第14話 魔王城の会議室
第14話 魔王城の会議室
魔王城は、思っていたよりもずっと静かな建物だった。
黒い石の廊下は整然としていて、兵たちは規律正しく動く。怒号と血の匂いに満ちた怪物の巣みたいな場所を想像していた自分が恥ずかしくなる。
通された会議室で待っていたのは、魔王アストラルその人だった。
背は高いが、威圧感を振り回すタイプではない。まず俺に向かって頭を下げたことに、レティシアが完全に顔を引きつらせた。
「娘を救ってくれた礼を、まだ言えていなかった」
王でも魔王でも、親は親らしい。
話を聞くと、魔王側も和平派と強硬派で割れていた。特に旧貴族の一派は、人間との共存を裏切りだと考えているらしい。
「人間側にも同じような者がいるようだな」
「ええ。しかも商会と軍の一部が手を組んでる可能性が高い」
レティシアが答える。ここまで来ると、もう彼女は完全に交渉役だった。
会議の途中、ヴァルガスが報告を持って戻った。ミアを運んだらしい馬車が、辺境都市ハルトへ向かったという。
王国側の都市だ。
「これ、かなり最悪では?」
俺の呟きに、全員が黙ってうなずいた。
もし魔王の娘が王国都市で死ねば、戦争は止められない。
魔王は立ち上がり、静かに命じた。
「奪還する。ただし、人間の街を焼くことは許さん」
その言葉を聞いて、俺はこの人が本当に戦争を終わらせたいのだと初めて信じた。




