19/20
第19話 人と魔族の共同戦線
第19話 人と魔族の共同戦線
ハルト防衛戦のあと、辺境の空気は完全に変わった。
人間と魔族が同じ鍋を囲んだという噂は、ありえない速さで広がっていく。王都も魔王城も、もう現場の変化を無視できなかった。
レティシアは王都へ戻り、偽勅命に関わった貴族たちの摘発に動いた。ヴァルガスとサーシャは魔王軍内の強硬派を押さえ込む。俺は――なぜか両方から連絡役に指名された。
「断れないのか、これ」
「断ったら余計に面倒になるわよ」
エレナの言う通りだった。
合同で開かれた前線会議では、王国兵と魔族兵がぎこちなく席につく。最初は険悪だったが、ラッセルが持ち込んだ干し肉と、サーシャが連れてきた猫が全部を少しだけ柔らかくした。
議題は単純だ。戦争継続派の残党をどう抑え、恒久的な停戦へつなげるか。
「象徴が必要だな」
バルドが言う。
「人間にも魔族にも偏らず、前線で信じられる顔」
全員の視線が俺に集まった。
やめてほしい。
でも逃げるには、もうあまりにも多くのものを見てしまった。
俺は深く息を吸い、言った。
「じゃあ、まずは一番小さい約束から始めましょう。次の補給日、お互いの負傷兵を交換する」
大げさな和平宣言じゃない。守れる約束をひとつずつ積む。
それが、たぶん一番壊れにくい。




