こわいホントこわい!
翌日のめちゃくちゃ早朝、もう午前6時とかの時間!
キュレネに見つかる前に瞬間移動を数回繰り返し陶器のドーム近くまで到着した。
やれやれキュレネったら最近は本当にベッタリで…… 布団にまで潜り込もうとするんだもんな…… でも、それはそれで孫が小さい頃を思い出す。立っちが始まった頃とかベッタリくっついてくれたなぁ……
「こんな太陽も出てない早朝なんだから流石に誰もいないなだろう。とっととやっちまうかね…… 」
なんでこんな早朝に来たのか。それは陶器ドームを早々に壊しておこうと考えたからだ!跡形も無くな!
「しかし、この陶器のドームを残しておいて失敗したなぁ…… 」
そう!さんはい!『粉々に潰してしまえば惚ける事が出来るかな?作戦』だ!みんな合わせくれてありがとう!
掃除の作業は簡単です。ぐっと力を込めて念動力を発動する。
念動力で大きな手をイメージして陶器ドームを上からバリバリと押し潰す!
…… 施工したら粗が目立つなぁ…… 焼きがまだ甘いのか陶器ドームは簡単に割れていく。次に作る時は土をもっと厚くして焼の時間を延ばそう。
バリバリ…… !
だいたい2メートルちょいのドームは音をたてて潰れていく。
…… そして、破片になり潰れた陶器ドームの向こうにいるカリスト様と目が合った。
おい!いたのかよ! 早朝に頑張り過ぎだろ貴族!
「あー」
言葉にならない声を出した俺に、微笑みながらカリスト様は言う
「おはようございます」
うん、挨拶ね!大切、育ちがいい!
しかし、これはあかんやつやな!バレバレを通り越して力を示してしもうとるがな!
☆★
「えー前日から野営していたんですかー?凄いっすねー?タフですねー?」
もう、どーにでもなれと砕けた言葉で話す。人、これを破れかぶれと言う。
あ、よく見ると少し離れた所に簡易な三角テントが張られているなぁ…… あそこで野宿したのか。早朝の薄暗い環境だから見落としたわ。
せめて魔力探索しとけば良かったわ……
ていうか野宿とか本当に貴族なのか?
そんなネガティブで自暴自棄な螺旋を下る中、クスクスと笑う声で顔を上げる。
カリスト様ったら穏やかに笑って……
悔しい!負けた気分!ドッキリだ〜いせいこ〜う!
カリスト様の笑顔と太陽が鈍い光を差す風景になんか気分が良くなる。
朝食でも食べよっか。そう思って紅茶とバケットのセットを、持って来ていた手持ちの籠から取り出す。
ついでに地面にピクニック麻敷も敷いちゃお。
「あ〜、粗茶ですが…… 貴族様のお口に合いますかどうか…… ?あ!」
しまった、貴族の御令嬢なんだし椅子や机が要るよな?焦りながらどうするか考えていると、上品に俺が敷いた麻敷に座り紅茶を飲み出した。
「ソチャデスガという飲み物ですか? 昨日、家で頂いた物ですね、ああ美味しい…… 」
勘違いさせたが…… まあ置いておこう。面白いし。
ちゃんとカップと食事を2つ持ってきていたのは、キュレネが起きてきて一緒に来る可能性があったから昨日から用意していたんだ。もちろん飲食物は朝から用意したよ!
「昨日より…… 少し甘さが足りないような」
「あ、すみません。砂糖は自由にどうぞ」
素焼きの砂糖入れを差し出すとカリスト様ニンマリ。
え?あ!あ!あぁぁ…… 砂糖をそんなにじゃぶじゃぶ入れて!?
それじゃあ美味しくなくなる…… 美味しそうにしているだと!?
どの世界でも甘党はいるもんだなと感心しているとカリスト様が肩をすくめて笑う。
「落ち着きますね」
「…… あぁ」
と普通に答えてしまった…… いかんよ!貴族よ!?
「ふふふ…… 不思議な子ですね」
「気味が悪いの間違いでは?」
もういいや本当に普通に話そうっと!
☆★
「なるほどではご自身の力はもう少し伏せておきたいという事ですか?」
持ってきたバケットを2人でもっちゃもちゃ食べながら会話は続く…… もっちゃもっちゃは俺な!カリスト様食事音がしない。マナーって凄い。
「そうなんだよね…… 魔物と戦う意志はあるんだけどホラまだ子供だし」
腕をぐいっと曲げて力こぶを作る。しかし俺の腕って細いな…… ゴボウ…… ネギ…… ?ネギみたいに細いな……
三角座りで俺の力こぶに近づくカリスト様。
あらいい匂いがする。ふわっときた。
「たしかに接近されたら終わりですが、それは私もですよ?」
「ホラそこは護衛の方がいるし」
肉の盾である騎士がいる貴族と、我々一般人では大きい違いがあるよね?
「では12歳になったら冒険者か国軍に入るという事で良いですか?」
めっちゃ見つめてくる。え?そんな事は言ってませんよ?
──────────ごりっ……
ちなみに陶器ドームを壊した後に全属性魔法は披露した。
どこまでの事実を伝えるか?それを考えた時、そこは"超能力を絶対に隠す"の一択だった。
全属性魔法を使えるという大きいサプライズで教えると脅威となる超能力という機密情報を隠したのだ。
もちろん『あれー?全属性魔法を教える必要があったのか?』とすぐに後悔した。テンパっている人間は視野が狭くなる。オレ、ソレヲ、マナンダ。
「あの全属性魔法とか御伽噺の話なので野に埋もれるのは…… 」
「分かっています魔物との戦いに将来的には加わるので安心して下さい!」
可愛い顔が近づき顔が赤くなってしまう。
心は爺さんだが体は子供だ。可愛い子に寄られたら弱いって……
──────────ごりりりっ…… !
「あの…… あれは、その…… 無視して良いのですか?」
「うん〜いや〜どうなんだろう?…… でも、なんか怖いので見ないフリをしよう」
さっきからゴリゴリ音がなっているのは、離れた所からキュレネが身体強化の魔法を使い、木を指で削ってる音だ。
すごく、すごくですね、睨んできているわけです。
ウチの妹、呪われてるとかじゃないですよね?
顔なんて真っ赤…… 朝抜け出して怒ってるのか?
怖いので目線は合わせないよう目の端でとらえているけど本当に怖い。本当に怖い。
あれ〜?キュレネどうした!?
☆★
お兄ちゃんがいない!
朝起きていつもの寝顔を見る為に兄ちゃんの部屋に行ったら…… 早朝なのにお兄ちゃんがいなかった!
くんかくんか臭わないと、私の朝の目覚めが悪くなるのに!
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんどこ?
そういえば昨日、貴族様と会ってからソワソワしていたわ!
そんな…… 私がいるのに!(絶望)
あーお兄ちゃんどこー?
部屋の中を熊みたいにウロウロする私。お兄ちゃんに見せられないわ。でも貴族様と…… 会っていたりしたら…… ギリリ…… あ、お母さんみたいに歯軋りしちゃった!ふふふ。
あ!そういえば昨夜、お兄ちゃんは寝る前に陶器ドームを壊してとかブツブツ言ってたわね…… 絶対に確認しに行かないといけないと私の心が騒ぐわ!
この予感の的中率は凄いから!絶対に行かなきゃ!
お兄ちゃんに教えてもらった属性とか関係がない純粋な魔力を使って…… 身体強化!よし、ちゃんと魔法で巡らせて……
そういえばマイムマイム訓練最近してくれないわ…… グスン。少し涙目になりながら家から駆け出す。
身体強化は本当に凄いもうすぐで陶器ドームに到着する。
トロスの町で私を聖女とか持ち上げている大人がいたけどお兄ちゃんの方が何百倍も凄いわ。私が聖女ならお兄ちゃんは聖人よね!
約束だからお兄ちゃんの本当の強さとか人には言わないけ…… ど……?ビキビキビキ…… あ、なんか私キレそう?
「あれは貴族の…… 何でお兄ちゃんと仲良く話してるの?」
お兄ちゃんが隠れて可愛い子と話している場面を見るとたまらなく嫌になる。
もう…… 隠れている木を指でぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり…… ほじくるぐらいに。
早くお兄ちゃんこっちむいて…… !
早くお兄ちゃんこっちむいて…… !
早くお兄ちゃんこっちむいてくれたら割り込むから…… うふふ。
でも、お兄ちゃんと貴族様が仲良さそうに手を振って別れるまでお兄ちゃんは私に気付いてくれなかった。
もう!家に帰ったら問い詰めて一日中一緒にいてやるんだから!抱きしめてくれないとダメなんだから!




