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第19話 人と魔族の共同戦線

第19話 人と魔族の共同戦線


ハルト防衛戦のあと、辺境の空気は完全に変わった。


人間と魔族が同じ鍋を囲んだという噂は、ありえない速さで広がっていく。王都も魔王城も、もう現場の変化を無視できなかった。


レティシアは王都へ戻り、偽勅命に関わった貴族たちの摘発に動いた。ヴァルガスとサーシャは魔王軍内の強硬派を押さえ込む。俺は――なぜか両方から連絡役に指名された。


「断れないのか、これ」

「断ったら余計に面倒になるわよ」


エレナの言う通りだった。


合同で開かれた前線会議では、王国兵と魔族兵がぎこちなく席につく。最初は険悪だったが、ラッセルが持ち込んだ干し肉と、サーシャが連れてきた猫が全部を少しだけ柔らかくした。


議題は単純だ。戦争継続派の残党をどう抑え、恒久的な停戦へつなげるか。


「象徴が必要だな」


バルドが言う。


「人間にも魔族にも偏らず、前線で信じられる顔」


全員の視線が俺に集まった。


やめてほしい。


でも逃げるには、もうあまりにも多くのものを見てしまった。


俺は深く息を吸い、言った。


「じゃあ、まずは一番小さい約束から始めましょう。次の補給日、お互いの負傷兵を交換する」


大げさな和平宣言じゃない。守れる約束をひとつずつ積む。


それが、たぶん一番壊れにくい。

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