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第6話 敵将は礼儀正しい

第6話 敵将は礼儀正しい


結局、俺は砦長バルドに紙片を渡した。


信じてもらえるとは思っていなかった。案の定、副官のエレナは眉をつり上げる。


「魔族の情報をそのまま持ち込んだの?」

「裏を取るべきです。でも、もし本当なら補給隊が危ない」


バルドは黙って紙を読み、地図に目を落とした。


「……この襲撃地点、妙だな」


王国軍が普段使わない裏道まで正確に書かれていた。内部の人間でなければ分からない。


半信半疑のまま、砦は進路を変更した。すると翌日、予定されていた旧街道で本当に爆薬が仕掛けられていたのが見つかった。


砦の空気が一変する。


「お前、ほんとに何者だ」

「下っ端兵です」


それ以上でも以下でもないのに、誰もそんな顔をしない。


その夜、門の外に再び使者が来た。今度はオークではなく、黒い軍装を着た大柄な魔族の男だった。


角は赤く、背筋は剣みたいに真っすぐだ。


【好感度 91】


高い。十分に高い。


「私は魔王軍辺境第三軍将、ヴァルガス」


男は門の外から深く一礼した。


「先日の件、助力に感謝する。礼を述べに来た」


砦の上で兵たちが凍りつく。


敵将が礼を言いに来た。意味が分からない。


しかもヴァルガスは、俺に向かってだけ丁寧に言葉を続けた。


「八年前、姫殿下を導いた恩人に、無礼はできない」


隣のエレナが頭を抱えた。


「……カイ。あなた、いったいどこまで厄介なの」


俺が聞きたい。

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