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【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


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283話 アステカの英雄降臨

それにしても、よくもまあ1万人もの兵を集めたものだ。


周辺諸国への影響力、イスパニアは実に巧みだ。アメとムチを絶妙に使い分けているのだろう。


いち早く寝返った国には“友好国待遇”を与え、逆らった国は容赦なく“奴隷”という悲惨な境遇に突き落とす。


その惨状を見せしめにし、「従えば救われる」と刷り込む。そうなれば、選択肢はただ一つ――待遇を守るため、従順に従うことだ。


そして、その従順さを示すためには血を流せ。兵を差し出せ――というわけだ。


(もっとも、“英雄誕生”はアステカの民にとって世紀の大イベントだ。兵が多い分には、こちらとしてはむしろありがたいがな……!)


***

軍の前衛が、防御壁からおよそ100m手前で行軍を止めた。

最前列には周辺国兵、その背後に徴募兵、さらにその後ろに正規軍と騎馬隊が整然と並ぶ。


正規軍の兵士たちは火縄銃を手に構え、総督の号令を今かと待ち構えている。

徴募兵の背後では、4門の大砲が据え付けられ、砲撃の準備が着々と進んでいた。


……イスパニア軍・周辺国兵……


兵士たちの間に、緊張を帯びた小声が飛び交う。

「……あの壁、見ろ。あんなもん、登れるのか?」

「突撃一番手は、どうせ俺たちだろ……!」

「“忠誠を示せ”ってことだろうさ。逆らえば――奴隷行きだ!」


***


……日本軍・俺……


イスパニア軍は、壁を砲撃して我らの士気を揺さぶり、その隙に周辺国の兵を一斉に突撃させ――一気に決着をつけるつもりだろうな。


(大砲の準備が……終わりそうだな。ならば、撃たれる前にこちらから始めるか……!)


俺は深く息を吸い、周囲の味方を見渡した。


「さあ、始めるぞ……祐長……始めてくれ!」


「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」

「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」


工藤祐長が戦場で鍛えた太い声を響かせる。とくに山の上に身を隠しているアステカの民に届くよう、力の限り叫ぶ。

戦い前の静かな戦場に響き渡る。


イスパニア軍の兵たちは、きょとんとした表情でこちらを見ている。

「なぜ今さら、クアウテモックを?」とでも言いたげだ。


だが、奴らの理解などどうでもいい。

(この呼びかけは、アステカの民の心に火を灯すためのものだ――)


チュィルトリが、無言でクロスボウに榴弾を装填する。


何が始まるのか……

すべてのアステカ人の視線が集まる。


ゆっくりと狙いを定めると、整列する周辺国兵の中央へと撃ち放った。

すべてのアステカ人の視線が、その矢の行方に釘付けとなる。


大きな放物線を描いて、榴弾が敵陣に飛び込んでいく――


ズドーン!


爆発が巻き起こり、数人の兵士が空中へ吹き飛ぶ! 

周辺国兵の列が崩れはじめるも、指揮官らしき男が必死に怒鳴って隊列を立て直そうとしている。


「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」

「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」


祐長が再び叫ぶ。熱のこもった声に、山の上の民たちがざわめき始める。


「見たか!? 敵が吹っ飛んだ……!」

「神の力だ……英雄が戻ってきたんだ……!」

「クアウテモック様が蘇った……!」


チュィルトリが再び榴弾を放つ。


ズドーン!


再び敵兵が宙を舞い、血煙と混乱の中で、隊列は大きく乱れていく。


「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」

「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」


今度は、山の上のアステカの民たちも声を揃え始めた。

ひとり、またひとり……次第にその声が大きなうねりとなって広がっていく。


「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」

「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」


祈る者、涙を流す者、叫ぶ者。崩れかけた民の心が、確かな光を見出した瞬間だった。

チュィルトリは、さらに2発の榴弾を連射する。


ズドーン! ズドーン!


恐怖と混乱に包まれた周辺国兵の中から、逃げ出す者が現れはじめる。


「逃げるな! 止まれ、隊列を保て!」

「ムリだ! あんな武器、聞いてねぇよ!」

「英雄が、英雄が戻ってきたんだ!」


山の上のアステカの民たちが総立ちになって叫ぶ声が、戦場を覆う熱気の中で響き渡る。


「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」

「クアウテモック! クアウテモック! クアウテモック!」


山の上にいる民にとっては、英雄クアウテモックが復活したと見えるはずだ。

英雄降臨だ。奇跡が起きたのだ――。

山の上の民たちが熱狂し興奮しているのが、ここからでも分かる。


熱気とエネルギーをひしひしと感じる。これが何としても必要だったのだ。

(この熱気とエネルギーで国を取り返せ……!)


「何をしている! アステカ人を勢いづかせてはならない! あの壁に向けて砲弾を撃ち込むのだ!」


総督の怒声が戦場に響いた。


「はっ、ただちに砲撃を開始させます!」


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