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【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


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273話 ハワイを目指して

1552年・冬 ――21歳


ハワイまでは、約6,400kmの長旅となる。

整備面で問題がなければ、途中のウェーク島には寄港しない予定だ。


また、なるべく石炭の消費を抑えるため、凪以外の状況では極力帆走をするよう、艦隊全体に指示してある。このペースで進めば、ハワイ到着までにおおよそ25日ほどかかる見込みだ。


この時代、長期航海では壊血病によって船員が次々と命を落とすという深刻な問題があった。原因が分からないため、壊血病は“謎の病”として恐れられていた。


そのことを光秀に相談すると、彼は即座に大量のビタミンC錠剤を生成してくれた。まったく、光秀の“薬生成スキル”には感謝しかない。


ちなみに、各国の船員たちは、それぞれが信じる民間療法や独自の持論を頑なに信じ込み、対策を講じていた。しかし、ほとんどの場合、その効果は皆無に等しかった。


ヨーロッパから脱出し、アジアに向かう長期の航海で、サラとルーシーはどうしていたのか聞いてみた――


2人とも果物が好きだったこともあり、寄港地でたっぷりと果物を食べたり、柑橘類を買い込んで船内でこまめに食べていたという。


……単純に運が良かったとしか言いようがない。

俺としては、ビタミンCの存在については、今後も秘密にしておくつもりだ。


こちらが体調万全で、相手が壊血病なら、海戦を楽に戦えるからだ。

体調万全のヨーロッパ艦隊と、真正面から海戦をするなんて……ごめんこうむる!


それにしても――航行中の船で働く海兵たちは、本当に大変だ。

目的地に到着するまで、ほぼ無休で船を動かさなければならない。


だからこそ、乗船している者全員に「すれ違うたびに、海兵へ感謝の意を伝えるように」と指示してある。

俺たちの命は、彼らの手に委ねられているのだから。


風に当たりたくなって、ふらりとデッキに出た。

ふと横を見ると、オヤジたちが酒を手に、楽しげに語り合っていた。


……懐かしいな。昔の光景に似ているな。

たしか、キャラック船で松坂から蝦夷へ向かっていたときに、同じような場面があった気がする。


オヤジたちが俺に気づき、手を振って呼んでくる。


「三蔵、ひと言だけ言わせてくれ」

「おまえが生まれてこなければ、伊賀の者たちは、何処(いずこ)とも知れぬ土地で、誇りもなく、意味もなく、ただ屍となる人生だった」


「それが今では、誇りある人生、意味ある日々を生きている。しかも飢えることもなく、こうして仲間と笑って過ごせている! 酒も飲めるしな」


「だからこそ、おまえが築き上げた“日本”という国を守るため、おまえ自身を守るために――俺たち忍びは、喜んで命を差し出す覚悟だ。それだけは忘れないでくれ」


その言葉に、胸が熱くなる。


「……ありがとうございます。皆さんにとって、守るに値する国を、俺は必ず築いてみせます」


「気負うな。おまえにならできる。我らの気持ちを伝えたかっただけだ」


そう言って、オヤジたちはまた酒をあおり、にやりと笑った。


「ところで、新イスパニア領では――また、おまえの嫁が増えるかもしれんな! 俺たちは今から楽しみで仕方ないぞ!」


「三蔵、おまえも付き合え! どこまでも続く大海原を見ながら、潮風を浴びながら飲む酒は最高だぞ。ところで……おまえ……どこまで、いつまで、(いくさ)を続けるつもりだ!」


「ポルトガルやイスパニアの国力を下げ、奴らに日本の力を認めさせるまでです。その後は外交で平和な世を保ちます」


「外交力とは、国が持つ軍事力、財力、生産力、情報力が基になります。その中の情報力とは忍者の力なのです」


「敵国の内情を調べ、敵国や自国の情報を操作する力です。つまり忍者の仕事は、この先も、ずっと、ずっと必要なのです」


「明人の忍びを作るという話はそういうことなのだな。かつての大名たちも、忍び自身も、忍びの価値と力を理解できていなかったということだな! しかし、そこに気付くとは! まさに神童だな」


「もう童ではありませんぞ。子もいます」


「“神童”から童を取ると“神”になるぞ! まあ、それもいいか! それにしても今の話を聞かせてやれば、日本の全ての忍びが一層奮起するのは間違いなしだぞ」


「父上! もう忍びではありません。諜報本部の役人ですからね」


「おお……そうだったな。忍びも偉くなったものだな」


「とにかく頑張れ。難しいことはおまえが考えればいい。我らはどこまでも応援する。我らには良い夢を見させてくれればそれでいい!」


「頑張ります。応援ください」


「ところで、ハワイという島はどんなところだ?」


「冬が寒くありません。かといって夏が暑過ぎたりもしません。とにかく温暖で過ごしやすい島です。海辺で果物とか食べながら、波の音を聞きながら寝っ転がっていれば、ハワイから離れたくなくなるでしょう。そんなのんびりした場所なのです」


「それは楽しみだな。引退したら、その島で過ごすのも良さそうだな。それはそうと、どうして福が船に乗っているのだ?」


「本人の希望です。福は父上にも止められないでしょ!」


「そうだな、あいつは無理だ。そもそも、福の奴が大人しく嫁をやっているのか不思議でしかたがないぞ! 祝言の時など、何か変なことを言い出さないか、楓と共にドキドキしっぱなしだったぞ」


「光秀を師匠と思っているからですよ。夫婦というより師匠と弟子ですね。福は本気で医者を目指すみたいです。何と言っても光秀は世界で一番の医者ですからね」


「豊穣神様の加護を受けている医者ならそうだろうな。これまた面白い奴が増えたものだな!」


「海に囲まれた日本に籠っていれば別ですが、世界にはとんでもない疫病がいっぱいあるのです。明やヨーロッパでは、危険な疫病が定期的に大流行しています。その度に数十万規模の人が死んでいるのです」


「確かに、海外に出ていくということは、そういう病気と付き合っていくことになるのだな」


「光秀とともに、福にも頑張ってもらいますよ。福は世界で一番の女の医者になることでしょう」


「何だか面白そうだな。その姿も見ないわけにはいかないな」


「まだやることが残っているので、これで失礼します」


「そうか、たまにはこうやって飲みながら話をするのも良いな」


「ぜひ、またお願いします」


久しぶりにオヤジたちと話ができたな。今回の遠征で、オヤジたちも特殊部隊も、誰も死んでほしくはない。日本と世界がどう変わるのか、皆に最後まで見届けてほしい。


順調な船旅が続いている。

特殊部隊の隊員や陸兵たちは、体が鈍るのを防ぐためにデッキで訓練を繰り返している。


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