272話 第三次海外遠征艦隊出撃
「新イスパニア領の攻略についてだが、まずは、このアカプルコ港に停泊するイスパニア船を全て沈めることから始めることになるだろう。次にアカプルコの街を占領し、街を要塞化する」
「新イスパニア領の拠点は『首都メキシコシティ』と呼ばれている。元々はアステカ帝国の『首都テノチティトラン』だった場所に作られている。場所はここだ。アカプルコとメキシコシティは京都と尾張の倍くらいの距離になる」
「新イスパニア領は広い。日本の3から5倍くらいあるのだ。日本から大軍勢を引き連れて、新イスパニア領の各地を転戦して回るのは下策だ。気候も違う、土地勘もない場所での転戦は苦労するだけだ。時間も掛かることだろう」
「作戦としては、西国攻略と同じやり方を行うのがいいだろう。要塞化したアカプルコにイスパニア軍を集めるだけ集める。そして撃破する。日本の強さを知らしめる」
「その後は、アステカ人に武器を貸し与え、日本が支援する形で、自分たち国は、自分たちで取り戻す戦いを展開させる。もちろんその筋書き通りに行くかどうかは分からない。現地で臨機応変に望むことになるだろう」
「アステカ人に武器を貸し与えることと引き換えに、アカプルコは日本の領土とするつもりだ。日本のものにしておけば、イスパニアは東アジアや東南アジアに進出するための拠点港を作れなくなる」
「アカプルコを日本の領土とするに当たっては、我らの食料を永続的に確保する必要がある。アカプルコの辺りでは米が作れるみたいだ。日本の米作り農家を連れて行こうと思う」
「痩せた土地で、米作りに苦労している農家から希望者を募ってほしい。できれば独身の若者がいいだろう。先住民から嫁をもらえば、現地の民と仲良くやっていけるはずだ。とりあえず希望者を100名連れていきたいと考えている」
「何だか面白そうですな。土産話を待っております」と勘助。
(俺と一緒に行きたかったのだろうな。顔に書いてあるぞ)
だが、俺たち全員が日本からいなくなる訳にはいかない。なるべく早く帰ってくるから待っていてほしい。
***
病院で光秀と話している。
「光秀、アカプルコまで一緒に行って欲しい。2年間頼む!」
「何ですか! 突然に!」
「イスパニアがこれ以上国力を上げるのを阻止したいのだ。それにアメリカ大陸の民が痘瘡で何十万と死んでいっている。何とかしたい」
「多量にワクチンが必要になる。そうであれば、光秀に一緒に来てもらうしかないのだ。光秀の留守を任せられる人は育ってきているか?」
「まだまだ未熟ですが、そういうことであれば、彼らに任せるしかありませんね」
「手紙は送れるから大丈夫だぞ。豊穣神様が手紙を配達してくれる手紙像を下さったのだ」
「電話のようなリアルタイムではないが、弟子たちと連絡がとれるぞ」
「それはすごいですね。それであれば弟子たちも安心するでしょう」
「問題が1つありますよ。話を聞けば、福は絶対一緒に行くと言いますよ」
「大丈夫だ。あいつは強い。私や光秀より数段強いから大丈夫だ。光秀は福に護衛してもらえばいい」
「え……そうなのですか?」
「出発は1週間後だ。頼んだぞ!」
***
第3次海外遠征、いよいよ出陣の時を迎えた。
今回の遠征に参加する陣容は、下記の通りである。
……マラッカ方面……
【艦隊】蝦夷丸:30隻
【総司令官】北畠信長 /【参謀】真田幸隆
【割譲地および外交担当】毛利隆元、北条長綱、島津貴久、松永久秀とその一族・旧家臣団
【スパイス諸島担当および外交担当】斎藤利三、蜂須賀正勝とその一族・旧家臣団
【陸軍】
・大佐:柴田勝家
・大尉:丹羽長秀、前田利益
・陸兵:2,000名
【通訳隊】20名
【特殊部隊】隊員500名
【黒鍬建設】200名
【海軍】艦隊司令官:梶原景宗
……新イスパニア領方面……
【艦隊】蝦夷丸:30隻
【総司令官】俺
【医療班】
・医師:明智光秀
・医師見習い:福
・看護婦:10名
【通訳兼護衛】ルーシー、藤林保正(俺とルーシーの護衛)
【特殊部隊】
・百道三太夫、服部保長、藤林正保
・隊員:2,000名
【陸軍】
・大佐:工藤昌祐、工藤祐長
・陸兵:500名
【黒鍬建設】200名
【農業移民】独身男性100名(米作り希望者)+種籾
【海軍】艦隊司令官:九鬼定隆
蝦夷丸については、蝦夷州の秘密造船所で製造したということにして、西国攻めの時から少しずつ、こっそりと台数を増やしている。
現在の総数は150隻だ。今回の出征で海外に出ていく蝦夷丸は計97隻となる。国内で待機するのが53隻だ。
今回の遠征で我が国は、ポルトガルやイスパニアと完全に敵対することになる。さらに次回の海戦では総力での海戦となるだろう。
向こうもエース級の提督を出してくるはずだ。
国内の53隻は増援が必要になった時の予備である。
尾張の港には、蝦夷丸がずらりと並び、堂々と停泊している。各艦では補給作業と乗員の乗艦が慌ただしく進められ、甲板の上では掛け声と命令が飛び交っていた。
岸には、遠征に向かう者たちを見送る家族や仲間たちが集まり、それぞれの想いを胸に静かにその様子を見つめている。
「定隆! 最終点検が終わり次第、出発する。出陣の旗を掲げろ」
「了解しました! 各艦に通達!」
「揚錨よーい!」
「物資確認、終わりました!」
「蒸気圧、異常なし!」
「出航準備、完了です!」
港に吹く風が、掲げられた旗をはためかせる。遠征の刻が、刻一刻と迫っていた。
「定隆! 最終点検が終わりしだい出発する。国旗を掲げろ」
「了解しました! 各艦に連絡!」




