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第18話 魔王の娘が笑った日
第18話 魔王の娘が笑った日
魔導砲の照準は広場に集まった避難民へ向いていた。
止めるには塔まで駆け上がるしかない。俺が走ろうとした瞬間、ミアが袖をつかむ。
「今度は私が助ける」
彼女は小さな杖を掲げた。黒い魔力が風みたいに渦を巻き、砲身の魔法陣を歪ませる。
完全には止められない。けれど照準がわずかに逸れた。
その隙をレティシアが飛んだ。
塔の上、閃光。
次の瞬間、魔導砲は空へ向かって爆ぜた。
歓声とも悲鳴ともつかない声が街に広がる。立っていたレティシアが剣を振り払い、こちらを見た。
生きている。
ミアはへなへなと座り込み、そのまま俺を見上げて笑った。
「やっと、一緒に笑えた」
八年前は泣いてばかりだった少女が、今は戦場の真ん中で笑っている。
その笑顔を見た時、胸の中で何かが決まった。
敵だから、味方だからで線を引くのはもうやめよう。
守りたい相手を守る。それだけでいい。
商会私兵の残党は崩れ始め、セドリックもついに拘束された。だが黒幕はまだ上にいる。王都の貴族たちだ。
戦いは終わっていない。
むしろ、ここからが本当の始まりだった。




