第7話 最前線の晩飯会
第7話 最前線の晩飯会
その日の話し合いは、交渉というより異常事態の確認だった。
門を閉めたまま、砦の上と門外で言葉を交わす。ヴァルガスは終始礼儀正しく、挑発も恫喝も一切しなかった。代わりに、ひとつだけ提案を持ってきた。
「今夜だけ、相互不可侵の場を設けたい」
砦の空気が凍る。エレナが即座に却下しようとしたが、バルドが手で止めた。
「理由は」
「そちらの補給路を狙った者が、我々の中にもいる可能性がある。互いに情報を照らし合わせたい」
それは人間側にも同じ事情がある。
迷った末、バルドは奇妙な条件を出した。砦の外の空き地で、双方十名以下、武器を置き、食事を持参すること。
俺は当然のように参加者に入れられた。
夜。焚き火を挟んで、王国兵と魔族兵が向かい合って座る光景は、夢みたいに現実感がなかった。
ヴァルガスが持ってきたのは香辛料の効いた肉煮込みで、ラッセルはそれを一口食べて真顔になった。
「うまいな」
その一言で空気が少し緩む。
ルナは俺の隣に座り、ひそひそ声で言った。
「ほらね。敵って決めつけると損するでしょ」
返す言葉がない。
ただ、穏やかな時間は長く続かなかった。見張りが駆け込んできて、王国軍の別部隊がこの会合を包囲しつつあると知らせたのだ。
「裏切りだ!」
誰かが叫ぶ。
けれどヴァルガスは剣に手をかけず、代わりに俺を見た。
【好感度 93】
この場で戦えば、停戦どころか全面衝突になる。
俺は人生で一番喉が渇くのを感じながら、立ち上がった。




