新しいなにか!
長い長い仕事が一段落した。嘘です仮病です。
ウソついて作った短い休みの日に、トロスの町で買った地図を何気無く部屋で眺めていると不意に違う町に旅をしに行きたくなってしまった。
よく考えたら体の年齢は10歳!この冒険したい心の鼓動が堪らない感じは体から来るものなんだろうか?ただの観光おのぼりさんか?
ソワソワしながら遊びに行く準備を始める。
今日はキュレネは母さんと我が町に新しく出来た服屋とアクセサリー屋に行っているのだ!旅の理由はソレもある気楽な一人旅をしたかったのさ!
いつも通りに超能力を使い一気に上空へ移動をして景色を眺める。
しかし、この村も町になって大きくなったな……将来的に商業都市になるんだろうか?
町を見下ろしていると母さんに手をとられ歩いているキュレネを見つける。
────な、なんかキュレネと目が合ったような? そういえばキュレネのスキルをトロスの町で見た時に"兄探索"ってあったな……
「フフッまさかな? 」
気のせい気のせいと地図を空中で広げる。
「せっかく行くなら見た事ない土地がいいしなぁ…… トロスの他というと…… 大河沿いの町リバが近いな」
俺はリバの町の方角を地図で何度も確認してから瞬間移動を使った。
☆★
「すみませんアーネリお嬢様…… 」
そう言い残し私よ最後の従者が死んでしまってから2日が経った。
私は1人で魔物災害に遭った場所から一番近いリバの町を目指して森の中を逃げている。後ろから魔物が追いかけてくるからだ。
まさかあんなに強い魔物が馬車を襲うなんて……
心の中で何度も飽きるぐらいに愚痴る。
ああ、もう少しでリバの町に着きそうなのに……
魔物に追いつかれる…… ダメ…… だわ。
魔物が巨体であると容易に想像できる大きな足音が聞こえる。
「こんな田舎道にサイクロプスが出るなんて普通は考えないわ…… なんてこと…… なんてこと…… 」
愚痴に愚痴が重なる。助からないと分かっているから余計に……
父が亡くなり、世襲貴族となった…… 馬を飼育する事を代々してきた我が家に対して手紙が送られてきた。
手紙を読んでの絶望感は…… 今思い出しても悔しいものだった。
「相続税なんて…… 聞いてない」
父から相続した馬一頭に対して相続税が掛かるバカげた法改正の令達の所為で我が家は…… 私の代で破綻した。
何せ、かなりの数の馬を飼育していたのだ。
相続に関する税金は加算され加算され…… 絶対に支払えるものではなかった。
大量の馬を売却し相続税の支払いをして…… 残る馬を売り払いその他の税金に充てた。
税金を払えず犯罪者または借金奴隷になるのは女の身として絶対に避けたかった。これは意地と…… 女としての清さの問題でもあった。
これ以上は、どうにもならないと逃げる様に母方の祖父の領地へ庇護を求めて最短距離で森を抜けている所だった。
時間と距離を惜しんだのは移動に際しての借金をしないようにする為だった。この判断は…… 失敗だった。
残ったのは馬車二台分の荷物、貴族としては情けない程の金銭、父の時代から仕えてきてくれた従者達。失いたくなかったのに、判断を間違い全て失った……
無能…… 私は、無能者だ……
迫る巨体に従者や馬車や…… 全て、踏み潰された。
せめてもの意地で抱えてきた宝飾品も、もう歩き疲れ重たくなってきた。
──もう…… 諦めるかな…… ?
息を切らして、木に凭れかかり見回す。
「ぐっ…… !」
いつ死んでしまったか分からない人の遺骸がたくさん散らばっている。
そうか…… ここの一帯はサイクロプスの縄張りだったのか。
私は…… ここで死んでしまうのかと涙が流れる。
馬の飼育には忍耐が必要で父に幼い頃から教えられ…… 私は忍耐強いと自負し誇ってきた。
でも、その心が…… もう無理だ。限界だ…… 。
馬術が好きで今もズボンに動きやすい服……
死ぬ時はせめて綺麗なドレスで死にたかった……
ああ……高い木の茂み間から、私を見つけた単眼のサイクロプスが笑っている。
その家の柱のように太い血だらけの棍棒が私を潰すのだろうか?
最後は貴族らしく気品をもって死のうと地面から剥き出しの岩に上品に腰をかける。
──────シュ──────ンンンッ!!
その時、私に迫るサイクロプスが光の中で蒸発した。
「え!?魔法…… ?」
サイクロプスを一撃で倒した光が飛んできた空の方角を見ると、私より少し幼いぐらいの少年が空を走っていく……
少年は空でパッパッと消えては現れ、周囲のサイクロプスを狩りながらリバの町の方角へと向かっていった。サイクロプス…… 何匹もいたのね?
…… 彼の方は救世主だろうか?
少年の後を追おうと、最後の力を振り絞る。
希望を得た私に、父がくれた忍耐力が力を貸し漲るのを感じる。
全てを失った私だけど…… 私の全てをあなたに…空を走る少年にそう思い始めていた。
☆★
「うっわ!サイクロプスすごい!」
レベルめっちゃ上がる!最高!
この森凄い!ちょっと回り道で時間がかかるけど瞬間移動の距離短くしてサイクロプス倒しながらリバの町に向かおうっと!
アーネリが必死に後ろから付いて来ていると知らなかったシノーンはサイクロプスを倒す為にワザとゆっくりとリバの町向かう。
そのおかげで彼女は死ぬ事なく、また追いつけていたのだ。
アーネリはそんな事情は知らない。
美少年を見ながら必死に走り続ける。
アーネリはシノーンがまるで自分について来いと導いてくれているとさえ思い始めていた。




