念願のギルドで初のクエストを受注する話
「此処が……ギルド……!!」
この町でも一際大きな建物。高さはそれ程でもなく遠方の空から見た時には目立って居なかったが、横幅が大きく目の前で見ると中々迫力が有る。
「はい!本来だと初心者は受けられるクエストが決まっているんですが、交渉すれば何とかなる筈です!」
「そうか、頼むぞ、レモン……ちゃん」
レモンちゃん……頼りになる……。ちゃん付けするのは魔王として如何かとも思うが、呼び捨てにしてルチルの二の舞を踏む訳にはいかない。
「いいかアイネ、側近とは――」
「魔王様の一番の理解者はアイネなんです!!私以外に――」
ずっと言い合いしてる……。
「魔王様、呼び捨てでも大丈夫ですよ?私はルチルお姉ちゃんとは違うので……勘違いなんてしませんから」
満面の笑み……大悪魔じゃなくて天使じゃん……魔王、浄化されそう……。
「じゃあ入りますよ」
扉を開くとこれぞギルド!!って感じの光景が。酒場が併設され人間の冒険者達が酔っ払ってる。奥には受付が有り受付嬢が。こういうの、フィクションだと受付嬢との繋がりが出来たりするんだよな……等と思っていると背後から刺すような視線。
「魔王、両眼を光で刺していいか?」
「魔王様??レモンちゃんに任せて魔王様は此処に居ましょうね??」
「俺も行かないと登録が出来ないだろうに」
邪念を封印し受付へと歩く。ギルドへ入った瞬間から数人の受付嬢と人間の冒険者は魔王達に気付いており、特に受付嬢達は慌てて動き出していた。此方が受付に辿り着く前にギルドマスターが出迎えに来る。
「お久し振りです、ルチル様、レモン様。そして初めまして。この町、クヴァルツのギルドマスターをしております、リスタルと申します。お二人も大悪魔様とお見受け致しますが……本日はどのようなご要件で……?」
「リスタルよ。この男は魔王だ。そして私は魔王の側近になった」
「はぁ!?ルチル!?その外堀を埋めようとするの何なんですか!?そしてアイネの紹介は!?」
「なんと……!魔王様とは……お許しを……!」
リスタルは急ぎ片膝を着こうとするが魔王は片手で制す。
「人間にそのような礼儀は望まぬ」
「私達、ギルドに登録したいんです。ギルドのルール通りに一からクエストをこなしていくと他の方々のお仕事を奪ってしまうので、今ある最高難度のクエストを紹介して貰えませんか?」
「成る程……分かりました。我々としても有難い話です。それでは用意を致しますので暫しお待ちを……」
リスタルは奥へ行くと急ぎ準備を進める。
「……魔王、受付嬢と話せなくて残念だなーって顔してる」
ルチルが顔を覗き込んで来る。目付きの所為で睨んでるように見え……いや、睨まれてるな、これ。
「思っていない、お前達が居れば充分だ」
「魔王……私の事好き過ぎじゃない?流石、私のファーストキスを奪っただけはある……」
「いや、耳腐ってます!?お前『達』ですよ!!『達』!!」
「えへへ、私は凄く嬉しいですよ……?」
レモンちゃん……心のオアシスだ……。
「でも魔王、ローズ姉さんの他にも大悪魔達集めるって……私達だけじゃ満足出来てなくてハーレム作る気満々なんだよね……大悪魔全員女だよ?」
……んー、知りたくなかったかもしれない。二人でも大変なんだが?レモンちゃんみたいなオアシスが多い事を願おう……。
「お待たせしました、此方が今ある最高難度のクエストになります」
リスタルは三枚の依頼の書かれた紙をレモンへ渡す。ギルドマスターの立場から見てもアイネとルチルよりもレモンちゃんが一番しっかりして見えてるんだな……。
「んー、どうしますか?人間には難しくても私達ならどれでも出来そうかと……」
魔王は依頼書を受け取る。魔物の討伐、危険地帯での採集、そして……。
「天使族の討伐……か」
魔王は顎に手をやり暫し考える。
「因みにだが……他の冒険者達はこれらに挑む事は無いのか?」
「ありません……何れも人間には生死をかけた内容でして……」
「……分かった。三つとも受けよう」
「……!ありがとうございます!!」
リスタルが頭を下げると受付嬢達も頭を下げた。
魔物や天使の被害を受けている者には重大な任務。採集も医療や科学の進歩には必要不可欠な物。資金調達の為も有るが、平和を掴む為には必要な事。
「では早速行って来るとしよう」
「お待ち下さい、不要かと思いましたが、冒険者カードを。ルチル様とレモン様もカードはお持ちで無かったと思うので……」
「すまないな、有難く頂こう」
魔王は自身のカードを見る。……オーロラに輝いてる……絶対最後の最後に貰える一番凄いやつじゃ……?
「ありがとうございます!わー、綺麗!嬉しいです!」
レモンちゃんめっちゃ喜んでる……癒されるな。
「ありがとうございます〜!!アイネ嬉しいです〜!!」
視覚共有でレモンちゃんを見てたのがバレたらしい。此方をめっちゃチラチラ見ながらクネクネしてる……。
「感謝する。……魔王」
カードを受け取るとルチルはカードを見もせず魔王の前へと歩き出る。ネクタイを軽く掴むと自身へ引き寄せる。
「魔王は私のファーストキスを奪ったんだ。他の女に現を抜かすようなら……寝てる間に何をするか分からないぞ」
うん、本当に分からないぞ?ルチルの中では本気で俺が奪った事になってるんだな……。
「!!させません!!」
キスをしようとしてると勘違いしたのかアイネが飛んでくる。勢いあまって後ろからルチルに突撃すると衝撃で押され、魔王とルチルの唇が思いきりくっついた。
「な、な、なんでーーーーーッッッ!?!?!!?」
設定。
クヴァルツ。
長年、ローズ達三姉妹が居着いている町。長い年月を経て、三姉妹のクォーツから取ったクヴァルツの名前を冠するようになった。近隣で天使の被害は起こっているものの、クヴァルツに直接乗り込むような天使は一人も居ない。町の規模もギルドも大きめでコトを構えると天使に不利すぎる為。
リスタル。
クヴァルツのギルドマスター。国名同様にクォーツから名前を拝借している。口髭の似合うダンディな男性。ギルドマスターとしては比較的若い。
受付嬢達。
魔王は気付いていないがアイネとルチル……特にルチルの視線で魔王に一切近付けなかったし暫し見る事すらも許されなかった……。
冒険者達。
血の気の多い連中では無い為、心の底から魔王達に感謝と尊敬を抱いていた。女冒険者達は受付嬢と同じ視線を受け萎縮していた。




