第4話 辺境砦の勘違い
第4話 辺境砦の勘違い
砦長バルドは、傷だらけの大男だった。
分厚い机の向こうで腕を組み、俺をじろりと見る。部屋には副官の女騎士エレナと、補給係のラッセルまでいた。嫌な予感しかしない。
「お前、魔族語が使えるのか」
第一声がそれだった。
「使えません」
「ではなぜオークが白旗を振った」
「分かりません」
本当に分からないから困る。
俺がスキルのことを話すと、三人とも沈黙した。信じていない顔、というより、判断に困っている顔だ。
「敵の……好感度?」
「はい」
「お前、酒でも飲んでるのか」
エレナに真顔で言われた。
結局、信じてもらえたわけじゃない。だが、今日のオークの行動が異常だったのは事実だ。砦長は顎をさすり、低くうなった。
「まあいい。しばらく外周の補給と伝令に同行しろ。敵がまた妙な動きをしたら報告しろ」
処罰ではなく任務になっただけ、少しだけましだ。
部屋を出ると、ラッセルが小声で言った。
「新入り。お前、とんでもない厄介事の匂いがするぞ」
俺もそう思う。
その夜、倉庫の裏で足音がした。振り向くと、薄い外套をかぶった小柄な影が立っている。
月明かりに照らされた顔は、人間の少女に見えた。だけど額の上には、小さな角がふたつあった。
【好感度 96】
まただ。
少女は俺を見るなり、ほっとしたように肩を落とした。
「やっと見つけた。カイ、だよね?」
俺の名前を知っている。
そして彼女が差し出してきたのは、幼い頃に俺がなくしたはずの青い布のハンカチだった。




