早く動く蒸気自動車の走行を見られてしまった。
商人は計算が早いもの。蒸気自動車に対する認識は一気にアップデートされ、それが伝わっていき大きなムーブメントへと動いていった。
地球でも自動車が陸上での運搬の常識になったのだ、これ以上の物はガソリン車しかない。
そりゃ自動車が流行るのは当たり前ってなもん。
グダグダと言っているが、蒸気自動車の受注が増えたのは村としてはありがたいけど、生産体制を整え、量産するのに恐ろしい労力がかかった……
しかも工業で車を量産をするには今までの『村』としてのインフラも問題となる。
人口と場所的な保持容量が足りず生産ラインを築けなかった。
仕方なく村の外壁を無理矢理にドワーフと俺が土魔法で拡張して、広がった村の土地に家や店を建造していき隊商や俺の仲間や移住者が遷居して…… 村が名実共に『町』になり生産体制が一応整った。
いや、これでもかなり早いんだよ?魔法万歳!
村が町になる…… へへへ…… もちろん父さんが繰り上げで町長となった。
父さんはもう冒険者の面影はない。
「…… こんなに痩せちゃって…… っくっ!クスクスクス…… 」
痩せた父さんの腕を優しく撫でながら煽っても笑顔で返してくるようになった…… 苦笑しないのかよつまんない。
人の上に立って生きる事に納得したんだろう。自信がついたんだね?
偉いなぁ…… 子供の無定見を飲み込んだわ……
さて、回想はこんなところかな?
「やれやれ…… 大変だったけど、なんとか車工場が動き出したな…… 」
受注した蒸気自動車のオーダーメイド部分の図面や資料をトントンと机で1つにまとめて、終わった終わったと態とらしいジェスチャーをする。
終わったアピールだ!仕事は終わり!分かった?
終了を強調するのは何故か?
滅茶苦茶ドワーフが見てくるからだ!
仕事はもういいです!許して下さい!
悪魔が近寄って来ないようにトントントントンし続ける。
トントントントントントン……
「シノ様…… 」
トントントントン
「シノ様よう…… 」
トントントントン
「蒸気機関車…… 鉄道の知識は? 」
トン…… ?トントントントントントン!
「シノ様よう…… 町の皆が平原の大穴を怖がってますぜ?…… いいんですか?」
トン…… シクシク
ああ、仕事かぁ……
☆★
「お兄ちゃん、お茶どうぞ!」
「ありがとうキュレネ」
キュレネは平原で死に掛けた事を母さんにこってり絞られた。
「町の外に出るぐらいならシノの元で働きなさい」
「はい!!!」
え?工場の雇用決定権を母さんが持ってるの?とは聞かなかった。
俺もキュレネが危ない目にあうのが嫌だったからな。
今は俺の秘書のように常に側にいる。
作業機械は危ないが、勝手に町の外に訓練に行くよりかはマシだろう。工場なら昼休みにシートさんと稽古も出来るしな。
本人も労働が心地良いのか俺を監視するように見てはニコニコしている。よしよし頭撫でといたろ。
「で、そんなにイチャイチャしないで早く知識を我らに!!」
「まてまて!兄妹でイチャイチャは無いだろ?あと近づくな!普通に怖い」
ズンズンと俺に迫るドワーフ達を押し返す。
かった!筋肉硬いな…… 本当に生き物か?ドワーフって鉄なんじゃない?
「お兄ちゃん…… 」
キュレネが悲しそうな顔をしているが何でだ?兄とイチャイチャがキモかったか?地球の妹もキモがっていたからな!
約束は約束だ…… 仕方ない、そう観念して工場の会議室に移動して俺用の椅子に座ると、ドワーフがゾロゾロと続いて部屋に入り俺の回りを囲む。本当に怖い。目も、体も。
そんなに大きな部屋じゃないので威圧感が半端無い。
怪談百物語じゃないんだから…… 俺が蝋燭だ!ってか?なんでやねん!
あと全員で来る必要ないだろ?蒸気自動車の量産作業がまだあるんだから仕事しろよ……
創造狂のドワーフ達の無言による催促に負けて話を始める。あれ?鉄道ってどう説明すればいいんだ?
「えっと、えっとだな…… 鉄道ってのは…… 例えば小さいリンゴぐらいの蒸気自動車を作ったとしよう。どのぐらいの大きさの物が牽引できる?」
「まぁそうじゃのう…… 出力で差は出るが、無理をすれば数倍の物は引き摺れるかのぅ?」
ドワーフ達が肯く。
「じゃあ普通の大きさの蒸気自動車なら?」
「リンゴと同じで蒸気自動車の数倍の物を引き摺れるかのう?あくまで理論的な話じゃがな」
ドワーフがこの程度の話かと少し和んだ空気が流れる。そうだよな、車を作った奴らなら大した事ないよな!
ガッカリしてくれたら、鉄道を作るの辞めるんじゃね?
「蒸気機関車の大きさは車の何倍もあり、パワーは蒸気自動車なんて比べ物にならない乗り物なんだ!大した事ないだろ?じゃあ俺は帰るな!」
ピタリと空気が止まる…… あれ?これは……
「…… シノ様」
「はい」
あれぇぇ?なんでシリアスなのさ?
「ただ蒸気自動車を大きくするだけとかではないですよね?」
「はい…… パワーは蒸気自動車なんて霞むレベルです。人や物を大量に遠くの場所まで大輸送できます。」
C62型蒸気機関車の[知識ファイル]を脳内に引っ張ってくる。
某銀河へ汽車で旅する超名作漫画に出てくる機関車のモデルなので気になり図書館で調べたんだった。妹にはアニメしか興味ないの?キモって言われたなぁ…… そんな嫌な事も思い出す[記憶]スキル!
C62型蒸気機関車の[知識ファイル]を見ながらぺらぺらと適当に話すとピーンとさらに空気が張り詰める。
俺に向かい合う前列から順々に、頭を伏せ両膝を折り曲げ懺悔のようなポーズをドワーフ達、全員が俺にしだした。俺に何があった!?
「シノ様…… 我々にその知識をお与え下さい…… 」
ドワーフ達は泣きながらふり絞る小さい声で懇願をしはじめたのだ……
いや怖い怖い怖い!
やめてやめてやめて!
無言で泣きながら羊皮紙と書くもの持って来ないで!
図案とか蒸気機関車は大変だから……ねぇ…… 聞いてないの?
「ゴツいオッさんが泣きながらビー玉みたいな目を子供にすんな!純粋で純情か!?」
「…… 」
「…… ん? 」
「…… ビー…… ダマ? それは何ですか?」
ああ!もうなんだよコイツら!何言ってもダメじゃないかよ!
───とこんな感じで蒸気自動車・蒸気機関車の仕事ばかりして10歳になりました☆えっへん!
…… はぁ、つらいわ。
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カリスト様
蒸気自動車という物を発明しました。
結構な人気で貴族様からも問い合わせが相次いでいます。
今回はまだ無理ですが生産が安定しましたら一台、そちらに献上させて頂きます。
シノーンより
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シノーンへ
蒸気自動車は王都でも大変話題になっていますので早く届くのをお待ちします。
早く乗ってみたくて私、夜も眠れないかもしれませんね?
よろしいですか?
早く届くのを楽しみにしていますよ。
あとお菓子の種類にもっとバリエーションが欲しいです。
前回のお菓子は大変好評でした。そちらに王都の貴族からお菓子販売の話があるかもしれません。
ああ、蒸気自動車…… 楽しみです。
楽しみは待てない私なんです。いいですね?
カリスト=セルディック
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あぁあぁぁ!辛れーわ!
じゅっさい!俺、10歳!小学四年生なの!




