表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/20

第5話 魔王軍の伝令少女

第5話 魔王軍の伝令少女


少女は自分をルナと名乗った。


見た目は十四、五歳。だが角の形も、夜目の利きそうな金色の瞳も、人間ではないことをはっきり示している。


「声、出さないで。今日は伝えに来ただけだから」


倉庫裏の影で、ルナは指を口元に当てた。


「そのハンカチ、どうして」

「八年前、森で迷って泣いてた子にくれたでしょ」


思い出した。


村の裏山で薬草を採っていた時、ぼろぼろの服を着た小さな子どもを見つけたことがある。泣いていたから、持っていたパンとハンカチを渡して、街道まで案内した。


あれが、魔族だったのか。


「あの時、うちのお姫様を助けたのが君」


ルナは笑った。


「それでみんな知ってる。人間の中に、ひとりだけ“手を出すな”って言われてる子がいるって」


頭が痛くなってきた。


つまり、敵の好感度が高い理由は俺のスキルそのものだけじゃない。俺が知らないところで、魔王軍に顔が割れていたのだ。


「じゃあ、あのゴブリンも……オークも……」

「たぶんそう。特にゴブリンたちはすぐ噂を広げるから」


笑い事じゃない。


「なんで今さら接触してきた」


ルナは少しだけ表情を引き締めた。


「人間側に、停戦を壊したい人がいる。うちも同じ。だから本格的に戦争が再開する前に、君に伝えておきたかった」


辺境砦の外で見たオークの白旗が頭をよぎる。


「証拠は?」


ルナは紙片を差し出した。そこには明日の補給路襲撃計画が、人間側の符丁付きで書かれていた。


「これ、砦に伝えて。信じるかどうかはそっち次第」


言い終えると、ルナは闇に溶けるように消えた。


残された俺は、紙片とハンカチを握りしめたまま立ち尽くす。


敵を信じるのか。

味方を疑うのか。


どっちを選んでも、明日からの俺の立場は確実に終わる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ