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第8話 人類最強、胃痛になる

第8話 人類最強、胃痛になる


包囲していたのは、王都直轄の精鋭部隊だった。


先頭に立つ女は、銀の鎧を月明かりに光らせながら名乗った。


「王国特務騎士団団長、レティシア・クロフォード。魔族との内通容疑により、辺境砦指揮官バルド以下を拘束します」


いきなり話が大きすぎる。


レティシアは“人類最強”の異名を持つ剣士だった。王都育ちの俺でも名前を知っている。


彼女の視線が俺に止まる。


「あなたがカイね。勇者レオハルトから話は聞いているわ。“敵に好かれる役立たず”だとか」


喧嘩腰というより、完全に頭痛をこらえている人の顔だった。


一触即発の場面で、なぜか俺の頭上に彼女への数値は見えない。敵じゃないからだ。


その代わり、彼女の部下たちの矢先が揺れていた。誰も本気でこの場を撃ちたくないのが分かる。


「団長、攻撃命令を」

「待ちなさい」


レティシアは鋭く制し、焚き火の向こうのヴァルガスを見る。


「そっちも撃つ気はないの?」

「ない。今はな」


言葉が通じる相手同士だと、余計に状況が悪い。


結局、レティシアはその場での強硬策を取らなかった。代わりに明朝まで砦を監視し、全員の事情聴取を行うと宣言する。


解散後、彼女は俺を呼び止めた。


「あなたのせいで、私の仕事がとても面倒になったわ」

「すみません」

「謝らなくていい。明日、全部話して」


胃が痛そうなのは俺だけじゃなかった。


そして翌朝、ルナが密かに届けてきた手紙には、さらに悪い知らせが書かれていた。


『姫殿下が、君に会いたがっている』

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