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第9話 好感度百の理由

第9話 好感度百の理由


姫殿下、という言葉で思い浮かぶのは、あの森で泣いていた小さな子どもだ。


でも八年も経てば、もう子どもじゃない。


レティシアへの事情聴取のあと、俺は砦裏の見張り塔でルナと落ち合った。彼女は呆れた顔で言う。


「姫様、ずっと会いたがってたからね」

「だからって今?」

「今だから。戦争を動かしてる人たちが、もう隠す気なくなってる」


ルナの案内で、俺は砦外れの旧礼拝堂へ行った。


そこにいた少女は、静かな青い瞳をしていた。人間なら上流貴族に見えるような整った姿なのに、額には小さな黒い角がある。


【好感度 100】


初めて見る数値だった。


「久しぶり、カイ」


柔らかい声で言われて、八年前の面影が重なる。


「ミア……?」

「うん。あの時の泣き虫」


魔王の娘ミアは、少し恥ずかしそうに笑った。


彼女は語った。迷子になった自分を俺が助けたこと。渡したパンを、あの日から“人間にも優しい者がいる証”として持ち歩いていたこと。そしてその話が魔王軍の一部で広まり、俺は知らぬ間に“不可侵対象”になっていたこと。


「父上は戦争を終わらせたい。でも人間側にも魔族側にも、それを嫌がる人がいる」


俺は黙って聞くしかない。


「だからお願い。味方になって、じゃない」


ミアは一歩近づいた。


「ただ、真実を見てほしい」


敵の姫にそんなことを言われて、うなずけるほど俺は強くない。


でも、彼女の好感度100は、少なくとも嘘ではないのだと思った。

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