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第12話 停戦一日目
第12話 停戦一日目
停戦一日目は、驚くほど静かに始まった。
朝霧の立つ平原に白旗が並び、人間側と魔族側の兵が互いに一定距離を保って立つ。矢も魔法も飛ばない戦場は、それだけで不気味だった。
俺は中央の天幕で、王国と魔王軍の補給記録を照らし合わせる仕事をしていた。読み書き係としての俺の本来の役目が、こんな形で活きるとは思わなかった。
「ここ、数字が合ってない」
魔族側の記録官が指さした帳簿には、人間側が奪われたと主張する食糧と同量の麦が、別の商会名義で人間側へ流れていた。
横流し。
しかもそれを仲介している商会は、王都の有力貴族とつながっていた。
「戦争が続くほど儲かるやつらがいるってことか」
ラッセルが吐き捨てる。
その時、外で爆音がした。
天幕を飛び出すと、停戦線の端で補給馬車が燃えている。人間兵の遺体と、魔族兵の遺体が転がっていた。
誰かがこの停戦を壊そうとしている。
しかもタイミングが良すぎる。
レティシアはすぐに周囲を封鎖し、ヴァルガスは部下に追跡を命じた。俺は焼け残った木箱の破片を拾い上げる。
そこには、王国軍でも魔王軍でもない紋章が焼き印されていた。
王都商会連盟。
戦場の裏で金を吸うやつらの匂いが、いよいよ濃くなってきた。




