王都から村へ!
早朝に馬車五台とそれを守り固める護衛の兵隊の一団が村に到着した。
馬車は箱馬車というもので小さい窓はあるが中の様子は窺い知れないようになっていて、その箱馬車のボディーには紋章が描かれていた。
「うわ貴族様かよ」
ある村人がポツリとつぶやく。
この国で紋章がつくのはそれなりの身分の者でないといけない。それと、偽り紋章を勝手に使うと死罪となる。
シノは人に見つからないように上空で超能力を使って留まり、箱馬車の行軍を見下ろしていた。
神様との約束で魔物との闘いは決定付けられているが本格的な戦闘には肉体的にまだまだ早い。体と魔力を鍛える時期だから、面倒臭さ100%の権力者との関わり事はしたくない。
「まったく面倒な事だわなぁ…… 」
☆★
「あれは…」
シノーンが見下ろす箱馬車に乗る少女は、この任務に疲れを感じながら澄んだ夏空を眺めていた。
───私達の馬車を人?が見下ろしている?
その時、丁度シノーンは馬車をさらに詳しく観察する為に少し滞空位置を下げていた。シノーンに見えるという事は逆もまた然り。
少女は自分の目に魔力を注力して、空中に浮かび上がる人の周りの魔素がどうなっているか、それを確認して眉を顰めた。
「おかしい…空を飛ぶ魔法なんて昔話しか聞いたことないし、あの飛んでいる人に魔素の流れを感じない?」
馬車の少女は何度も瞬きしながら上空を見上げる。
「お嬢様どうされました?空なんかじっと見て」
車中に控えていた熟年の女性が話しかけると少女はハッとして女性に振り返る。
「ええ、あそこに人が……」
もうその時には、少女が差し向けた先には青い空しかなかった。
「人?」
「いえ、何かの見間違えです。それより滞在地に着いたようですね降りる準備をしましょう」
そう誤魔化しながら唇に指を当てて考える…… あれは絶対に人だったわ…この村には何かあると。
そう思うと楽しみが出来たと退屈な気持ちはなくなり少女は薄く笑顔になった。
☆★
とりあえず面倒事とは距離をとるに限ると思いながら、俺はキュレネを連れては家から瞬間移動を繰り返して森に到着した。
瞬間移動を長距離移動に使ってないのは、人間の体ではあまりに長い距離を飛べないからだ。
超能力の瞬間移動と言ってるけど、学生時代に図書館の本を漁って得た知識と、自分がもつ能力を照らし合わせて分かった事は、俺の瞬間移動はSFの亜空間ワープに近い事をしている…… みたいだ…… おそらく。
自信はないんだよ。だって前例がないんだから。
瞬間移動の運航概要は、めっちゃスピード上げて亜空間に入る。そこで一瞬足をついてジャンプするとテレポートが完成する。
距離を出そうとしたら肉体が持たない。亜空間は時間や重力がおかしいのか、少し長く距離をジャンプすると足を骨折したりする。
これは実験により経験済みなのさ!さらに長距離となると、おそらく俺の体はもうグチャグチャになると思う。
瞬間移動が成功しているのは念動力で体の周りの空間を固定しているからだ。
でもワープだ!光速の何十倍とかメチャクチャな事をしている。
地球時代を含めて瞬間移動は一人でやるのが精一杯だった。しかし、魔法のある世界では魔力をさらに補助に使い身体強化が出来るので、キュレネと俺という体積の少ない子供2人までなら瞬間移動がが出来るようになった。
「お兄ちゃんのテレポートはずるい」
キュレネはいつも瞬間移動したらこの能力を羨ましがる。
「ははっ!キュレネ、赤くなって怒っても可愛いだけだぞ?」
…… 妹っていいな……いや妹よくないわ!
転生前にいた妹は酷かった。蝶野時代の妹だよ!そこは間違えないで!
本当に超能力しか調べない俺を早くから見限って冷たい目で見て来たからな。
いつもサイキックメーン!と馬鹿にしてきていたな…… hip-hopの人みたいにメーンメーンと言ってくるの止めなかったなアイツ。くそっ。静かに超能力の本ばっか読んでただけなのに!
あれだ妹が可愛いんじゃない。キュレネが妹だから可愛いんだな。
「かわいいとか…ありがとう」
モジモジとキュレネがはにかみながらお礼を言ってくる。よし!いい子いい子しといたろ。
さて今日も魔法の訓練だ!




