文化よススメ!
晴天の霹靂…… 突然に怒る事件や衝撃的なこと
ふと、その言葉を思い出しました。どうもシノーンです。
「シノあんたは、お菓子作りなさい」
秋も深まった頃に母さんから唐突にそう言われた。
あの…… 俺…… 蒸気機関の設計図を描いているんですけど……
同じような日々に飽きて来たから、何か新しい事に挑戦しようと考えて村鍛冶と村大工を家に集めて新しい発明をしようと俺の家で話し合っていたんだが……
…… いやなんで母さん睨むの?
この家を大きく建て替えられたのも、こうした発明のおかげじゃん。これも新しい金策なんだから……邪魔しないでもらえます?
どうせ作るなら先鋭的な物を!とみんなで話し合っていた時に、蒸気機関を具現化して異世界版の産業革命を起こしてやろうと考えた。
魔物と対峙するなら科学と産業が発展しているべきだろう。人は楽にあるべきだ!そして俺は金を得るべきだ!
「そんな何の役に立つか分からない物よりお菓子作りなさい」
「え?いきなりの暴論?母さん昨日の夜に産業革命の重要性を話したよね? あれ? 鍛冶屋さん大工屋さん何で帰る準備してるの?ねぇ?」
どの世界でも気の強い女に男は弱いのか?
魔法と剣の世界だろ? 頑張れよ!
え?なんで母さんアイアンクローで引きずるの
え?キュレネも手伝うの?なんで?キャッ!お兄ちゃんのお腹を臭わないで!
父さん……父さ──ん!目線が合ってるでしょ? なんで外に行くの?肌寒いよ?半袖だよね?
なんだこれ!なんだこれ!!
☆★
「ワシまだ6歳ぞ!」
パシーンと胡座をかいて自分の膝を叩く。
「アンタね、あんなむさ苦しいオッさんに紛れて難しい図面を描いているのに6歳を盾にするんじゃないわよ」
…… はぁー?
心底呆れた顔で母さんを見る…… おやおや?真顔で青筋立ててらっしゃる。
…… 面白いからちょっとこの顔で見といたろ
キュレネはなんか申し訳なさそうにしてるし可愛いから許す。
「問題はこの年増だな…… 」
「あ"ぁん?」
しまった口をワザとすべらしたらヤンキーみたいに凄んできたYO !あんた母親だRO!
「…… …… …… 3、2、いー」
「いやなんでもありません。言い間違いですごめんなさい」
怖いなー怖いなー。
「お兄ちゃん仕方ないよカリスト様とのお約束でしょ? 私はカリスト様との連絡はイヤだけど…… 」
そう、陶器ドームの時に王都に強制召喚されるのを逃れる為にカリスト様といくつかの約束をしたのだ。
・どのように訓練の成果があるか
・どのような発明をしているか
それを書簡に認めお菓子と共に王都のカリスト様に送る事。出来れば新作のお菓子を。
なんというか、期待しすぎじゃないですかね?
あ!ボク遊んでいて忘れてたぁ〜!って惚ける予定だったけど、権力者の怖さを冒険者時代にしっている両親が涙ながらにカリスト様に従う事を頼んできた。
うっわ…… と声に出たよ。
もう一度言うね、ボク6歳児だよ?
…… 伝使があの毒味さんだったので新作のお菓子とか変な約束の下りは本当か怪しいが、まぁ媚を売るに越した事はない。
そうか秋か…… 確かにカリスト様に何か送らなきゃな……
キュレネを撫でながら胡座を外し立ち上がる。
…… あれ?尻が痛い?もしかして今生でも痔になるのか?
はぁ…… ストレス溜まりすぎだわ。
☆★
「ではアップルクランブルでも作るかね…… 」
顳顬に指を当てて[記憶ファイル]を開きながら考える。
王都まで輸送に時間がかかる。
氷魔法で冷やした箱に入れても、まだ暖かい時期の秋の道中でクリーム系は腐るし無理だろうな……
この星の素材でも作れるのはこれかな?バニラエッセンスはないから、臭い付けにラム酒に漬けたドライフルーツも混ぜよう。
このお菓子は日本の有名ドーナツ屋で似たような物があってよく孫も食べていたなぁ……
「シノ…… たまにアンタ孫がいる爺さんの顔をするわね」
どんな顔だよ? 仏顔かよ? ほっとけ!
話が逸れたアップルクランブルだちくしょう。
簡単に言うとザクザク砂糖いっぱいリンゴ (もどき)の上にケーキやクッキーをポロポロにして乗せて焼くという、地球の英国で作られたお菓子だ。
"焼いてサクサクしたリンゴとクッキーが甘くて香ばしくてコーヒーにも紅茶にも合いますね!"と太ったお菓子作り特番のテレビ番組の進行役が言っていた[記憶]を取り出した。
作り出したら、物作りが好きな俺は楽しくなってくる。でも、作る過程で母さんが段々と前のめりになってきてウザイ。
「太るよ?」
「ぁ"あ"ぁん?」
もーやだーこの母さん!笑。
作り終わったお菓子、アップルクランブルを手早く包み中に入れて、長時間の保存に対応できるように氷魔法で木箱をガチガチひ凍らせてから、木箱の中にアップルクランブルを置く。
そこに添えるように手短に手紙を書いて入れて、はい!郵送!
王都の貴族様への手紙だから優先的に輸送してくれるだろう…… 大丈夫だよね?腐っていたら毒と見做されて死刑とか嫌だよ?
こういうドキドキがあるから口に入る物を送るのが嫌いなんだよなぁ……
ちなみに俺が手紙を書いている隙に母さんとキュレネが家族用に作ったアップルクランブルを全て平らげていた。
ほらほら父さん悲しい顔をしないで……
アップルクランブルはカリスト様の茶会にて出され大好評となる。
どのシェフが作ったかと詰め寄られ大変困ったと手紙が届いた。作ったものが評価されて、えへへへかなり嬉しい。
──────そこからは工業の作業一本で進める、毎日毎日、鉄の加工と機構の計算とエラーの繰り返しだった蒸気機関は冬の半ばには形になり出していた。
そりゃあ図面があるんだもん正解に向かうだけだから気分は常に前向き。ポジティブで正解がある物作りは楽しくていけない。
まぁ…… とにかく作り続けたんだよ。この新しい造機の作成は、この星の文明をグッと前に進ませる事ができた瞬間だった。




