最初の町で早速七つの大罪の居場所を引き当てちゃう話
程よい気温、天気は晴れ、穏やかな空を魔王は飛んでいく。自身が炎のように燃えながら猛スピードで。
「熱くもなく、魔力の類の消費も感じない……便利だな、このスキルは」
程なく、大きな町が見えてくる。高層建築物のある都会といった感じではなく、商店街等が有り活気付いてる感じの町だった。
入口付近へと降り立つと門番の二人が敬礼する。門番の前に並んでいた人間達も頭を下げながら列を譲る。
「……?何故譲る?俺は並ぶ、譲る必要はない」
「いえ……その……その身なり、大悪魔様に親しい悪魔様とお見受け致します……。普段の感謝の意として、お譲りしたいのです」
「……成る程、ならば無下には出来ぬか。何かあれば俺が守ろう」
「感謝致します」
人間達から感謝されながら門を通ると初めての町。周りの人間達から会釈をされまくり若干の居心地の悪さも感じながら歩いていく。感謝されるのは悪くないんだが未だ何もしていないからな……。
活気のある商店街を歩く。よくよく考えるとこの世界の金銭を所持していないんだが……。
バサッ――。
大きな十字路に出た時、風に靡く白いマントの音でそちらを向くと、少女と視線が絡む。
「――」
「――」
互いに刻が止まったような感覚。少女は白髪のサイドテールに黄金の十字架のような髪飾りを着けている。眼はやや吊り目の切れ長で三白眼、瞳はルチルクォーツのよう。睨まれているみたいだが目付きの所為だと分かる。小さくて分かりづらいが瞳がアイネに似ているのと服装が人間とは違う、悪魔だと直感する。
少女は男の右眼を見ていた。何年何十年何百年と会っていない同族と同じ瞳を。悪魔で同じ瞳を持つ者は血筋であっても双子であっても存在しない。眼球を抉り出し埋め込むのは禁術……。男から敵意は感じないものの警戒を強める。
「……あなた、アイネを殺したの?」
「!いや、俺は――ッ!!」
ブゥゥゥゥン――!!
魔王がジェスチャーを交え答える為に右手を僅かに動かそうした瞬間、右手首を黄金の光が十字に貫く――!!痛みはないが空中に縫い付けられたかのように一切動かせない!!
「……コレは。待て、誤解だ。俺は魔お――」
ブゥゥゥゥン――!!
首の後ろに出現した十字は魔王の項を貫き地面へ突き刺さり、後ろの一文字が魔王へ迫ると魔王の頭を地面へ着けさせ地面が抉れる!!手首と首が固定され、喉も貫かれていて声も出せない――!!
周りの人間達は異変に気付き既に距離を取っていた。
「悪いけど私はアイネみたいに甘くないから」
ブゥゥゥゥン――!
更に肩、肘、膝と次々に十字の光で固定していく。
「言い分なら後で聞いてあげ――」
『落ち着け』
「――!……念話……?」
アイネは何も告げていなかったが念話は高位の悪魔にしか使えない特殊な能力。男が高位の悪魔と判明しても少女は警戒を緩めない。
『……敵意は無いが、俺の力はお前と人間に誇示しておく必要が有るみたいだな』
「何を言って――っ!?」
魔王の身体がスフェーンの炎を纏い燃え上がる。圧倒的なオーラ、身体を固定していた光の十字が燃え上がる。魔王から出る炎は勢いを増し凄まじい音と衝撃と共に炎の柱となり空を裂く。
炎の柱から人影が少女へと近付いていく。炎から出た男は十字の光に貫かれているが光が徐々に崩壊していく。
魔王の力が異常な訳ではない。生物的に主従の関係である魔王相手に、大悪魔である少女の拘束が万全では無かった。十字の光が解かれ壊された事で、名乗るまでもなく少女は男が魔王であると確信した。
「……まさか魔王とは。失礼した、謝罪する。私はキョウモ=デウス・ルチル・クォーツ」
アイネと違い敬語は一切使う気は無さそうだ。
「キョウモデウス……もしや『色欲』のアスモデウスか?」
自分の記憶は一切合切欠如してるのにこういう知識だけは残ってるんだよな……。
「……私が色欲?セクハラ?魔王も所詮男か……サイテー……」
白のマントで自らの身体を隠すように包みながらルチルは目線を逸らした。
「いや……申し訳ない……」
「冗談はさておき、アスモ=デウスは私の姉。……魔王が姉に何の用で?」
「…………。打倒天使を掲げ奴等を殲滅するつもりだ。その為には町や村の防衛、悪魔や人間達の統率は不可欠。故に七つの大罪と大悪魔を集めている。ルチルと姉にも来てほしい」
「……突然の名前呼びで距離を一気に詰めて来てる……」
思考は充分色欲じゃねーか、等とは口が裂けても言えない訳で。
「それとアイネは生きている。眼は勝手にやられた。俺は無関係だ」
「……男ってみんなそう言うよね」
「……」
「初対面の魔王から言い寄られて私はどうしたら……」
「……姉は何処にいる?」
「さぁ?魔王と同じ色欲の塊だから、今頃男でも食べてるんじゃない?まぁ、この町には居ると思うけど」
「そうか……ならゆっくり探すとしよう」
ふと周りを見渡すと距離を取っていた人間達が近付いて来ており、新たな魔王の存在を知り歓喜していた。
「お前達はこの魔王が守ると誓おう!!我の存在を広めておけ!!」
ひび割れんばかりの歓声!!女性の黄色い声もちらほらと。
「……魔王、本当にいやらしい」
「ルチルの思考回路がいやらしいだけだろうに……」
「…………」
じっと見詰めてくるルチル。不思議そうに見詰め返していると――
「魔王は本当に……節操がない」
ブゥゥゥゥン――!!
魔王の左眼を光が貫く。左眼の視界は無くなり頭も動かせない。
「……お仕置き」
近付き背伸びをすると――。
――ちゅっ。
「――!?」
唇に柔らかい感触、ルチルが離れると左眼の光が消えていく。
「な、何を――」
「何をしてるんですかーーーーーーッ!!?」
魔王の左眼が突如燃え上がると雷を伴いながらアイネが飛び出してきた。
「魔王様!?アイネとも未だなのに何してるんですか!?見えなかったけど音聞こえてましたよ!?」
「うるさいのが来た……」
「ローズの妹が何魔王様に手を出してるんですか!?」
「『色欲』の姉を持つ妹だからこそ、かな」
「………………成る程」
納得するんかい……。
「……お姉ちゃん?」
声をする方を向くとレモン色の髪をした少女が立っていた。
「レモン。来ていたのか。姉さんが何処に居るか知って――」
「ルチルお姉ちゃん!こんな公共の場所でキスなんてしちゃダメです!反省して下さい!」
「……ごめん」
あからさまにヘコんでるルチルを尻目にレモンは魔王へ片膝を着き挨拶をする。
「姉が大変失礼しました。私はキノウモ=デウス・レモン・クォーツと申します。姉の事はお許し下さい……」
「あぁ、気にするな。俺は大丈夫だ」
「そうだぞレモン、むしろ魔王は喜んで――」
レモンが後ろを振り向くとルチルの表情は怯えに変わる。ルチルの後ろに居た人間達までも。……一体どんな表情を?
「……『色欲』のローズお姉ちゃんの居場所は把握してませんが私もお手伝い致します」
ルチルより小さいのにしっかりしてる……。
「魔王、今失礼な事考えただろ……」
「正解」
「…………ふん」
大悪魔って直ぐ拗ねるな……。
「そうだ、アイネ。金が無いんだが……クエストみたいな報酬が出るものは無いのか?」
「有りますよー?ですが簡単なものを行うと人間達のクエストが無くなってしまうので最上位レベルのクエストを受けるしか……あ、受けなくても魔王様には――」
「いや、受けよう。困っている人間が居るからこそクエストが有るのだろう?経験は積んだ方が良いからな」
「なら私が同行する。魔王の側近として――」
「側近はアイネですけど!?」
「アイネは七つの大罪だろう。側近とは違う、幹部だ。七つの大罪は本来七ヶ所を守るべき存在。魔王の側近は私しか適任がいないんだ……」
大悪魔とは思えない会話に頭痛が痛い状態。
「お姉ちゃん達は放っておいて下さい。クエストを受けるならギルドへの登録が必要になります。ギルドへ行きましょう!」
ギルド……異世界っぽくなってきた――!!
魔王は胸躍らせていた。
設定。
キョウモ=デウス・ルチル・クォーツ
白髪に金色の十字架の髪飾りを着けている左側サイドテール。鋭いやや吊り目の三白眼。目付きは悪い。瞳は白に金色の十字のルチルクォーツ。金色の十字架をあしらった白のマントを羽織っている。中は白シャツでボタンやカフスはルチルクォーツ。ネクタイの代わりにルチルクォーツ調のデザインのリボンを蝶々結びにしている。黄金色の短めのショーツにリボンと同デザインのニーハイブーツ。ネイルはルチルクォーツ調で薬指だけ黄金色一色。七つの大罪『色欲』ローズの妹で次女。色欲では無いものの脳内ピンク。魔王からの呼び捨てを本気で好意と思っており互いにファーストキスを散らした。黄金の十字架を出現させその場に固定する能力。ルチルの意思で十字を移動させ、対象の場所の移動も可能。
キノウモ=デウス・レモン・クォーツ
レモン髪の幼い雰囲気の女の子。三つ編みおさげ。ルチルの妹だが対照的に眼は大きく瞳はレモンクォーツ。丁寧で礼儀と常識を兼ね備えた天使みたいな存在……。お姉ちゃんっ娘でローズクォーツとルチルクォーツ、レモンクォーツの三連のブローチを白シャツの胸に着けている。ルチル同様にレモン色のリボンを蝶々結び。レモン色の膝下丈のスカート、白ソックスに茶色のローファー。学生感が有る。




