表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

第3話 好感度九十八のオーク

第3話 好感度九十八のオーク


辺境砦グレイナーは、王国最北の石の箱みたいな場所だった。


風は冷たく、壁は高く、配属された兵たちはみんな目が死んでいる。誰もここが栄転だなんて思っていない。


「新入りか。名前は?」


補給担当の老兵ラッセルに名前を告げると、彼は俺の荷物より先に顔を見て、ため息をついた。


「お前、王都育ちだな。ここじゃ一日で泣くぞ」


泣く暇もなく仕事を叩き込まれた。倉庫の整理、荷馬車の受け取り、食糧の帳簿付け。読み書きができる人間が少ないらしく、その点だけは歓迎された。


問題が起きたのは三日目だ。


砦の外れの見張り塔から狼煙が上がり、門が騒がしくなった。オークの斥候が近くに現れたという。


俺も荷運びの途中で巻き込まれ、門上に引っ張り出された。


荒野の向こうに、巨大な斧を担いだオークがひとり立っている。


そしてやっぱり、俺には見えた。


【好感度 98】


高すぎる。昨日会ったラッセルだって40くらいだったのに。


「弓、構え!」


隊長が叫ぶ。兵たちが一斉に弦を引いた。


その瞬間、オークは両手を上げた。ゆっくりと武器を地面に置き、胸元から白布を取り出して振る。


「待て!」


気づいたら、俺は叫んでいた。


全員の視線が刺さる。終わったと思った。


でもオークは、俺の声に合わせるように膝をついた。地面に指で何かを書く。見張りの兵が目を細める。


「……停戦?」


荒い字だったが、確かに人間語でそう書いてあった。


砦の上がざわつく。隊長は俺をにらんだ。


「お前、あいつに心当たりがあるのか」


「ありません」


本当にない。


ただ、オークは俺だけを真っすぐ見ていた。まるで再会を喜ぶ旧友みたいな目で。


その日の夕方、俺は砦長室に呼び出される。


そして辺境戦線の空気は、俺のせいで少しだけおかしくなり始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ